2014年7月9日水曜日

【満尾】第五千句第二百韻『炎昼の』の巻


                      百韻『炎昼の』の巻   
                                                                                  2014.7.9〜8.8


発句  炎昼の女体のふかさはかられず     楸邨  夏 
脇     しぐさもゆかし路地の打ち水    春蘭  夏
第三  いつきても飽きることなき古都の旅   野茨
4     杉玉みれば試飲三昧        杜角
5   はいはいと医者の忠告聞き流し      蘭
6     徹夜の読書もはや有明        茨  秋月
7   虫時雨おのづとそなふハーモニー     角  秋
8     運動会の迷子呼び出す       里代  秋

9   道ばたに鼻をくすぐる露店出て      蘭
10    かすみ立ち籠む梅林の里       茨  春
11  早々と雛をしまふも縁遠く       曙水  春
12    春眠さめて二度寝する日々     真葛  春
13  弁当を持たせキッスで送る主       角  恋
14    鬼の居ぬ間の個人レッスン     草栞  恋
15  サッカーのプロにするのが親の夢     茨 
16    千手観音汗し眺むる         代  夏
17  帰省子を責めるが如く鳴く杜鵑      蘭  夏  
18    水場にかかる細き夏月        葛  夏月
19  ゆふさればさわさわ風にさやぐ葦     角
20    散歩も犬で様になりたり       茨
21  まっ盛り心は花に浮き立ちて       蘭  春花
22    都踊にそぞろ繰り出し        栞  春
二表
23  恋はさが身は老いぬれどいまだ春     角  春恋
24    抱かれし日々波のごとくに      代  恋
25  戦争を知らぬ孫子は勇ましく       葛
26    行進曲はAKBで          水
27  人生は明日へ続く長い道         茨
28    苦があってこそ深きよろこび     蘭
29  頂きは視界さえぎるものもなし      角
30    自分撮りして呟くが趣味       水
31  一番の美女探し出す魔法にて       栞
32    林檎を齧る口も可愛く        代  秋
33  ござ敷いて秋の野遊びはしゃぐ子ら    茨  秋
34    千草の花を冠に編む         角  秋
35  ふるさとをふと思はする眉の月      蘭  秋月
36    嫂と云ふ気にかかる人        葛
二裏
37  道ならぬ恋の話に盛り上がる       代
38    懲りずうはきの虫のうごめく     茨
39  道具屋に蚊遣りの豚を値引かせて     水  夏
40    一服がてら茶屋で白玉        角  夏  
41  かまくらや梅雨の合間の空を鳶      蘭  夏
42    あるかなきかの薄物の縞       代
43  黒髪のみだれつくろふ後朝に       茨  恋
44    金釘流の文の恥づかし        葛  恋
45  真贋の鑑定めぐり論争す         栞
46    遺産相続無いなりにもめ       角
47  銀行の窓あかあかと年の暮        代  冬
48    月に誘はれつっかけで出る      蘭  冬月
49  唐橋のたもとに揺れる花万朶       栞  春花
50    ふらここに乗り天に近寄る      水  春
三表
51  少女らのほつれ毛なでて風光る      茨  春
52    若さは特権今を悔ひなく       角
53  熱弁も正論もみな呑みしヤジ       葛
54    澄まし顔にて呉越同舟        栞
55  離婚すらできずに家庭内別居       蘭
56    そぞろ身に染む須磨の秋風      代  秋
57  遥かなる都や月は同じくも        角  秋月
58    隣街から秋祭りの音         水  秋
59  清貧の膳には贅か菊膾          茨  秋
60    つい過ごしがち旧友との酒      蘭
61  長ばなし相槌打つて聞き流し       角
62    手術中のランプ見守る        水
63  キューを出す頃合い計る助監督      栞
64    いつしか異名アメフラシとや     茨
三裏
65  デートには小雨はむしろ好ましき     蘭  恋
66    月さまと呼ぶ声も朧に        代  恋春
67  睡魔きてあことねころぶ花むしろ     角  花春
68    そつと近づく雀の子居て       栞  春
69  神ほとけ人をいざなふ慈悲の道      茨
70    標本箱に並ぶ斑猫          水  夏  はんみょう
71  夏休み自由研究親がやり         蘭  夏
72    新旧不問ゴジラ対決         葛
73  非日常こそ日常のカンフル剤       角
74    BGMはハリーポッター       代
75  コンピュータ相手のチェスで苦戦する   栞
76    地道に歩む出世街道         水
77  報・連・相休まず遅れず働かず      茨
78    民族移動盆の月見て         代  月秋
名表
79  幾山河つまとこえきし夏の果       蘭  秋
80    声をかぎりにひぐらしのなく     角  秋
81  子規庵の大鳥籠も露に濡れ        栞  秋
82    ぬしなき庭を飾る鶏頭        茨  秋
83  おもひ断ちタンスの肥やし捨てにけり   角
84    修道院になどかあくがる       代
85  ははこひしうきぐもひとつゆくみそら   蘭
86    残りめしにておかかおにぎり     角 
87  勉強は自立のためと心得て        茨
88    窓の雪見て穴ごもりする       栞  冬
89  榾の火にじつとみいれば時忘れ      蘭  冬
90    今さらながら不倫小説        葛
91  十六夜の月やちまたのさんざめき     角  秋月
92    光悦垣に紅葉散り敷く        代  秋
名裏
93  露の身をあたら死闘に明け暮れて     茨  秋
94    岨の枯木に何を孤鴉なく       蘭    こあ
95  故郷の塒を後に三度笠          栞
96    どうやら嵐去りししののめ      角
97  太公望間隔たもち並びをり        茨
98    池の土手には土筆群ら立つ      蘭  春
99  城あとに花爛漫と咲き匂ひ        角  春花
挙句    見立てをかしき山の雪形       茨  春


※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真借用はフォト蔵さん

2014年5月29日木曜日

夜の寝覚 末尾断簡発見される 翻刻トライ!




しらざりしやまぢの月をひとりみて
よになき身とや思ひいづらんとのみながめ
いりたまふに女三宮いとうつくしうもの
おもひしりおよすけ竹(?)つくははの女御の    
御ことおぼしいづるなめりおほどかにうちなが   
めいでてつゆけくなる御袖の気宮もいみ
じくらうたげなるにかくこそはたれも
おぼしいつしぬと思ひやるにさへいとどながめ
いづるにつけてもなつかしくうちかたらひ
かかる人もおはせざらましかはとおもふにも


およすけ   大人びる、老成する。
なめり    であるようだ。
おほどか   おおらかだ、おっとりしている。  
らうたげなる かわいらしい、いじらしい。

2014年1月7日火曜日

【満尾】第五千句第一百韻『松すぎの』の巻


                      百韻『松すぎの』の巻   
                                                                                  2014.1.7〜2.16

発句  松すぎのはやくも今日といふ日かな   万太郎 新年  
脇     ふくら雀の集ふ陽だまり      春蘭  冬
第3  待合の席和みたる大茶会        草栞
4     やゝ酒気帯びて口もなめらか    野茨
5   話すたび逃がした魚成長し       真葛
6     にはかに夕霧たち籠める川      蘭  秋  せきむ
7   月見んと駿馬を駆りて目指す丘      栞  秋月
8     世に打つて出る秋は今ぞや      茨  秋  とき

9   呟いてあっと言ふ間の流行語       葛
10    相変らずの御用新聞         栞
11  支持率の世論調査のうたがはし      蘭
12    嫌よ嫌よの空気読めずに      曙水
13  押せば引く引けば押し来る女波      茨  恋
13  自らの台詞に酔ひて愛捧ぐ        栞  恋  
14    目瞑りてさすルージュ完璧      葛  恋
15  プレゼンのイメリハ済ませ不安消え    蘭
16    営業ゑがお板につく頃        水
17  村おこし都市の祭りと交流し       蘭  夏
18    B級グルメ帰省土産に        栞  夏
19  駅ナカはコンビニ超えてモール化す    茨
20    目にまぶしきや春のよそほひ     蘭  春
21  いつの世も立ち去り難き花のもと    ね子  春花
22    蓬摘みつつしのぶ亡き人       茨  春
二オ
23  悪童の灸すえられし語り草        葛
24    詮なきことに波瀾万丈        栞
25  引退後即出版の手際良さ         水
26    次から次とアイドルユニット     茨
27  流行は追はず知らぬ間流されて      蘭
28    あなたに染まれ選ぶ白無垢      水  恋
29  ふたごころ隠し切れずになみだ色     葛  恋
30    いかにいくべき浮舟の身は      茨
31  清教徒海原を越え大陸へ         栞
32    家族は勇気出づる源泉        蘭
33  七五三母が一番写り良く         水
34    から風吹けば雲は離れて       栞  冬
35  ひとり寝の布団に差せる月の影      葛  冬月
36    くしゃみをしてももどる静寂     茨  冬
二ウ
37 「やっほー」の「ほー」の形の口のまま   ね
38    ムンクに会いに渡るこの橋      水
39  人形の家捨て去りし女あり        栞
40    だれも人生書けば小説        茨
41  忘却は過去の美化には都合よく      蘭
42    チーズと云ひてVサインする     葛
43  同窓会ビンゴゲームで大当たり      茨
44    注目される括弧旧姓         栞
45  マンネリに飽きて手書きで年賀状     蘭  新年
46    ヘタウマ御免豚に似た馬       葛
47  新妻の手料理すべて創作で        水
48    蓙に陣取る丘の若芝         茨  春
49  花開く時を謳歌の果てもなし       栞  春花
50    捲土重来期して春眠         葛  春
三オ
51  世を忍ぶ仮の姿は陶芸家         茨
52    茅葺き民家で手打ちそば店      蘭
53  わが夢に妻おいそれと乗つて来ず     茨
54    リケジョにレキジョ多忙女子増え   水
55  デートでは話題もネットで下調べ     蘭  恋
56    ハネムーンの地に思はざる危機    葛  恋
57  襲撃の疑惑は永遠に闇の中        栞
58    山葵ひそりと隠し味にて       水  春
59  だめ元で手はみな試す花粉症       茨  春
60    かすめる月や昼のねむたさ      蘭  春月
61  大戸より入りし物盗り誰も見ず      葛
62    拍子抜けするビフォア・アフター   栞
63  原作を変へて感動なき映画        茨
64    柳の下に二匹めは居ず        水  夏
三ウ
65  端居して財布重たき客を待つ       ね  夏恋
66    汗さえ見せぬ白きうなじに      水  夏恋
67  紫のゆかり想ひて涙する         栞  恋
68    古典熟読寿大学           茨
69  かはらない若さの秘訣好奇心       蘭
70    血気盛んな相棒の範         栞
71  キャッチャーのサイン通りに球しずみ   水  夏
72    無欲が招く巨額契約         葛
73  リニア線過疎地ばかりを縫つて敷き    茨
74    障害物越ゑスノーボーダー      水  冬
75  氷上で聴き初む曲に翳ありて       栞  冬
76    ラジオかけつつ日永釣する      蘭  春
77  みづどりの澪をひきゆく花筏       茨  春花
78    あの世へ向かふ遍路道なり      ね  春
ナオ
79  あん住を打ち破り出て草まくら      蘭
80    お任せツアーは実にお気楽      茨
81  懐メロについ釣り込まれ唱和して     蘭
82    思はず腕を組んで睨まれ       栞
83  心せよここはウォールストリート     葛
84    山出しなれば宵越しの銭       水
85  国産の木材の良さ見直され        茨
86   「手に職つけろ」親の口癖       蘭
87  代々の田に水張り終ゑて映る月      水  夏月
88    蒲の穂ゆれてサヨナラを言ふ     ね  夏
89  ハンカチをそつと渡して汽車に乗り    栞  夏恋
90    おぼつかなしや末の変心       茨  恋
91  余計なる選挙昨今はやりをり       蘭
92    威信かけるも受くる冷笑       栞
ナウ
93  野良犬が街の通りにたむろして      茨
94    育ちの良さは隠しおおせず      水
95  ゴミ出しに背筋のばして令夫人      蘭
96    遠く白富士風光る坂         茨  春
97  入日差す愛宕の山に奴凧         栞  春
98    故郷おもへば鐘朧なる        蘭  春
99  身を任し川面たゆたふ花見舟       茨  春花
挙句    畔の柳新芽美し           蘭  春

