『漂泊の魂』井本農一編、昭和45年、角川書店
第一編「漂泊者の系譜」唐木順三
風雅の道
1、風雅の誠を勤むるといふは、風雅に古人の心を探り、近くは師(芭蕉)の心よく知る
べし。」(『三冊子』)
風雅に古人の心を探りというのは、風雅において古人の心を
探りということ、すなわち、風雅とは何かを主体的にせめあ
かした古人の心を探ってそれを追体験せよということである。
2、造化にしたがひて四時を友とす・・・造化にしたがひ、造化にかへれ(『笈の小文』)
風雅の道へいたるためには、私意を去り、自己執着を去るこ
と、すなわち自己を放下して造化にかえり、造化の美を己が
言葉によって荘厳することが課せられる。そしてそこへ到る
ための条件として無住無庵、一所不住の漂泊の旅を、芭蕉は
選んだ。 四時:四季
感想:上のことを踏まえて以下の句を読むとき、字面の意味以上の
感慨をもって芭蕉が句を詠んだことを感ぜずにはいられない。
この道とは、風雅の道のことで、枯野をかけ廻る夢とは、ま
だ極めきっていない風雅の道の先にあるであろう境地を希求
する心のことであろう。
この道やゆく人なしに秋の暮れ
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る
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