
百韻『径なくて』の巻
2013.3.9〜4.2
発句 径なくて篁くづる菫かな 楸邨 春 たかむら:竹薮
脇句 番ひの雉子の葎ゆく影 春蘭 春 つがひ
第三 座敷中雛道具など散らかして ね子 春
4 下手な習字を見つけ赤面 草栞
5 初孫の授業参観いそいそと 蘭
6 高度成長時代駆け抜け 風牙
7 望くだり飲み友達はちりぢりに 真葛 秋月
8 夜長を過ごすアパートの鍵 ね 秋
ウ
9 虫すだくクロスワードのあと一語 曙水 秋
10 はぐらかされし愛の告白 蘭 恋
11 ドン・ファンはお手をどうぞと繰り返す 栞 恋
12 踊る阿呆は寂しからずや ね
13 いざブログ牧水調の歌添へて 葛
14 本郷の坂息たへだへに 蛉
15 二人の子乗せる自転車母強し 牙
16 スケッチブックに素描描き留め 栞
17 復興の願ひ膨らむ遠花火 ね 夏花
18 祭囃子に惹かれ行く町 蘭 夏
19 そそくさと夕餉は残りごはんにて 〃
20 ドラマの録画溜まる一方 牙
21 山の端に見る人もなき冬の月 葛 冬月
22 湖面に降るる水鳥の群 ね 冬
二オ
23 故郷を持たぬ身軽さ頼りなさ 水
24 都市伝説の嘘も真に 栞
25 左手の小指の爪は桜色 牙 恋
26 春の恋なら春に終はらす ね 春恋
27 ぬくもりをいざ断ち切らん巣立鳥 蘭 春
28 良きことあるや初虹の見ゆ 葛 春
29 名画より光と影の溢れ出で 栞
30 二時間待ちの札にげんなり 牙
31 拉麺は蘊蓄よりも食うが良し 水
32 つけつぱなしのテレビながら見 蘭
33 頷いて済ます会話も十年目 牙
34 強気の陰に透ける小心 葛
35 ミシュランを信じぬシェフの匙加減 栞
36 しかめっ面も弛む絵葉書 牙
二ウ
37 蜜月を終えてパンダ舎再開す ね
38 うららに釣られぞろり出不精 蘭 春
39 見渡せば散るを厭わず花は咲く 水 春花
40 陽炎のごと去りし武士 栞 春 もののふ
41 待ち合わせ場所はSL広場にて 牙
42 腕絡ませる休日の午後 ね 恋
43 君がなほ辛き身なりと耐へる愛 葛 恋
44 溢るるばかりのビールごくごく 水 夏
45 いつかはと念ひし山を踏破して 蘭 夏
45 夏フェスを終えてバンドは舞台裏 牙 夏
46 ローカル局の取材厭はず 栞 両句に
47 落選の噂もありて元大臣 ね
48 我が世の春よ窓に望月 水 春月
49 桜咲く門の内にて八文字 牙 春 はちもんじ
50 軟東風吹きて揺れる簪 栞 春
三オ
51 卒業の旅で変身舞妓さん 蘭 春
52 慣れぬ手つきでシャッターを切る 牙
53 ツチノコを探すと友は西ひがし ね
54 リタイアしたら俄然生き生き 蘭
55 蕎麦打ちに連歌の道を極めたる 栞
56 祭り上げられ親善大使 葛
57 尼寺の庵主しるせし本売れて 蘭
58 続き見るには有料となる 牙
59 三月ごと新聞替へて映画券 蘭 みつき
60 ミンク捲きたる顔の卑しき 葛 冬
61 狩人の道に迷えばレストラン 牙 冬
62 秘密のレシピ身体には毒 ね
63 ピアノの音漏るる洋館月赤し 牙 秋月
64 郵便受けに絡む蔦の葉 栞 秋
三ウ
65 待ちかねた嫁の里より新走り 水 秋
66 汲めど尽きせず古典逍遥 蘭
67 とくとくの清水流るる棲処にて 栞
68 お血脈札閻魔欲しがり 水
69 真打ちとなるには足らぬ色と艶 牙
70 憎まれ口をたたき気を引く 葛
71 こゝろとは逆に振る舞ふをさな恋 蘭 恋
72 フォークダンスの手に滲む汗 牙 夏恋
73 隊商の砂漠越えゆく月暑し 水 夏月
74 広場に響む物売りの声 栞 どよむ
75 真作のはずは無けれどガレの壺 牙
76 貸し借りなしの長き付き合ひ 葛
77 パッと咲きサッと散り行く花は友 ね 春花
78 千歳の松のみどり美し 蘭 春 うるはし
ナオ
79 恨み言一つ言わずに蜆汁 牙 春
80 絆絆とポスターを貼る 水
81 慕はしき名前何度も確かめて 栞 恋
82 相合傘は五月雨の中 ね 夏恋
83 籠り居る宿に想練る次回作 葛
84 伸ばしては剃るごま塩の髭 蘭
85 我が家にはサンタクロースは来ないのよ 水 冬
86 仏の煤を払ふ小坊主 蘭 冬
87 居酒屋に隠語で話す二人組 牙
88 ワインのコルク床に転がり 栞
89 難破船噂ありしがいつか消え 葛
90 店舗誘致で決まる集客 牙
91 廃屋と残土を照らす朧月 水 春月
92 風船飛ばす定年の人 ね 春
ナウ
93 花の香は古き枝にも蘇り 栞 春花
94 壁画の下の別の絵を知る 牙
95 講釈のおまけ付けられ吟醸酒 葛
96 木彫りの鼠張り扇で鳴き 水
97 江戸情緒探索〆に寄席へ行き 蘭
98 スカイツリーの消ゆる電飾 栞
99 「夜の梅」土産に貰ひ春の星 牙 春
挙句 鈴の音もあり遍路笠見ゆ ね 春
・・・経過は
※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
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初折表 123456月8 (1〜8) 花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8 (93〜100)_________
作法式目
付け転じ方
写真提供はフォト蔵さん