・・・経過は#jrenga

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真借用はフォト蔵さん

2013年11月7日木曜日

【満尾】第四千句第十百韻『つくづくと』の巻


                      百韻『つくづくと』の巻   
                                                                                  2013.11.7〜12.12

発句  つくづくともののはじまる火燵かな   鬼貫 冬
脇     時雨るるさきに街へ買出し     春蘭 冬
第3  山茶花の垣を曲れば散歩犬       草栞 冬
4     馴染みとなりて掛けるひと声    真葛
5   行列が行列を呼ぶラーメン屋      野茨
6     つるべ落しに迫る夕闇        栞 秋
7   月と酒どつちと言へぬ友にして      蘭 秋月
8     霧の向かうに独り身の家      ね子 秋

9   こりもせず一人相撲の片おもひ      茨 恋
10    消えかかる炎に反故の恋文      葛 恋
11  受験より大切なもの今はなし       ね 
12    スマホ世代も占いが好き      曙水
13  LINEして親子関係良好に       茨
14    げにむつかしき以心伝心       栞
15  噂して七十五日里の村          葛
16    風吹きやんでのぼる炊煙       蘭
17  ちり鍋を囲む奉行の睨み合ひ       栞 冬
18    勝ちし力士の肌に湯気立ち      水 冬
19  満場は総立ち拍手なりやまず       茨
20    記憶は春の雨の場所取り       ね 春
21  川沿ひの花のトンネル往き戻り      蘭 春花
22    雲雀囀るホワイトハウス       栞 春
二オ
23  とりにくさのりこえ有休消化して     茨
24    南の島でゴーギャンの真似      葛
25  探すなよこころの中にユートピア     茨
26    吾児の寝顔にゆるむ口もと      蘭
27  朝は妻昼は上司にどやされて       ね
28    満月の夜の変身願望         栞 秋月
29  長き夜に中島みゆき独り聴き       水 秋
30    山のやうなるピーナツの殻      葛 秋
31  老いて食細いながらも秋渇        蘭 秋
32    はかりに乗つて一喜一憂       茨
33  釣り宿に更新記録の魚拓貼る       水
34    目を見張ること多き旅先       ね
35  レートなどお構ひなしに爆買ひす     葛
36    おもへば遠しバブル時代よ      茨
二ウ
37  行く川の流れは絶えず浮葉舟       栞 夏
38    決められぬままふたまたの恋     蘭 恋
39  涙ぐみ悲劇の女演じ切る         葛 恋
40    輝く星となりし魂          栞(恋)
41  なきひとをふと思ひ出すゆふの鐘     茨
42    親の苦労を親となり知る       蘭
43  放蕩の末の棲処の有難き         栞
44    ことこと煮立つ芋粥の鍋       葛 秋
45  すさまじき山家のそらに澄める月     茨 秋月
46    庭の浅茅にすだく蟋蟀        蘭 秋
47  来客のなき日曜はワイン風呂       ね
48    ヨガで瞑想うららかな午後      栞 春
49  ひらりひら花びらひらりひらひらり    茨 春花
50    池に残りし鴨の水尾曳く       蘭 春
三オ
51  そぞろなり都踊りの近づきて       葛 春
52    本番備へ着付け練習         茨
53  撮影の合間に食べるカツサンド      栞
54    NGだけでスペシャル作り      水
54    メイク早いも売れっ子の技      水
55  呼び物は伊達の十役早変はり       蘭
56    一期一会の一世一代         栞
57  わが庵で茶会はじめて主催して      茨
58    すわ引っ越しと騒ぐ店子ら      水
59  恬として噂のぬしは頬被り        葛
60    邪魔されやすき色恋の道       茨 恋
61  野茨を手折りて気づく愛の不義      栞 夏恋
62    ゲーテとギョーテ和解せしとや    葛
63  悩むとも外にいでよと春の月       水 春月
64    田は水たたへ蛙鳴き初む       蘭 春
三ウ
65  名にし負ふ高嶺は雪や里桜        茨 春
66    世界遺産に挑む人びと        ね
67  とりあへずゆるキャラつくる町おこし   蘭
68    大志抱かずめざすB級        水
69  ながらへば埴生の宿もまた楽し      栞
70    ハモニカの音すこし上達       葛
71  一列に並んで歩く七五三         ね 冬
72    カルガモ親子フラッシュに慣れ    水 夏
73  緑陰がオアシスつくるオフィス街     茨 夏
74    手つき見事にワープロを打つ     葛
75  自分史をものせん履歴書まづ書いて    蘭
76    夜明け前より霞立ちたる       栞 春
77  三輪山の裾野をたどり花遍路       水 春花
78    八十のちまたに萌える若草      茨 春  やそ
ナオ
79  ロリータと名付く娘の稚けなさ      葛
80    あひあひ傘に描かれ赤らむ      蘭 恋
81  濡れ事を隠す暇なく広まりて       栞 恋
82    秘密保護法ねがふ面面        葛
83  せいじかのきょうみ利権と保身のみ    茨
84    庶民はいつも質素倹約        蘭
85  新聞は折込チラシがあんこにて      茨
86    食傷気味の父の説教         ね
87  なんやかや実家に帰り愚痴を言ひ     蘭
88    ふらりと出れば肌寒き野良      茨 秋
89  さやけくも木の間にのぞく十三夜     蘭 秋月
90    ひとり筆持ち染みる虫の音      水 秋
91  夢に見た文学賞は夢のまま        葛
92    遥けき希み神のまにまに       栞 
ナウ
93  堕ちてみて知ることもあり恋の淵     水 恋
94    またぞろもたぐ浮気ごころよ     茨 恋
95  会社ってそとみなかみは違ふもの     蘭
96    偽りのある是は早く朽ち       蛉
97  誤表示の白状をさまる気配なし      茨
98    やけに羽音の耳につく虻       蘭 春
99  喧噪をよそに天園花盛り         栞 春花
挙句    水平線の霞むわだつみ        茨 春

・・・経過は#jrenga

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真借用はフォト蔵さん

2013年9月7日土曜日

【満尾】第四千句第九百韻『蕎麦はまだ』の巻


                      百韻『蕎麦はまだ』の巻   
                                                                                  2013.9.7〜10.21

発句  蕎麦はまだ花でもてなす山路かな    芭蕉  秋
脇     峡の朝霧かすむ富士ヶ嶺      春蘭  秋
第3  ありあけに浅きゆめからふと覚めて   野茨  秋月
4     重陽の菊まずは一献        曙水  秋
5   五輪書を紐解き初心忘れまじ      草栞
6     還暦を機に飛び回る妻        蘭
7   追ひかける亭主の財布羽根生えて    真葛
8     ぴくりと動く梟の耳         栞  冬

9   浮世床うはさ話に花が咲く        茨
10    つけっぱなしのテレビちらちら    蘭
11  灰燼に帰せるタワーの残像か       栞
12    西に東に奔る大国          葛
13  二十一世紀もすでに十余年        蘭
14    みんなうつむきスマホいぢくる    茨
15  通学の憧れ王子やや寝癖         水
16    想ひを込めて落とすハンカチ     栞  夏恋
17  過去の恋また蘇るクラス会        茨  恋
18    茶々入れられて縒れしスピーチ    蘭
19  花見とて上司が居れば仕事にて      茨  春花
20    抜き打ち監査終へる朧夜       栞  春
21  山独活を芥子きかせた酢味噌和へ     蘭  春
22    長途の墓参も食の楽しみ       茨
二オ
23  海上の都に眠る作曲家          栞
24    四季をりをりに魅せる趣き      茨
25  遠距離の逢瀬を京で重ね来て       蘭  恋
26    失楽園の露と散りぬる        栞  秋恋
27  夢見じと酔はじと知りて濁り酒      葛  秋
28    小町も勝てぬ老いの秋風       茨  秋
29  幾千年かはらず光る望の月        蘭  秋月
30    孵化する命そつと育む        栞
31  歩数計数字かせぎに回る池        茨
32    画架立ち並ぶ定番の場所       蘭
33  手離せぬ懐炉たよりに待つ日の出     栞  冬
34    白らんだ息のかき消ゆる森      蛉  冬
35  緋袴にバイトの巫女もまざるらん     茨
36    鈴の音高く齢寿ぎ          栞
二ウ    
37  おめかしの馬コ引く馬子晴れがまし    蘭  夏
38    古本で見るパリ・コレの記事     葛
39  チョコレート色した染みは新しき     栞
40    旦那ゐぬ間のひるのママ会      茨
41  円満は互いに干渉しないこと       蘭
42    かたりかけそな仏像の笑み      茨
43  行き着かば希み叶ふやガンダーラ     栞
44    苦心の歌は舌足らずにて       葛
45  うぐひすのぐぜりをかしき竹のやぶ    茨  春
46    師の温情で卒業となり        栞  春
47  雲を得て伏龍天に昇るとや        蘭  春
48    おぼろ月にも影の仄見ゆ       葛  春月
49  石割の花の命の長からん         栞  春花
50    老眼鏡をふたつ重ねて        葛
三オ
51  積読を一念発起でよみ崩し        茨
52    資金不如意の休暇いただき      蘭
53  任せ切る安楽を知るバスツアー      茨
54    稲穂色づく豊穣のとき        蘭  秋
55  待宵に団子供へて縁を拭く        栞  秋月
56    少し派手目の秋袷着て        葛  秋
57  審美眼鍛へに上野の森へゆく       茨
58    ザックひとつでカスバ界隈      葛
59  わすれえぬきみのおもかげみにそへて   蘭  恋
60    熱きくちづけ分つ風花        栞  冬恋
61  ひなびたる湯宿埋もれん雪あかり     茨  冬
62    トンネル長しリハビリの日々     葛
63  介護ロボせめて相槌打てたなら      栞
64    生を佛にあづけ老い楽        蘭
三ウ
65  とりあへずなんでもかじる趣味三昧    茨
66    小節きかせてアリア熱唱       葛
67  当落の線上辺りひしめきて        栞
68    総選挙とはオタク商法        蘭
69  しかしまぁなべて日本は平和かも     茨
70    もうボケたかと連れの突っ込み    栞
71  阿と吽の区別つかぬもご愛嬌       葛
72    七福めぐり祈る開運         茨  新年
73  今年こそこころ入れ替へ肉断つて     蘭
74    骨の密度はいかにとやせん      栞
75  鱧捌く修業も月の法善寺         葛  夏月
76    待つ身にすれば永き短夜       茨  夏恋
77  ふくらみし花の蕾の初々し        蘭  春花
78    稚児のうぶ毛もそよぐはるかぜ    茨  春
ナオ
79  若駒の眼差しいつか荒らかに       葛  春
80    所領安堵の報せ巡りて        栞
81  ころころとブレていくのも処世術     茨
82    深く潜行大同団結          蘭
83  伝はりし皿鉢料理に舌鼓         栞
84    洗濯するは全自動にて        葛
85  古き良き昭和の不便さなつかしく     茨
86    掻いた落葉で作る焼き芋       蘭  冬
86    秋刀魚のけむりのぼる七輪      蘭  秋
87  みちのくの海はや秋の色深み       葛  秋
88    島影縫つて寄する月光        栞  秋月
89  野分過ぐ空気澄みきり夕あかね      茨  秋
90    淹れたて珈琲ほっと一息       蘭
91  ジョコンダのほほゑみの謎誰も触れず   葛
92    学生気分でオープン・カレッジ    茨
ナウ
93  何となく見覚えのある迷い猫       栞
94    下町情緒もとめ谷根千        蘭
95  買ひ喰ひで腹きつくなり昼は抜き     茨
96    嗚呼ややこしや8パーセント     葛
97  たまるのは嵩張る小銭ばかりなり     茨
98    近場の花を愛でてほろ酔ひ      蘭  春花
99  郎女の佳き日を前に暮遅し        栞  春
挙句    夕風かすか揺れるぶらんこ      葛  春

