表十句(表六句)と発句の禁則について
●二条良基『連理秘抄』1345~1349年 なし
●二条良基『筑波問答』1357~1372年?
「懐紙の面(表)の程はしとやかの連歌をすべし。。。一の懐紙は序、
二の懐紙は破、三・四の懐紙は急にてあるべし。。。連歌の面(表)
に、名所、めづらしき言葉、また常になき異物、浮かれたるやうなて
には、ゆめゆめし給ふべからず。これは先達の口伝なり。」
●二条良基『連歌新式』(応安新式)1372年 なし
http://www.h6.dion.ne.jp/~yukineko/oansinsiki.html
(こやんさんのサイト)
●一条兼良『連歌新式追加並新式今案』1452年
『連歌新式』に追加された新式今案の連歌初学抄の中(一番後ろ)に
記述されている。(群書類従 第十七輯 連歌部版)
「近代一之懐紙、引返之第二句迄、恋、述懐、名所等、猶如面不付之。」
●心敬『ささめごと』1463年 なし
●宗祇『吾妻問答』 1467年 なし
●肖柏『連歌新式追加並新式今案等』1501年
一条兼良『連歌新式追加並新式今案』と同じ記述が連歌新式の本文の最
後の事柄として移動されている。(寛政十年写、近思文庫蔵版)
「近代一之懐紙、引返之第二句迄、恋、述懐、名所等、猶如面不付之。」
●松永貞徳『式目歌十種』1628年
「名所、国、神祇、釈教、恋、無常、述懐、懐旧おもてにぞせぬ。」
●去来『去来抄』1702~1704年成立 1775年刊
「発句も四季のみならず、恋、旅、名所、離別等無季の句ありた
きもの也。されど如何なる故ありて四季のみとは定め置かれけん。
其事をしらざれば暫く黙止侍る」(芭蕉)
●土芳『三冊子』1702~1704年成立 1776年刊
弟子が芭蕉にこの件で質問するくだりがある。ここで芭蕉は古来禁則
とされるものに柔軟な解釈をしようとしている。特に発句については
主客が何を詠んでもとがめるなとし、事実上、発句は何を詠んでもよ
く脇もそれに従うようにと述べている。(大部のため詳細省略)
●日本文学報会俳句部会連句委員会『昭和俳諧式目』1943年
日本文学報会会長:徳富蘇峰 俳句部会(連句委員会):会長高浜虚子
「表六句は、成るべく穏やかに運ぶべし。」
●東明雅『連句入門』1978年
「連歌百韻は。。。序はなるべく穏かに、恋、述懐、無常、神祇、釈
教はださないことになっており、これがそのまま俳諧に引き継がれ(略)」
『三冊子』の記述の都合のいい部分だけを引用し説明している。(P40-)
●東明雅・丹下博之・佛渕健悟『十七季』2001年
「松永貞徳が示した、「名所、国、神祇、釈教、恋、無常、述懐、懐旧
おもてにぞせぬ。」のきまりが、そのまま現代連句でも受け継がれてお
り、そのほか地名、人名、殺伐なこと、病態、妖怪なども嫌われている。」
「ただし、表六句のうちの発句だけは題材の制限は一切なく、自由に何を
詠んでもいい。」(P502-503)
「発句の題材には制限がなく、表六句に嫌う神祇、釈教、恋、無常、地名、
人名などを詠んでもよいが、その場の時宜にふさわしくない、例えば新築
の祝いの席で、燃える・焼けるとか、追悼の会に暗き道・迷う・罪・科な
どの語を使うことは禁物である」(p507)
『連句入門』での記述の反省を踏まえ、『三冊子』の芭蕉の意図を正しく
解釈して修正したようである。
●東明雅氏の結社『猫蓑』の式目
「表に神祇、釈教、恋、無常、述懐、懐旧、妖怪、病体、人名、地名を嫌う。
但し発句はこの限りではない。」 氏は自分を伊勢派と称しているようだ。
■参考文献
(1)『連歌新式の研究』木藤才蔵著、三弥井書店、平成11年4月
(2)群書類従 第十七輯 連歌部物語部 巻第三百六『連歌新式追加并新式今案等』
(3)水無瀬三吟百韻 湯山三吟百韻 本文と索引 付 連歌新式追加并新式今案等、
笠間書院
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