・・・経過は#jrenga

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真借用は八ヶ岳山麓清里から~杏荘便りさん

離檀と観音像

離檀した。更地にする費用として請求されるまま40万円を払った。墓を開けてみると骨はなく、首の折れた観音像があった。父が創ったものだろう。気持ち悪いと家族は言うが修復し床の間の茶道具の箱に収めた。

※ 水瓶(すいびょう)が徳利のように見えるので俗称酒買い観音と呼ばれるようだ。水瓶は如意瓶とも言い、仏の命の水/慈悲の聖水/汚れを払う霊水が入っていると言われる。

2013年6月3日月曜日

【満尾】第四千句第八百韻『押しあひて』の巻


                      百韻『押しあひて』の巻   
                                                                                  2013.6.3 〜 7.8

発句  押しあひて生つてゐるなる実梅かな   青邨  夏
脇     しとど青葉をつたふ五月雨     春蘭  夏
第三  家二軒由緒有りげに並びゐて      真葛
4     通学の子に仔犬離れず       曙水
5   お気に入り散歩コースは苑池まで     蘭
6     少し急がん秋の夕暮れ       ね子  秋
7   月光に色濃くなりし蒼い影       草栞  秋月
8     仁王立ちする野良の藁塚       蘭  秋

9   西へ行く臨時列車の客となる       ね
10    システム手帳チェックこまめに    葛
11  コーヒーで時間調整角のカフェ      蘭
12    思ひ乱れて「来る来ない来る」    ね  恋
13  夏薊思わず舐むる君の指        風牙  夏恋
14    高嶺を越えて雲の峰立つ       蘭  夏
15  ついすすりやはり噎せたり心太     野茨  夏
16    節介過ぎて煙たがられる       葛
17  鼻つまみ厄介者と扇がれて        蛉
18    所変はれば屑もアートに       栞
19  ひび割れも窪みもありて望の月      水  秋月
20    秋の夜空に花火儚し         ね  秋花
21  一人とて淋しからずや獺祭忌       栞  秋
22    コンビニで買ふ珍味いろいろ     葛   
二オ
23  嘘をつきコンパの誘ひ断つて       茨
24    首つたけなの年下の彼        栞  恋
25  アイドルが引退をせず卒業す       水
26    メディアに踊らされる民草      蘭
27  今でしょの株価は今日も乱高下      葛
28    明日への希望持つて生くべき     茨
29  健診で精密検査勧められ         ね
30    凩吹けば疼く古傷          栞  冬
31  なにもなき庭に趣が添ふ枯尾花      蘭  冬
32    壁の蓑笠ゆかし落柿舎        茨
33  熟年の婚活サイト覗き見る        ね
34    寝起きのまんまぬしテレビ漬け    蘭
35  朝ドラのヒロインともに泣き笑ひ     栞
36    喜怒哀楽が惚け防止なり       茨
二ウ
37  拾ひ来し子猫の世話に明け暮れて     蘭
38    野火の煙に季節知らさる       ね  春
39  残る雪駒形描く山の膚          茨  春
40    水も温んでどぜう顔出し       栞  春
41  雲ひとつない大空を鳶の笛        蘭
42    寝転びをれば浮かぶ楽想       葛
43  東軍に馳せ参じたる将もあり       栞
44    クラブのジャック切り札にして    水
45  カジノにて美女の気を引く技披露     茨  恋
46    澄ましカクテル作るバーテン     蘭
47  何ごとも甘さよろこぶ世を嘆き      葛
48    月に吼えれば朧なる顔        茨  春月
49  花よりと口遊みつつ松の陰        葛  春花
50    遍路の度に事件解決         栞  春
三オ
51  フェミニスト過ぎて未だに独り者     蘭
52    鏡に向かひおかめひょっとこ     葛
53  やれ茶会なんやかんやと妻出掛け     茨
54    二時間かけて探す爪切り       ね
55  徘徊の道に迷へば夜も更けて       栞
56    タクシー代はりに使ふパトカー    蘭
57  お隣の学歴偏重すさまじく        茨
58    名門塾に通ふ幼な児         蘭
59  投資とは資金を投げることなのか     茨
60    堂堂めぐり嫌気いや増す       葛
61  追うほどに葛きり逃げる箸の先      水  夏 
62    お忍びデート涼しげな月       栞  夏月恋
63  パパの恋ママに内緒にしてあげる     ね  恋
64    ただより高きものは無しとぞ     葛
三ウ
65  延命てふ清水はるばる汲みにゆく     蘭
66    定年待ってるキャンピングカー    水
67  憧れの風のガーデン眼の前に       栞
68    地に足着かぬ頼りなさあり      葛
69  襲名は興行を打つ名目よ         茨
70    慢心禁物日々の精進         蘭
71  後輩を育て仕事をぶん取られ       茨
72    単身赴任に惑ふ四十         蘭
73  音に聞く須磨の浦波月に映え       葛  秋月
74    芒の蔭に消ゆる落武者        栞  秋
75  大文字幾千万の魂鎮め          蘭  秋  
76    冷酒効いて蓙に大の字        茨     
77  ひさかたの天より受くる花万朶      栞  春花
78    みやこの跡はかすみ敷く野辺     蘭  春
ナオ
79  口あいて探せど見えぬ揚雲雀       茨  春
80    メール通話はすべて筒抜け      ね
81  情弱にスマホ機能は持ち腐れ       蘭
82    第一志望書くだけは書き       水
83  狭き門タカラジェンヌの夢遠く      栞
84    思ひ切る都度進む人生        蘭
85  出会ひざま0.1秒で恋をして       茨  恋
86    一万ボルトに痺れ悩殺        栞  恋
87  ライブ後のカラオケやたらハイテンション 蘭
88    DJポリスお手柄となる       水
89  ユーモアと機知は話の潤滑油       茨
90    一発芸に寿限無暗唱         蘭
91  後光差す阿弥陀如来を拝みをり      栞
92    沈む日輪追ふや月の出        茨  秋月
ナウ
93  背なの児も静かになりぬ夕紅葉      蘭  秋
94    刈田もやがて水を湛へん       ね  秋
95  秋霖をうらめし顔の捨て案山子      茨  秋
96    変身願望叶ふ日はいつ?       栞
97  みずみずと薄翠に染む蝉生るる      水  夏 あるる
98    風雅は四時を友としてこそ      蘭
99  黒髪にちらちらかゝる花の雪       茨  春花
挙句    毛氈延べる土手の若草        蘭  春

・・・経過は#jrenga

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真提供はフォト蔵さん

2013年5月8日水曜日

【満尾】第四千句第七百韻『すつと出て』の巻



                      百韻『すつと出て』の巻   
                                                                                  2013.5.8〜6.1

発句  すつと出て莟見ゆるや杜若       子規  夏
脇     片脚立ちて眠る青さぎ       草栞  夏
第三  日ざかりを鉄橋鳴らし汽車がゆく    春蘭  夏
4     一斉に鳴るシャッターの音     風牙
5   はきはきと夢語る子の頼もしさ     真葛
6     枕元には宇宙ロケット        牙
7   ジャズ聴けば飛び行けさうな望の月    栞  秋月
8     新酒かたむけ想ひいろいろ      葛  秋 

9   歌姫の噂は消ゑて秋深し        曙水  秋
10    肌寒にひと恋しかるらむ       蘭  秋恋
11  口下手はジンの濃いめにギムレット    牙  恋
12    待ち合わせには時計はずして     水
12    背中で語る昭和ヒトケタ      ね子
13  こりもせず妻の買ひ物つき合ひぬ     蘭    両句に
14    支離滅裂を斬新と褒め        葛
15  詠み人の正体実はプログラム       栞
16    親が結局こなす宿題         蘭
17  老いの目に矯めつ眇めつ凍てる月     葛  冬月
18    ぎしりぎしりと米を研ぐ音      水
19  田芹採り土筆を摘みて節約す       ね  春
20    高嶺は残る雪に際立つ        蘭  春
21  淡墨のごとく咲きにし花も散り      栞  春花
22    また来ん春とつぶやきてみる     葛
二オ
23  南仏風英国風と分譲地          水
24    懐乏し夢のあるとき         ね
25  平凡に生きてゐられるありがたさ     蘭
26    ひなたぼつこの猫の同胞       栞
26    ご飯炊けたの声に目覚める      牙
27  行く先はその日の気分旅衣        葛    両句に
28    発句でまづは亭主持ち上げ      蘭
29  一巻の終はりはいつも春の宵       ね  春恋
30    二人しとねに望む淡月        蘭  春月恋
31  菜の花も添へてオムレツふわふわに    葛  春
32    クチコミだけで伸びる行列      栞
33  予報ではことしの梅雨は長いとか     蘭  夏
34    はやりの服を美容師に聞く      水
35  カリスマに和すは易らぬ人の性      栞
36    選挙勝つには世論誘導        蘭
二ウ
37  若者よスマホを捨てよテレビ見よ     葛
38    俗事にうとく直に四十        蘭
39  室咲きの鉢に水やる塾講師        牙  冬
40    連獅子の夢果たし感慨        葛
41  三代目てて親よりも爺さん似       蘭
42    秘伝のたれの中身聞くまい      水
43  風に乗る匂ひ嗅ぎ分け秋渇        栞  秋
44    家路をせかす釣瓶落しよ       蘭  秋
45  今日の月誰かが住んでゐる気配      ね  秋月
46    憂さ晴らしする相手探して      栞
47  目指すのは世界遺産と山ガール      葛
48    背を追いかける息の切なさ      水
49  でおくれて樹下一面の花むしろ      蘭  春花
50    嵯峨念仏の舞台賑ふ         栞  春
三オ
51  風船に迷子やうやく泣きやみて      葛  春
52    日比谷公園昼寝天国         水  夏
53  新緑のまばゆし人もころもがへ      蘭  夏
54    見初めしよりもなほ麗しく      栞  恋
55  差し向かうプラットホームで手を振りて  水  恋
56    一期一会は旅の醍醐味        蘭
57  忘れゐし栞はらりと文庫本        葛
58    押し花造り姉に教わる        水
59  リタイアー正直ひまを持て余し      蘭
60    弱小チームならばレギュラー     牙
61  四股を踏む姿似合ふとおだてられ     栞
61  月影を相手に素振り百二百        蘭  秋月
62    腹一杯の茸飯喰ふ          栞  秋  両句に
63  爽涼に犬の散歩の距離延ばし       蘭  秋
64    手綱捌きはあなた任せで       葛
三ウ
65  何時の間に銀婚式も通り過ぎ       ね
66    へそくり投資ネット・トレード    蘭
67  喫煙所スマホ片手の美人秘書       牙
68    ミニスカートに動悸速まる      ね  恋
69  魔が差して嘆きの天使堕ち行けり     栞  恋
70    証拠写真は見つからぬまま      葛
71  知り合いは誰にもあたらぬ裁判員     水
72    初神籤引き末吉と出る        栞  新年
73  髪上げの晴れ着のひとを品定め      蘭  
74    辛口通し世間狭める         葛
75  花曇好みの酒は独り飲む         ね  春花
76    春の叙勲に並ぶ碁敵         水  春
77  縁側に広げし紙面みだす東風       蘭  春
78    ロイド眼鏡の行方訊ねる       牙
名オ
79  鼻濁音南部訛りのわざとめき       葛
80    ともの帰省に乗じ借るやど      蘭  夏
81  屋根裏のアパート照らす月涼し      栞  夏月
82    カルチェラタンのカフェで読書を   水
83  ツアーではフリータイムも魅力にて    蘭
84    時間差で出る駅の改札        ね
85  親どうし犬猿ゆゑに忍ぶ恋        蘭  恋
86    心中隠し告げる道行         栞  恋
87  飛びながら叱咤一声ほとゝぎす      蘭  夏
88    さみだれ縫つてめぐる鎌倉     野茨  夏
89  スタンプを集めて早くゴールへと     栞
90    カラコロ下駄のひゞく湯治場     蘭
91  おまけよとコロッケ一個加へられ     葛
92    無駄かも知れずトクホ飲料      水
名ウ
93  かそけくも生き永らへし冬の蝶      栞  冬
94    きのふの鍋に具を足して鍋      蘭  冬
95  書きさしの論文猶もまとまらず      葛
96    猫なで声で餌を催促         水
97  歌舞伎みて夫婦に会話もどる夕      茨
98    ちょろぎの酸味優しさ募り      蛉
99  てのひらに散れる花片うけとめて     蘭  春花
挙句    囀る鳥の仲間入りせん        葛  春

・・・経過は

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真提供はフォト蔵さん

2013年4月15日月曜日

『貞享式海印録』ー 正風復古の願ひを起して同じ流れに遊ばゝや


幕末に原田曲齋は芭蕉在世時の蕉門の式目作法を分析定義した。本書は正風の俳諧師を自認する人のための座右の書/虎の巻である。#jrenga 連歌 俳諧 連句   電子版が国立国会図書館の近代デジタルライブラリにアップされている。
所収:俳論作法集 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/39  
書籍は日本の古本屋  http://www.kosho.or.jp/servlet/bookselect.Kihon で俳論作法集を検索すれば数冊ヒットする。

電子版『貞享式海印録』を活用できるように目次をURLリンク化した。

       頁 コマ番号      画像のURL          
貞享式海印録  56 39 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/39  
目録      58 40 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/40 
一の巻
 発句     72 47 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/47   
 脇 身柄の論 74 48 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/48  
 第三の節  119 70 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/70  
 三物    136 79 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/79   
 表物    138 80 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/80  
二の巻
 去嫌惣論  141 81 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/81 
 表の事   143 82 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/82   
 四句目   149 85 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/85 
 裡移り   150 86 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/86 
 匂花挙句  151 86 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/86 
 奉納    159 90 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/90 
 夢想    163 92 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/92 
 追善    165 93 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/93 
 人倫と噂の弁172 97 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/97 
 支体    195 108 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/108 
 病     199 110 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/110 
 述懐    200 111 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/111 
 山類    202 112 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/112 
 水辺    204 113 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/113 
 雑場    207 114 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/114 
 居所    212 117 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/117 
三の巻
 恋     217 119 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/119 
 旅     236 129 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/129 
 名所    237 129 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/129 
 神釈無常  242 132 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/132 
 乾坤門   252 137 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/137 
 時分    263 142 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/142 
 夜分    266 144 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/144 
 時節    267 144 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/144 
 四季    270 146 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/146 
 雑     285 153 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/153 
四の巻
 月     294 158 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/158 
 素秋    322 172 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/172 
 日     326 174 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/174 
 星     330 176 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/176 
 花     330 176 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/176 
 植物    350 186 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/186 
 生類    358 190 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/190 
五の巻
 填字    365 193 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/193 
 別吟    367 194 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/194 
 留字    369 195 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/195 
 辞てには  381 201 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/201 
 体言用言  395 208 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/208 
六の巻
 火体    457 239 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/239 
 色立    459 240 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/240 
 畳付    460 241 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/241 
 一字一点  463 242 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/242 
 准付    467 244 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/244 
 軍事地獄  470 246 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/246 
 死活    475 248 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/248 
 一句立   477 249 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/249 
 両体用   481 251 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/251 
 輪廻    483 252 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/252 
 内外    485 253 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/253 
 禁物並変格 487 254 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950166/254


参考:佐々醒雪の解題

 全編芭蕉の伝書といふ貞享式、一名二十五条を根拠として、許多の俳諧に例証を求め、蕉門俳諧の式目を帰納的に論断せんとしたるものなり。 

 かの二十五条が芭蕉より其角、去来に伝り、去来より支考に伝りたりといひ、又は支考の偽作なりといふ、その当否は今必しも定むるを要せず。 

 曲斎は芭蕉の出席せる俳諧の巻々を悉く調査し、その足らざるものを、直門の高足等が俳諧によって補ひて、実例を根拠としたる通則を発見し、これを二十五条及び貞徳風と比較したるものなれば、蕉門の式目としては、既に疑念を挿み難き断案を下したものといふべし。  

 引用せる俳書数百部、芭蕉とその高弟との著は成し得る限り渉猟せるものにして、天明期以前の俳諧の形式は殆どここに尽きたりといふべし。

2013年4月8日月曜日

【満尾】第四千句第六百韻『若草や』の巻



                      百韻『若草や』の巻   
                                                                                2013.4.8〜5.5

発句  若草や文庫で読みし資本論       風牙  春
脇     げんげ田かへす耕耘機の音     春蘭  春 
第3  春疾風聟取りの村華やぎて       曙水  春
4     日舞の稽古手取り足取り      草栞
5   顔に似ぬ厳しさが売り評判に      真葛
6     無垢の一枚板カウンター       牙
7   頬杖で眺むる今日の月明し       ね子  秋月
8     添い臥の稚児包む虫の音       水  秋  そいぶし

9   鬼の子と言はれ父恋ふ健気さよ      葛  秋
9   つりあはぬちぎりはかなくそでのつゆ   蘭  秋恋
10    面影慕ひ干せる中汲         栞  秋恋 両句に
11  長旅を終えて見下ろす滑走路       牙
12    リノリウムさへ匂ひ懐かし      蛉
13  若作りしてゆく孫の参観日        蘭
14    フォークダンスの足がよろける    葛
15  打ち上げはキャンプ・ファイアー缶ビール 蘭  夏
16    祭終ればむら冬支度         水  秋
17  最果ての海峡越えて鶴渡り        栞  秋
18    孤独身にしむ教室の窓        ね  秋
19  彫像の遠き眼差し月浴びて        葛  秋月
20    乙女らまとう春色の服        水  春
21  枝々に小鳥さへづる花大樹        蘭  春花
22    ランドマークの鐘は霞めり      葛  春
二オ
23  ツイートもメールも返信待ちの僕     水  恋
24    予約の取れぬ店で決戦        牙  恋
25  あかつきに羊羹めあての列のびて     蘭
26    ネズミいつしか寺に住みつく     葛
27  鍵つ子で街を彷徨ふローティーン     ね
28    亡き母想ふコゼットのごと      栞
29  成長の糧と不幸を乗り越えん       蘭
30    さざ波立てば揺れる満月       水  秋月
31  川霧のはれて顕はる舫い船        葛  秋
32    木犀薫る隠れ処の径         栞  秋
33  密造酒蔓延る街は風強し         牙     はびこる
34    ゴミに群がるからす艶よき      蘭
35  ばっさりと黒髪切るも二十の子      葛     はたち
36   「時分の花よ」乙女心は        水
二ウ
37  幽玄の風姿とどめよ今しばし       栞
38    烏賊に見立ててアロエベラ切る    牙
39  万能といふ触れ込みに騙されて      ね
40    うちの文化は包丁と鍋        水
41  母の日や筍めしの薄き味         蘭  夏
42    青嵐吹きて木々のざわめき      栞  夏
43  隣国に戦さ間近の噂あり         葛
44    スマホ出す度相場気になる      牙
45  鑑定は銀月錆びた大屏風         水  秋月
46    相続協議冷ややかに過ぐ       蘭  秋
47  藷掘りの続く道程一時間         牙  秋
48    二人で過ぐすときは短かく      ね  恋
49  めぐり逢ひて花の命を惜しみけり     栞  春花恋
50    山菜採りに入る奥山         蘭  春
三オ
51  穴を出て熊は行く手を見失ひ       葛  春
52    ダンプばかりとよくすれ違う     牙
53  立て看は頭を下げて「工事中」      水
54    忘れた頃に余震頻発         栞
55  飯いいと言はず帰りが遅くなり      蘭
56    これ見よがしにプラチナピアス    葛
57  昇降機五十階より降りてきて       牙
58    住まひ選びは実に難問        蘭
59  年の瀬のローンの重みいや増しぬ     栞  冬
60    子を叱りつつ先思いやる       水
61  ゆふぐれの植田ころころ啼く蛙      蘭  夏
62    打ち捨てられし緒の切れた下駄    葛
63  面影を思いきれずに春の宵        水  春恋
64    朧月にも著き恋やせ         葛  春月恋 しるき
三ウ
65  はらはらと散りて花びら埋む径      蘭  春花  うづむ
66    たゆたふ河の流れアダージョ     栞
67  悠久を求め私もインドへと        水
68    熱にうなされまた同じ夢       牙
69  猛暑日の予報うらめし蝉しぐれ      蘭  夏
70    草刈鎌は錆びる暇なし        葛  夏
71  下町の職人芸の活きてをり        栞
72    路地に並びし丹精の菊        水  秋
73  声掛けて声の戻らぬ月の夜        牙  秋月
74    新酒をあけて手向く一献       蘭  秋
75  様になる見よう見まねの太郎冠者     葛
76    村おこしにと舞台復活        蘭
77  奈落より脱出するも道険し        栞
78    百日紅とて落ちぬ空蝉        牙  夏
ナオ
79  うな重で上手くなりたる箸づかひ     蘭  夏
80    円安に乗りツアー賑はふ       葛
81  近くとも遠き国より使者来る       栞
82    スワンの息の白き寒靄        蘭  冬   かんあい
83  黄昏の枯野に独り佇みて         栞  冬
84    指折りてみる夢のあれこれ      葛
85  巷では景気良くなるてふ噂        牙
86    着飾つてゐる歌舞伎座の前      ね
87  背伸びしてメニューに迷ふ初デート    蘭  恋
88    告白タイム給仕目くばせ       栞  恋
89  転職の場にも刑事の名残出て       葛
90    あぶれ蚊あはれ打つ人もなし     蘭  秋
91  十五夜は戦国の世も丸き月        ね  秋月   まろき
92    古りにし城趾色変えぬ松       蘭  秋
ナウ
93  正宗は酒と限らぬ上戸殿         水
94    泣くも笑ふもこれが青春       葛
95  後知恵の先に立たずは道理なり      栞
96    末は議員と競う弁論         牙
97  茶と菓子を子が指図する春炬燵      蘭  春
98    雛の家にもランドセル増え      栞  春
99  二宮の像よ上見よ花の影         牙  春花
挙句    巣立ちの鳥の声のにぎやか      葛  春

・・・経過は

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真提供はフォト蔵さん

2013年3月9日土曜日

【満尾】第四千句第五百韻『径なくて』の巻



                      百韻『径なくて』の巻   
                                                                                2013.3.9〜4.2

発句  径なくて篁くづる菫かな       楸邨  春 たかむら:竹薮     
脇句    番ひの雉子の葎ゆく影      春蘭  春 つがひ
第三  座敷中雛道具など散らかして     ね子  春
4     下手な習字を見つけ赤面     草栞
5   初孫の授業参観いそいそと       蘭
6     高度成長時代駆け抜け      風牙
7   望くだり飲み友達はちりぢりに    真葛  秋月
8     夜長を過ごすアパートの鍵     ね  秋

9   虫すだくクロスワードのあと一語   曙水  秋
10    はぐらかされし愛の告白      蘭  恋
11  ドン・ファンはお手をどうぞと繰り返す 栞  恋
12    踊る阿呆は寂しからずや      ね
13  いざブログ牧水調の歌添へて      葛
14    本郷の坂息たへだへに       蛉
15  二人の子乗せる自転車母強し      牙
16    スケッチブックに素描描き留め   栞
17  復興の願ひ膨らむ遠花火        ね  夏花
18    祭囃子に惹かれ行く町       蘭  夏
19  そそくさと夕餉は残りごはんにて    〃
20    ドラマの録画溜まる一方      牙
21  山の端に見る人もなき冬の月      葛  冬月
22    湖面に降るる水鳥の群       ね  冬
二オ
23  故郷を持たぬ身軽さ頼りなさ      水
24    都市伝説の嘘も真に        栞
25  左手の小指の爪は桜色         牙  恋
26    春の恋なら春に終はらす      ね  春恋
27  ぬくもりをいざ断ち切らん巣立鳥    蘭  春
28    良きことあるや初虹の見ゆ     葛  春
29  名画より光と影の溢れ出で       栞
30    二時間待ちの札にげんなり     牙
31  拉麺は蘊蓄よりも食うが良し      水
32    つけつぱなしのテレビながら見   蘭
33  頷いて済ます会話も十年目       牙
34    強気の陰に透ける小心       葛
35  ミシュランを信じぬシェフの匙加減   栞
36    しかめっ面も弛む絵葉書      牙
二ウ
37  蜜月を終えてパンダ舎再開す      ね
38    うららに釣られぞろり出不精    蘭  春
39  見渡せば散るを厭わず花は咲く     水  春花
40    陽炎のごと去りし武士       栞  春  もののふ
41  待ち合わせ場所はSL広場にて     牙
42    腕絡ませる休日の午後       ね  恋
43  君がなほ辛き身なりと耐へる愛     葛  恋
44    溢るるばかりのビールごくごく   水  夏
45  いつかはと念ひし山を踏破して     蘭  夏
45  夏フェスを終えてバンドは舞台裏    牙  夏
46    ローカル局の取材厭はず      栞     両句に
47  落選の噂もありて元大臣        ね
48    我が世の春よ窓に望月       水  春月
49  桜咲く門の内にて八文字        牙  春  はちもんじ
50    軟東風吹きて揺れる簪       栞  春
三オ
51  卒業の旅で変身舞妓さん        蘭  春
52    慣れぬ手つきでシャッターを切る  牙
53  ツチノコを探すと友は西ひがし     ね
54    リタイアしたら俄然生き生き    蘭
55  蕎麦打ちに連歌の道を極めたる     栞
56    祭り上げられ親善大使       葛
57  尼寺の庵主しるせし本売れて      蘭
58    続き見るには有料となる      牙
59  三月ごと新聞替へて映画券       蘭     みつき
60    ミンク捲きたる顔の卑しき     葛  冬
61  狩人の道に迷えばレストラン      牙  冬
62    秘密のレシピ身体には毒      ね
63  ピアノの音漏るる洋館月赤し      牙  秋月
64    郵便受けに絡む蔦の葉       栞  秋
三ウ
65  待ちかねた嫁の里より新走り      水  秋
66    汲めど尽きせず古典逍遥      蘭
67  とくとくの清水流るる棲処にて     栞
68    お血脈札閻魔欲しがり       水
69  真打ちとなるには足らぬ色と艶     牙
70    憎まれ口をたたき気を引く     葛
71  こゝろとは逆に振る舞ふをさな恋    蘭  恋
72    フォークダンスの手に滲む汗    牙  夏恋
73  隊商の砂漠越えゆく月暑し       水  夏月
74    広場に響む物売りの声       栞     どよむ
75  真作のはずは無けれどガレの壺     牙
76    貸し借りなしの長き付き合ひ    葛
77  パッと咲きサッと散り行く花は友    ね  春花
78    千歳の松のみどり美し       蘭  春  うるはし
ナオ
79  恨み言一つ言わずに蜆汁        牙  春
80    絆絆とポスターを貼る       水
81  慕はしき名前何度も確かめて      栞  恋
82    相合傘は五月雨の中        ね  夏恋
83  籠り居る宿に想練る次回作       葛
84    伸ばしては剃るごま塩の髭     蘭
85  我が家にはサンタクロースは来ないのよ 水  冬
86    仏の煤を払ふ小坊主        蘭  冬
87  居酒屋に隠語で話す二人組       牙
88    ワインのコルク床に転がり     栞
89  難破船噂ありしがいつか消え      葛
90    店舗誘致で決まる集客       牙
91  廃屋と残土を照らす朧月        水  春月
92    風船飛ばす定年の人        ね  春
ナウ
93  花の香は古き枝にも蘇り        栞  春花
94    壁画の下の別の絵を知る      牙
95  講釈のおまけ付けられ吟醸酒      葛
96    木彫りの鼠張り扇で鳴き      水
97  江戸情緒探索〆に寄席へ行き      蘭
98    スカイツリーの消ゆる電飾     栞
99 「夜の梅」土産に貰ひ春の星       牙  春
挙句    鈴の音もあり遍路笠見ゆ      ね  春

・・・経過は

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真提供はフォト蔵さん

2013年2月6日水曜日

【満尾】第四千句第四百韻『さざ波は』の巻  


                      百韻『さざ波は』の巻   
                                                                                2013.2.6〜2.28

発句  さざ波は立春の譜をひろげたり  水巴  春     
脇句    東風に吹かるゝ堤のをとめら 春蘭  春  てい
第3  雉ほろろ玉追う子には罪もなし  風牙  春
4     無垢の小筥に仕舞ふ臍の緒  草栞
5   旅立ちの準備万端整ひて     真葛
6     無料アプリも割と役立つ    牙
7   待宵の今日の運勢占ひぬ     ね子  秋月
8     貴人挿頭す紅葉一枝     曙水  秋  あてびと かざす

9   初嵐芸妓のひとり路地急ぐ    玄碩  秋
10    ”妻”と記して君を待つ宿    蘭  恋
11  俳句でも一つ捻つて捧ぐ愛     栞  恋
12    声高にては云へぬ腰痛     葛
13  孫娘前にすべてをそっちのけ    蛉
14    パソコン慣れてネット通販   蘭
15  口コミの評判さへも金次第     ね
16    暇な隠居は地獄耳にて     栞
17  犬吠えて向かいの娘は朝帰り    碩
18    有明月をとどむ夏空      葛  夏月
19  大漁と烏賊釣船の旗なびく     牙  夏
20    白寿赤飯お裾分けきて     水
21  枯枝に花咲くごとく若返り     栞  春花
22    子供のお古似合ひ麗らか    蘭  春
二表
23  奪ふべき愛ふらここに託し漕ぐ   葛  春恋
24    四月馬鹿にも淡き初恋     ね  春恋
25  付け文に差出人の名の無くて    牙  恋
26    告白披露罰ゲームなり     蛉
27  振り返るわが青春は悔いに満ち   蘭
28    古い手帳にペンは走らず    碩
29  ブラインド・タッチ華麗な新世代  蘭
30    国会中継コンサートなみ    葛
31  冬ざれの日本経済上向いて     ね  冬
32    滑らぬやうに歩く雪道     栞  冬
33  学校は知育偏重試験漬け      蘭
34    やる気演技でみせる就活    〃
34    世にはざらなり答えなき問ひ  〃
34    可愛さ変わらずどれもどんぐり 水  秋
35  月よ月我ら等しく死に近し     ね  秋月 三句に
36    山海の幸並ぶ賢治忌      牙  秋
二裏  
37  猫の手も借りたいほどの芋煮会   栞  秋
38    本家争ひしばし休戦      葛
39  呼び込みの熱さで決めるあぶり餅  蘭
40    青空市は今日も賑やか     ね
41  アンティークグラス二脚のクリスマス 牙 冬
42    嘘かまことか王の血筋と    葛
43  山陵を越えて広がる青田波     碩  夏  みささぎ
44    不意に現る虹の架橋      栞  夏
45  ポケットの婚約指輪取り出せず   ね  恋
46    葡萄酒醸し刻む君の名     牙  秋恋
47  待たされて有明の月薄蒼く     水  秋月
48    花紅葉敷く寺の延べ段     蘭  秋花
49  千年の古都の誇りは今もなほ    葛
50    ゴンドラ漕ぎもベルカントにて 栞
三表
51  チップにと覗く財布に小銭無し   牙
52    唇赤き七五三の子       ね  冬
53  初時雨止みて手水に光満つ     栞  冬
54    人気作家の返本の山      葛
55  評判は良くも悪くもバズられる   蘭
56    重き扉を開くる躊躇ひ     牙
57  教会に憬れ抱く仏教徒       ね
58    バージンロード父は疎まし   水
59  身ごもりを服で隠せぬやうになり  蘭
60    ここが出番と鳩の飛び出す   葛
61  道化師の子等はやしたて辻舞台   蛉
62    夏草燃ゆる城の坂下      栞  夏
63  刀から蚊遣りまで売る骨董屋    水  夏
64    伏し目にかくす志しあり    葛
三裏
65  少年の夢は宇宙に植民地      ね
66    アニソンばかり歌うカラオケ  牙
67  オフ会やハンドル名のこそばゆさ  蘭
68    闇にまぎれて触れる君の手   葛  恋
69  ボエームを想ひ耳まで赤くなり   栞  恋
70    大気汚染で意識失ふ      ね
71  噂して曹操がくる四千年      水
72    歴史は知恵の宝庫なりとや   蘭
73  鷄か卵が先か気になりて      ね
74    食欲誘ふ三つ葉芹の香     牙  春
75  水音を空耳かとも月朧       葛  春月
76    日永過ごすに足りる狭筵    蘭  春
77  孫ひまご祖父母の家は花盛り    ね  春花
78    写真館にて記念撮影      栞
名表
79  星屑の落ちし北の地五稜郭     牙
80    出張ついでに市内観光     蘭
81  庭先の路面電車に菊ゆるゝ     蛉  秋
82    駅長のごと案山子佇む     ね  秋
83  瓢の笛誰ぞ吹きたる月の夜     牙  秋月
84    人さらひとや聞くも恐ろし   葛
85  韓流を追っかけ家事はそっちのけ  蘭
86    目が離せない字幕スーパー   水
87  顧て初めて気づく恋心       栞  恋
88    相合傘を書いてまた消し    葛  恋
89  放課後に一人残されドリル解く   牙
90    おやの渋面浮かぶゆふぐれ   蘭
91  ひと月に十三回の里帰り      ね
92    政策変わって弟妹ができ    水
名裏
93  口遊むいろはにほへとほろ酔ひて  葛
94    あさきゆめみてさめしあけぼの 蘭
95 「芝浜」のかみさんほどに芸もなく  水
96    付け払ひせでお後よろしく   栞
97  春風に列みだれなきラーメン屋   蘭  春
98    頑固一筋山も笑へり      ね  春
99  花守の留め置き事項また増えて   葛  春花
99  若松の堀を染めたる花鏡      牙  春花
挙句    筵で待つは新社員らし     牙  春  両句に 

・・・経過は

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方
写真提供はフォト蔵さん

2013年1月18日金曜日

発句考


1、 蔦の葉は残らず風のそよぎ哉 荷兮  発句はかくのごとく、くま
   ぐままでいひつくすものにあらずとなり。(去来抄 去来)

2、 下臥につかみわけばや糸ざくら 其角  いひ課(おほ)せて何か
   ある。(言い尽くして何があるか、何も残らない。)(去来抄)

3、 発句は物をとり合せすれば出来る物なり。それをよく取合せするを
   上手といひ、あしきを下手といふなり。(去来抄)

4、 発句の事は行って帰る心の味なり。たとえば、山里は万歳おそし梅
   の花 といふ類なり。(三冊子 土芳)

5、 句姿も高く位よろしきをすべしとむかしより言ひ侍る。先師は懐紙
   の発句かろきを好まれし也。時代にもよるべき事にや侍らん。(三冊子)

6、 切字なくては発句の姿にあらず、付句の体也。切字を加へても付句
   の姿ある句あり。誠に切れたる句にあらず。又切字なくても切れる
   句有り。(三冊子)

7、 発句はその座の風景、時節相応、賓主の挨拶による事常の習也。(俳諧
   無言抄 梅翁)

8、 発句案じ方の事 発句を案ずるには先づ題に結ばむと思ふものを、
   胸中に画きて見るべし。鏡花水月の案じ方といふなり。。。只句は
   言尽すまじきものなり。。。上手の画は画外に在り、上手の詩歌は、
   言外に風情を備ふ。(俳諧発句小鏡 蓼太)

9、 句に理屈を抜く事 発句は理屈より案ずべからず。(俳諧発句小鏡)

2013年1月15日火曜日

俳諧の本質的概論 (抄) 寺田寅彦


現代のいわゆる俳壇には事実上ただ発句があるばかりで連句はほとんどない。子規の一蹴いっしゅうによってこの固有芸術は影を消してしまったのである。しかし歴史的に見ても連俳あっての発句である。修業の上から言っても、連俳の自由な天地に遊んだ後にその獲物を発句に凝結させる人と、始めから十七字の繩張なわばりの中に跼蹐きょくせきしてもがいている人とでは比較にならない修辞上の幅員の差を示すであろう。鑑賞するほうの側から見ても連俳の妙味の複雑さは発句のそれと次序オーダーを異にする。発句がただ一枚の写真であれば連俳は一巻の映画である。実際、最も新しくして最も総合的な芸術としての映画芸術が、だんだんに、日本固有の、しかも現代日本でほとんど問題にもされない連俳芸術に接近する傾向を示すのは興味の深い現象であると言わなければならない。

参考文献:
(1) 青空文庫 俳諧の本質的概論 寺田寅彦
(2) うわづら文庫 連句藝術の性格 能勢朝次 
  第一章 連句研究の現代的意義 第一節 一対三十五において引用 

2013年1月10日木曜日

俳諧に迷ひて俳諧の連歌といふ事を忘れたり 

去来抄  日本名著全集 江戸文芸之部第二巻 芭蕉全集  

魯町曰。俳諧の基とはいかに。

  訳:魯町が言った。「俳諧の基(もとい:基礎・土台)とはなにか?」

去來曰。詞にいひがたし。凡吟詠するもの品あり。歌は其一なり。其中に品
あり。はいかいは其一なり。其品々をわかちしらるゝ時は、俳諧連歌はかく
のごときものなりと、おのづからしらるべし。

  訳:去来が言った。「一言では言いにくい。おおよそ吟詠する詩歌にも
    種類がある。和歌はその一つだ。その中にも種類がある。俳諧歌は
    その一つである。その種類を分けてそれぞれが理解できた時に、俳
    諧の連歌とはこういうものだと自然にわかるだろう。」

それをしらざる宗匠達はいかいをするとて、詩やら歌やら、旋頭・混本歌や
ら知らぬ事をいへり。是等は俳諧に迷ひて、俳諧連歌といふ事を忘れたり。

  訳:「それ(俳諧の連歌の詩歌における成り立ち・位置付け)を知らな
    い宗匠達は、俳諧をすると言って漢詩やら和歌やら、旋頭歌、混本
    歌やらわけのわからぬことを言っている。これらは俳諧という言葉
    に迷わされて、俳諧が俳諧の連歌だということを忘れてしまったの
    だ。」

俳諧をもて文を書ば俳諧文なり。歌をよまば俳諧歌なり。身に行はゞ俳諧の
人なり。唯いたづらに見を高くし、古をやぶり、人に違ふを手がらがほに、
あだ言いひちらしたるいと見苦し。

  訳:「俳諧の心(滑稽、おかしみ、戯れ)をもって文章を書くならば俳
    諧文である。俳諧の心をもって和歌を詠むならば俳諧歌である。俳
    諧の心をもって行動するならその人は俳諧の人である。ただ無駄に
    考え方を高慢にし昔からのやり方を破り、他人と違うことを自慢顔
    にいいかげんなことを言い散らしている輩がいるがとても見苦しい。」

かくばかり器量自慢あらば、はいかい連歌の名目をからず、はいかい鐵炮と
なりとも、亂聲となりとも、一家の風を立てらるべし。

  訳:「それほど自分の才能が自慢ならば、俳諧の連歌という名前を借り
    ずに、俳諧鉄砲とでも、乱声(らんじょう)とでも名付け、俳諧の
    軒を借りずに一家を立てるべきであろう。」

コメント:
『去来抄』の修業教の冒頭に不易流行と並んである一文である。芭蕉の在世
当時から本分を忘れたあやしい俳諧もどきが横行していたようだ。

●「俳諧は上下取り合わせて歌一首と心得べし。」支考『芭蕉翁二十五箇条』の第一条で心は去来抄の一文と同じである。以下の記述も同様である。

●「俳諧もさすがに和歌の一体なり。句にしをりの有るやうに作るべし。」(去来抄)

●「発句の脇は歌の上下(かみしも)也。是を連ねるを連歌といふと云。一句一句に切るは長くつらねんが為なり。」(去来抄)

●「俳諧は歌なり。。。和歌に連歌あり。俳諧あり。。。古今集にざれ歌を俳諧歌と定む。是になぞらへて連歌のただごとを世に俳諧の連歌といふ」(三冊子)

現代の連句界はとながめてみると、俳諧は俳諧の連歌で二句で短歌になるよ
うに詠むことを忘れた、温厚な去来が思わず怒りをこめて言った俳諧鉄砲や
乱声の輩の末流が跋扈している感がある。

参考: 連歌とは

2013年1月2日水曜日

【満尾】吉例新春顔見世興行 連歌百韻『初御空』の巻

第四千句第三百韻 #jrenga

      百韻『初御空』の巻   
                    2013.1.2〜1.13

発句  初御空鴉はいつも自在なり      真葛 新年 
脇句    淑気満ちたる白銀の富士     春蘭 新年 しろがね
第三  獅子頭蔵開けたれば陽を浴びる    ね子 新年
4     町おこしにと祭り復活       蘭
4     おぼえず酔ひの回るきき酒     〃
5   深更に正座して聴く秘伝あり     滋音    両句に
6     弓張月の行方追ひかけ      草栞 秋月
7   新蕎麦を粋にたぐりて寄席帰り    曙水 秋
8     店主こころ得秋袷褒む       葛 秋
8     扇忘れし客は二代目       風牙 秋

9   座敷より眺むる溪を紅葉染め     玄碩 秋  両句に
10    錦の帯締め秋の吉日        水 秋
11  松風の耳に清しく居を直し       蛉
12    しのぶ栄華は夢の城あと      蘭
13  定年後世界遺産に想い馳せ       牙
14    夏至のローマに二人落ち合ふ    ね 夏恋
15  ライバルもひしめき恋のさや当てか   栞 恋
16    君は知らじな桑田清原       水
17  蛮勇を部下に自慢のガード下      牙
18    思はぬ方に落し穴あり       葛
19  子が出来て構ってくれなくなった妻   蘭
20    ダイエットする決意固める     音
21  雲海に昇る朝日の花照らす       牙 春花
22    春嶺遥か八重に連なり       栞 春
二オ
23  通学の自転車のベル夏近し       碩 春
24    サンキュと云へばサンキューと云ふ 葛
25  円満の秘訣は笑顔と忍耐と       ね
26    月末に見るカード明細       牙
27  ケ・セラ・セラ江戸っ子気質はやせ我慢 蘭
28    掛け算九九は風呂で覚える     牙
29  あこがれの一人一部屋一戸建て     蘭
30    みかん食べつつテレビ三昧     葛 冬
31  未だ見ぬ寺より響く除夜の鐘      栞 冬
32    これも煩悩ねこを侍らす      ね
33  両の手に紙袋下げ入るカフェ      蘭
34    日当貰いシャワー使える      牙
35  夏の月リゾートバイトは海の家     蘭 夏月
35  洗い髪振り向く君が眩しくて      水 夏恋
36    虹を指しつつ初な告白       栞 夏恋
二ウ
37  ポケットに入れし詩集の紙魚の跡    牙 夏
38    話が弾む職務質問         ね
39  高跳びの自慢噺は封印し        葛
40    五輪招致につきまとう影      牙
41  好景気望まぬ人は居らぬらん      蘭
42    ジュリアナ世代今や美魔女に    水
43  若返りこそ人間の永遠の夢       蘭
44    iPSに賭けてみようか      栞
45  秘中の秘あなただけにと囁かれ     牙
46    春競馬にて狙ふ大穴        ね 春
47  風邪っ気も吹き飛ばしてや花吹雪    蘭 春花
48    ツンと抜けたる山山葵の香     牙 春
49  朧夜の回転寿司にトロを食ふ      ね 春
50    カネの話はひとに任せて      葛
三オ
51  腕利きの職人気質衰へず        栞
52    老舗と本家張り合いて居り     水
53  暖簾にはかからぬようにと水を打ち   碩 夏
54    小僧十三甘味恋しき        蛉
55  毘沙門天を右に折れれば石畳      牙    びしゃもん
56    ロケ地効果を皮算用し       水
57  リゾートに突如戦国館でき       蘭
58    フリーパス持ち西へ東へ      葛
59  枯菊を残して消えた男追ひ       ね 冬恋
60    待伏せ辛き寒の有明        栞 冬月恋
61  ひとげ無き氷湖に残る穴二つ      牙 冬
62    悪童まえにつづく怪談       葛
63  草廬出て大路日課の辻説法       蘭
64    荷駄も歩みを少し緩めて      碩
三ウ
65  少しだけ横顔見せた異邦人       栞
66    モロッコ革のカバー手擦れて    水
67  背伸びする父の書斎のウイスキー    牙
68    親の旅中に友と留守番       蘭
69  待ち受けの画面はなぜか猫ばかり    葛
70    ブログに綴る人気スイーツ     牙
71  結界を囃し虚ろになりにけり      蛉    はやし
72    見返り柳ゆれる後朝        蘭 恋
73  南風見せるうなじはか細くて      碩 夏恋
74    海霧に汽笛の咽び泣くとや     栞 夏  じり
75  六十路坂初クルーズに漕ぎ着けて    蘭
76    恐る恐るのタンゴステップ     葛
77  花形となりし片鱗窺はせ        栞 雑花
78    匠究めて深き眼の人        蛉
ナオ
79  泥沼流さわやか流とも呼ばれけり    ね
80    番狂わせと言えぬ風格       牙
81  勝越しに斗酒まだ辞せぬ午前二時    碩
82    手水の窓を中天の月        蘭 秋月 ちょうず
83  回廊を渡れば菊の馥郁と        牙 秋
84    春日の杜に鹿の群れなす      栞 秋
85  やはらかき煎餅好むばばと孫      葛
86    障子を透し届く小春日       碩 冬
87  川の字の天井躍る影絵かな       蛉
88    生謳歌する如く啼く蝉       蘭 夏
89  短夜をともに過せる終の刻       栞 夏恋
90    肩抱きくれし御手の恋しき     葛 恋
91  通学路メニュー変わらぬ喫茶店     牙
92    卒業写真ひとりわからず      水
ナウ
93  自分史で賞を狙ってネタ集め      蘭
94    こんぐらかりし編みかけの糸    葛
95  縁側に猫は寛ぎ毛づくろひ       蘭
96    苔むす石はやや陽溜まりに     蛉
97  水温む頃となりしや潦         栞 春 にわたずみ
98    逃げる蝌蚪追う子のはしゃぎ声   牙 春
99  早咲きの花を門出に栄転す       水 春花
挙句    ますます高く上がる風船      ね 春

・・・経過は

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
付け転じ方

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2012年12月6日木曜日

【満尾】第四千句第二百韻『荒星や』の巻


     百韻『荒星や』の巻   
                2012.12.6〜12.24

発句  荒星や黒塊となる屋敷林      曙水 冬
脇句    大根簾叩く幼子        風牙 冬
第三  喝采の受賞祝ひは炬燵にて     草栞 冬
4     けふもけふとて酒が飲めるぞ  春蘭
5   木の下にぽつねんと待つ新社員   玄碩 春
6     夜明けの花を慰めとして    ね子 春花
7   ふらここを立ち漕ぎすれば月近く   水 春月
8     良い子は帰宅せよと童謡     蘭

9   テーブルに一つ置かれしカップ麺   牙
10    なんだかんだと飛んでゐる妻   蘭
11  ”出張”の土産物とて水中花       ね 夏恋
12    禊を済ませ受け容れる愛     栞 夏恋
13  漸くに払い終えたる養育費      牙
14    血筋守りて女流家元       水
15  植木屋が入り清しき見越し松     蘭 
16    野球少年前をうろうろ      碩
17  ランニングコースはぐれて一休み   栞
18    寺深閑とつくつくし啼く     蘭 秋
19  置き去りのビニール傘に月明り    ね 秋月
20    枯れ葉舞い込むコンビニのドア  水 秋
21  止められぬ酒と煙草は人のせい    牙
22    ネオンまたゝく我が家への道   蘭
二オ
23  ツーショット撮られぬやうに手を離し 栞
24    CM場面あはや惨事に     夏木
25  山の午後天気急変ガスが出て     蘭
26    記憶に想像交へ描く絵      〃
27  次の世は鳥となりたし風うらら    牙 春
28    余寒か悪寒か総選挙前      ね 春
29  後出しのジャンケンで負ける新入生  水 春
30    尾鰭ばかりが幾重にもつき    木
31  判官へ贔屓が高じ諸伝説       蘭
32    青菜を並べ交わす冷や酒     碩 夏
33  短夜を連句仲間と過ごさまし     ね 夏
34    夏の霜降る露地を進みて     栞 夏月
35  誰何され初めて気づく己が影     木
36    忍んでつけるペアのウォッチ   水 恋
二ウ
37  既婚者もおもひを寄せる許嫁者    蘭 恋
38    朝まで語る白き息して      ね 冬恋
39  ぬけぬけと嘘吐く遅刻常連者     水
40    小エビで釣りし鯛は大味     木
41  豊饒の海隔て無き日は何処      栞
42    雲縹渺と東する空        蘭 ひょうびょう
43  少年の自転車速くも橋渡る      水
44    うれしい時はいつも口笛     木
45  アンティークグラス並べば巴里の色  牙
46    地上を走るメトロ懐かし     栞
47  どの街も似たよなビルや店ばかり   蘭
48    一家言士の供はつらいよ     木
48    土筆たんぽぽ残る一角      ね 春
49  茣蓙敷きて花見弁当広げたる     栞 春花 両句に
50    春颯吹きひらりスカート     水 春
三オ
51  やすみなし又候恋の季節にて     蘭 恋 またぞろ
52    更衣さへ上の空なる       木 夏恋
53  ヴェランダの下より聞こゆセレナーデ 栞 夏恋
54    ロミオに飽いたジュリエットゐて ね 恋
55  日替わりといいつつ変わらぬ定食屋  水
56    午後の講義はさぼり名画座    蘭
57  懐メロも交じりて偲ぶイケブクロ   木
58    ウーパールーパー飼っていた頃  牙
59  真四角の窓に異国の月が出て     ね 秋月
60    酔うた箸先衣かつぎ逃げ     水 秋
61  秋収めご相伴にと寄るすずめ     蘭 秋
62    温習会のはねて賑はふ      木
63  雪洞のあかり妖しき抜け小路     蘭
64    足速に行くキャリア官僚     ね
三ウ
65  外交の機密聞き出す暇もなく     栞
66    憶測で書く新聞の記事      牙
67  ノーベル賞とうとう賭けのネタになり 蘭
68    はずれのボクは飴ひとつだけ   木
68    似非科学者の野望はてなし    ね
69  ママごとも戦争ごっこもオンライン  ね 両句に
70    ランドサットはすべて見通し   水
71  此は如何に着地は釈迦の掌に     木
72    悟り開ける菩提樹の下      栞 夏
73  炎天に佇んでゐる人の顔       ね 夏
74    心霊写真プレミアがつき     水
75  彷徨へるオランダ船の噂して     栞
76    隠れ家となるフィヨルドの村   牙
77  亜麻色の髪の花嫁ばらの笑み     蘭 雑花恋
78    貧しき聖夜贈りしは愛      木 冬恋
名オ
79  影ふたつ暖炉の前に重なりぬ     ね 冬
80    推理ドラマの居間の豪華さ    水
81  バリスタで束の間気分リッチにて   蘭
82    掃除に邪魔と出され図書館    〃
83  宿酔いのあるじに懐く迷い猫     碩
84    今日人類の滅亡のとき      ね
85  週末を平和に過ごす有難さ      栞
86    涙もろきは齢の所為にや     木
87  オペラ座の幕間に列の化粧室     牙
88    きものがにあふやまとなでしこ  蘭
89  春の月女子力アップのマツゲ付け   水 春月
90    後はおぼろとアヴァンチュールへ 栞 春恋
91  君の影あは雪よりもはかなくて    木 春恋
92    きぎす鳴きそむ小野の下萌    蘭 春
名ウ
93  敗戦の将にもならず会社去る     ね
94    裏目となりし損得の計      木
95  土地買つて立ち消えとなる首都移転  蘭
96    草のいきれに二千円札      牙 夏
97  夏休み子には何でもやらせよう    蘭 夏
98    日本一周マラソンの旅      ね
99  見上げれば甍の波に花がすみ     碩 春花
99  ひとひらの潜む便りに花の時     牙 春花
挙句    気配はすれど見えぬ若鮎 青村豆十郎 春 両句に
挙句    城下を後に遍路再び       栞 春 両句に

・・・経過は

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
____________________________________
初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目

写真提供はフォト蔵さん

2012年12月5日水曜日

芭蕉の仕損じ



          (『誹諧深川集』元禄六年)


#jrenga 所収:原田曲齋『貞享式海印録』

許六曰く。巻出来終りて師曰く。「此誰の字は全く前句の事也。これ仕損じ也」といへり。(『こ東問答』) 

    薄りと門の瓦に雪降て     許六 (うっすりと)
      高観音に辛崎を見る    洒堂
    今はやる単羽織を着連立ち   嵐蘭
      奉行の鑓に誰れも隠るゝ  芭蕉  

四句目の芭蕉の付句、別に問題ないんじゃないと思う人は連句は今一。アウト! 誰れは前句の人々のことで前句に縋っている。

「蕉門の付句は前句の情を引き来るを嫌ふ。ただ前句はこれいかなる場、いかなる人と、其事其位をよく見定め、前句を突き放して付くべし」と言っている張本人の失策である。

仕損じならば直し給えと弟子らは言わず、芭蕉本人も自ら直そうとしなかったらしい。悪い例も残せば後人の為になると考えたのだろうか。

2012年12月4日火曜日

蕉門の前句の意を転ずる妙法

見立・趣向・句作の定法十三条  所収:原田曲齋『七部婆心録』


俳諧の連歌において付句は、以下の三つのプロセスによって行われる。
(1)見立:前句の意を転ずる案じ方で前句をどういう場面と見立てるか、
決める。
(2)趣向:初念の見立に対し付句をいかなる場、人、体、用、情、趣意
の趣向(付けの物柄)とするか、前句に対しいかなる姿勢、重ー起
情、中ー会釈、軽ー遁句で付けるか、起情、会釈は曲節ありなしの
どちらでいくか決める。
(3)句作:見立と趣向を掛け合わせ、古語、俤取り、余情などを加味し 
て一句を仕立てる。
この三つを備えない句は大方、前句の註(説明)か一向に付かない句で
ある。

見立の五条
一、前句の上中下に言葉を添えて魂を替える法。

一、に留て留の句を見替えるには、に、ての後ろに言葉を添えること
定法なり。

一、何に対してかく言うと前句を咎める案じ方あり。

一、前句を虚(嘘)に言う言葉と見て、付句にその続きの戯言を付ける。
付句例 鼓手向くる弁慶の宮、麻刈といふ歌の集む

一、即体 其用や其情の句が並んだとき体ある物に見立てる。

趣向の五条
一、准(なぞらえ)付 人情をものに譬えた前句には其のものに対
して付ける。

一、逆付(後付) 前句より先に起こるべき事象を後から付ける。

巾に木槿を挟む琵琶打
牛の跡弔ふ草の夕暮に

一、裏付 前句の言葉の裏の意味を読み付ける。

道のべに立ち暮らしたる禰宜が麻
楽する頃と思ふ年延

一、それにつけてもの用 前句の内容であるが、それにつけてもと
案じる。

一、空撓め 前句とは何の付け筋もなくふと思い浮かんだ姿をもっ
て直感的に句を付ける。それでいながら無心所着(短歌として意
味不明)ではない。蕉門の秘法・妙法とも言われるが芭蕉自身も
直弟子にも具体的に説明し得ない絶妙の術と言う。支考は証句と
して以下を挙げたが、七部集を繙き付け筋はわからないが意味は
通じる付句を探して、自分で判断し学ぶしかないのかも知れない。

障子に影の夕日ちらつく
婿殿はどれぞと老の目を拭ひ

句作の三条
一、相係り(前句の見立に半ば係りの言葉があれば付句も前句に
半ば懸けて作る。)、係付(前句を平生ならず見立てるとき
は、見立ての中の言葉で前句にもたれるように作る。) 結
付(前句に情か用の言葉がありその意を転ずるときは、付句
は其場、其体をもって作る。)

一、不用の用 後句を付けやすくするために付句には不用な言葉を
付加する。

一、執中の法 前句の余情から中心となる一二三字の単語を連想し意
味的には直接関係のない句を付ける。

糊強き袴に秋を打うらみ
鬢の白髪を今朝見付けたり    老を連想

手紙を持ちて人の名を問ふ
本膳が出ればおのおのかしこまり   振舞を連想    

此の秋も門の板橋崩れけり
赦免にもれて独り見る月      左遷を連想

感想:
曲齋の『貞享式海印録』は、芭蕉俳諧の作法がどういうものだったか窺う
には最適な書である。芭蕉門には前句の意を転ずる妙法なるものがあるか
ら古式のような式目は不用なのだという記述が含まれている。

その妙法とは匂付け(余情付け)、執中の法、空撓め、見立て替えかと私
は見当を付けたが自信はない。評釈が嫌いできちんと読んだことがなかっ
た芭蕉七部集の評釈本『七部婆心録』の註釈の仕方を解説した中に上述の
コンパクトな記述を発見(^^)した。曲齋はこれを基に『附句見立鏡』という
書を構想していたらしい。実際に発刊したのかは今の所不明である。

曲齋が考える妙法には、私が見当を付けた四項目は含まれていたがそれば
かりではなかった。また、すべての付けは、前句の見立てなのだという考
えに立っており、連句は見立て替え(曲解)の文芸なのだという説の論拠
になり得そうである。難解で正しく咀嚼できたかは自信がない。今まで見
立、趣向、句作を一緒くたにしてきた自身の付け転じに光明となることを
祈る。

上述を踏まえて平易な短い言葉で芭蕉流の付け転じ方を縮めて言えば以下
のようになるだろうか。

【前句の言外に言ひ残したるもの・余情・曲解から見立て、趣向は遠く、
句作は近く(短歌になるように)付けるべし。】

2012年11月13日火曜日

誹風柳多留 初篇


柄井川柳の前句付け万句合より川柳と呉陵軒可有が選句し編纂、1765年刊行。

誹風柳多留初篇


さみだれのつれづれに、あそこの隅こゝの隅より、ふるとしの前
句付のすりものをさがし出し、机のうへに詠むる折ふし、書肆何
某来りて此侭に反古になさんも本意なしといへるにまかせ、一句
にて句意のわかり安きを挙げて一帖となしね。なかんづく当世誹
風の余情をむすべる秀吟等あれば、いもせ川柳樽と題す。 
  于時明和二酉仲夏        浅下の麓呉陵軒可有述

1  五番目は同じ作でも江戸産れ
2  かみなりをまねて腹掛やっとさせ
3  上がるたびいっかどしめて来る女房
4  古郷へ廻る六部は気のよわり
5  ひよひよのうちは亭主にねだりよい
6  番頭は内の羽白をしめたがり
7  鍋鋳掛すてっぺんから煙草にし
8  人をみなめくらに瞽女の行水し
9  米つきに所をきけば汗をふき  
10  すっぽんに拝まれた夜のあたたかさ
11  斎日の連れは大かた湯屋で出来
12  入髪でいけしゃあしゃあと中の町
13  百両をほどけば人を退らせる
14  じれったく師走を遊ぶ針とがめ
15  九郎介代句だらけの絵馬を上げ
16  使者はまづ馬からおりて鼻をかみ
17  梅若の地代は宵に定まらず
18  投入の干からびてゐる間の宿
19  鞠場からりっぱな形でひだるがり
20  初物が来ると持仏がちんと鳴り
21  こはそうに鯲の枡を持つ女
22  唐紙へ母の異見をたてつける
23  捨てる芸始める芸にうらやまれ
24  新発意はたれにも帯をして貰ひ
25  内にかと言へばきのふの手を合はせ
26  美しい上にも欲をたしなみて
27  四五人の親とは見えぬ舞の袖
28  天人も裸にされて地者なり
29  いつとても木遣の声は如在なし
30  身の伊達に下女が髪まで結うてやり
31  菅笠の邪魔になるまで遊び過ぎ
32  片袖を足す振袖は人のもの
33  お初にとばかり姑楯にとり
34  銅杓子貸して野呂松にして返し
35  七草をむすめは一ツ打って逃げ
36  赤とんぼ空を流るる龍田川
37  饅頭になるは作者も知らぬ智恵
38  取揚婆屏風を出ると取り巻かれ
39  呵ってもあったら禿炭を喰い
40  水茶屋へ来ては輪を吹き日をくらし
41  ふんどしに棒つきのいる佐渡の山
42  主の縁一世へらしれ相続し
43  親ゆゑに迷うては出ぬ物狂ひ
44  よい事を言へば二度寄り付かず
45  初会には道草を喰ふ上草履
46  喰ひつぶすやつに限って歯をみがき
47  子が出来て川の字形に寝る夫婦
48  取次ぎに出る顔のない煤払ひ
49  煮売屋の柱は馬に喰はれけり
50  療治場で聞けばこの頃おれに化け
51  足洗ふ湯も水になる旅戻り
52  まま事の世帯くづしが甘えて来
53  朝めしを母の後ろへ喰ひに出る
54  弁天の貝とは洒落たみやげもの
55  三神はなぶるとよみし御すがた
56  いただいて受けべき菓子を手妻にし
57  緋の衣着れば浮世が惜しくなり
58  太神楽ばかりを入れて門を閉め
59  付木突腰におどけた拍子あり
60  馬かたがゐぬと子供が芸をさせ
61  水かねで胸のくもりを磨いでおき
62  袴着にゃ鼻の下までさっぱりし
63  習ふよりすてる姿に骨を折り
64  無いやつのくせに供へをでっかくし
65  国ばなし尽きれば猫の蚤をとり
66  藪入の綿着る時の手の多さ
67  武蔵坊とかく支度に手間がとれ
68  勘当も初手は手代に送られる
69  五六寸かき立てて行く寝ずの番
70  新田を手に入れて立つ馬喰町
71  どこぞではあぶなき娘ゆふべやり
72  仕切場へ暑い寒いの御挨拶
73  紅葉見の鬼にならねば帰られず
74  お内儀の手を見覚える縫箔屋
75  泣がけも尊氏已後はもうくはず
76  しばらくの声なかりせば非業の死
77  伊勢縞のうちは閻魔を尊がり
78  役人の子はにぎにぎをよく覚え
79  女房があるで魔をさす肥立ぎは
80  鑓持は胸のあたりをさし通し
81  白魚を子にまよふ頃角田川
82  帯解は濃いおしろいの塗り初め
83  灯籠に甚だくらい言訳し
84  逆王を貰ひに出たる料理人
85  花守の生れかはりか奥家老
86  あかつきの枕に足らぬかるた箱
87  出てうせう汝元来みかん籠
88  二箇国にたまった用の渡りぞめ
89  鼻紙で手を拭く内儀酒もなり
90  病み上がりいただく事が癖になり
91  橙は年神さまの疝気所
92  合羽箱どろどろどろとかしこまり
93  定宿を名乗ってひどい場を逃れ
94  井戸替に大屋と見えて高足駄
95  立臼に天狗の家をきりたふし   
96  禅寺は彼岸の銭にふりむかず
97  たそがれに出て行く男尻知らず
98  隣から戸をたたかれる新世帯
99  うりものと書いて木馬の面へ張り
100  むかしから湯殿は智恵の出ぬ所
101  神代にもだます工面は酒が入り
102  盃にほこりのたまる不得心
103  跡月をやらねば路次もたたかれず
104  指のない尼を笑へば笑ふのみ
105  鉢巻も頭痛の時は哀れなり
106  ぼた餅の精進落はゐのこなり
107  穴ぐらで物いふような綿ぼうし
108  急度して出る八朔は寒く見え
109  傀儡師十里ほど来た立ち姿
110  鶏は何か言ひたい足づかひ
111  手拭にきんたま出来る一さかり
112  杖突の酔はれた所は盛り直し
113  婚礼を笑って延ばす使者を立て
114  すっぽんを料れば母は舞をまひ
115  椋鳥が来ては格子をあつがらせ
116  振袖は言ひそこないの蓋になり
117  せめて色なれば訴訟もしよけれど
118  葭町へ羽織を着ては派が利かず
119  壁のすさむしりながらの実ばなし
120  国の母生れた文を抱きあるき
121  塩引の切り残されて長閑なり
122  江戸者でなけりゃお玉が痛がらず
123  お袋をおどす道具は遠い国
124  菅笠で犬にも旅の暇乞ひ
125  飯焚きに婆アを置いて鼻あかせ
126  後ろから追はれるやうな榊かき
127  上下で帰る大工は取り巻かれ
128  前あれで手をふく下女の取り廻し
129  跡乗の馬は尾ばかり振っている
130  疝気をも風にしておく女形
131  塗桶はいっち化けよい姿なり
132  寒念仏みりりみりりと歩くなり
133  衣類までまめでゐるかと母の文
134  向うから硯を遣ふ掛人  
135  迷ひ子のおのが太鼓で尋ねられ
136  脈所を見せて立板申すやう
137  上下を着て文盲な酒をのみ
138  半兵衛雛の頃から心がけ
139  喰積がこしゃくに出来て壱分めき
140  捨子ぢやと坊主禿をなで廻し
141  藪入をなま物知りにしてかへし
142  流星のうちに座頭はめしにする
143  禿よくあぶない事を言はぬなり  
144  客分といはるる女立のまま
145  正直にすりゃ橙は乳母へ行き
146  護国寺を素通りにする風車
147  雪見とはあまり利口の沙汰でなし
148  寒念仏千住の文をことづかる
149  松原の茶屋はいぶかる景になり
150  ぼた餅を気の毒さうに替えて喰ひ
151  孕ませた詮議はこれで山をとめ
152  落ちて行く二人が二人帯がなし
153  親分と見えてへっつい惣金具
154  日傘さして夫の内へ行き
155  縫紋を乳をのみのみむしるなり  
156  藪入にうすく一きれ振舞はれ
157  根ぞろへの横にねじれて口をきき
158  庵の戸へ尋ねましたと書いて置き
159  隅ッこへ来ては禿の腹を立て  
160  小座頭の三味線ぐるみ邪魔がられ
161  舌打ちで振舞水の礼はずみ
162  義貞の勢はあさりをふみつぶし
163  関寺で勅使を見ると犬がほえ
164  乳貰ひの袖につっぱる鰹節
165  これ小判たった一晩居てくれろ  
166  琴やめて薪の大くべ引き給ふ
167  状箱が来ればよばれる太夫坊
168  飯焚に百ほど頼む豆腐の湯
169  迷惑な顔は祭りで牛ばかり
170  桶伏をはじいて通る日和下駄
171  親類が来ると赤子の蓋を取り
172  江の島を見て来たむすめ自慢をし  
173  明星が茶屋を限りの柄ぶくろ
174  御自分も拙者も逃げた人数なり
175  還俗をしても半分殊勝なり
176  細見の鬼門へなほる遣手の名
177  袖口を二ツならして娵をよび
178  幽霊になってもやはり鵜を遣ひ
179  羽織着てゐるお内儀にみな勝たれ
180  権柄に投げ出して行く質の足し
181  おびんづる地蔵の短気笑ってゐ
182  弐三歩が買ふとうるさい程はなし
183  お袋は不器な姿に雁を書き
184  あんまりな事に一人でふせて見る
185  御一門見ぬいたやうな銭遣い
186  このしろは初午ぎりの台に乗り
187  祭り前洗ひ粉持って連れて行き
188  隣へも梯子の礼にあやめ葺き
189  天人へ舞とはかたいゆすりやう
190  御后のわる尻をいふ陰陽師
191  歩と香車座頭の方は付木でし
192  御勝手はみな渇命におよんでゐ
193  黒文字をかぎかぎ禿持って来る
194  源左衛門鎧を着ると犬がほえ
195  仲人へ四五日のばす低い声
196  傾城も淋しくなると名を替へる
197  深川の土弓射習ふ草履取  
198  黒木売り大事に跡をふりかへり
199  駕籠賃をやって女房はつんとする
200  煤掃きの下知に田中の局が出
201  棟上を名代の乳母の尻へ投げ
202  柏餅妹の乳母は手伝はず
203  箱王が料の袂に蝉の声
204  横町に一ツ宛ある芝の海  
205  茸狩は紅葉狩より世帯じみ
206  蚊を焼いた跡を女房にいやがらせ
207  長屋中手ごみにはかる田舎芋
208  岡場所はくらはせるのが暇乞ひ
209  花娵のあました平へ札をいれ
210  太神楽ぐるりはみんな油虫
211  冠を踏み違へたる見倒し屋
212  壱人者飲まぬかはりに弐朱がつき
213  降参が済むと一度にひだるがり
214  おさらばを障子の内でたんと言ひ
215  秋がわき先づ七夕にかわきそめ
216  中川は同じあいさつして通し
217  踊り子のかくし芸までして帰り
218  忍び駒なんぞいひたい姿なり
219  四日から年玉ぐるみ丸くなり
220  小力があるで若後家じゃれになり
221  日本の狸は死んで風起し
222  芝居見の証拠は女中先に立ち
223  銭なしのくせにいつでも采をふり
224  新世帯何をやっても嬉しがり
225  初雪に雀罠とは恥知らず
226  雨宿り額の文字をよく覚え
227  荒打ちを遠くへ寄って目出たがり
228  江戸へ出る日には手作の髱を出し
229  斎日に危なくほめる海おもて
230  屋敷替へ白い狐の言ひおくり
231  蟻ほどに千畳敷の畳さし
232  見知りよい頭は御所の五郎丸
233  腰帯を締めると腰は生きて来る
234  糠袋持って夜伽の礼に寄り
235  四辻へ来ると追人の気がふえる
236  降参の顔をなぐさむ白拍子
237  山の芋うなぎに化ける法事をし
238  五ツ月を越すと近所へ義理を欠き
239  白いのにその後あはぬ寒念仏
240  返事書く筆の軸にて王を逃げ
241  嬉しい日母はたすきでかしこまり  
242  袂から口ばしを出す払ひもの
243  医者の門ほとほと打つはただの用
244  稲妻の崩れやうにも出来不出来  
245  張物を上手にくぐる高足駄
246  夜が明けて狩場狩場へ外科を呼び
247  恐悦を水と樒で申し上げ
248  こそぐって早く受けとる遠眼鏡
249  大黒の好きは大根のぶん廻し
250  江の島で一日雇ふ大職冠
251  上輿の当てにして置く地主の子
252  よしなあの低いは少し出来かかり
253  関取のうしろに暗い按摩取
254  大門をそっと覗いて娑婆を見る
255  煤掃きに装束過ぎて笑はれる  
256  両替屋のっぴきのない音をさせ
257  寝ごかしはどちらの恥と思し召す
258  竃祓ひたいで鈴をふり納め
259  馬島での近づきならばうろ覚え
260  乳の黒み夫に見せて旅立たせ
261  盗人にあへば隣でかなるがり
262  歌一首あるで噺にけつまづき
263  駿河町畳のうへの人通り
264  八幡は堪忍ならぬ時の神
265  岡場所は遣手と女房どんぐるみ
266  手拭ではたいて女衒腰をかけ
267  裏門と家中の乳母は首ツ引き
268  聞いてくりゃ命があるといふばかり  
269  清盛の医者は裸で脈をとり
270  才蔵は呑みかねまじき面っつき
271  金の番とろとろとしてうなされる  
272  お歯黒を俄につけて科が知れ
273  よみの場へ筆添へて出す奉加帳
274  小間物屋箱と一所に年が寄り
275  太神楽赤い姿に見つくされ
276  鼻紙を口に預けて手を洗ひ
277  どっち風少しはすねた道具なり
278  総領は尺八をふく面に出来
279  翌日は店を追はるる年忘れ
280  今暮れる日を傾城におちつかれ
281  梓弓下女の泪は土間へ落ち
282  幇問宗旨ばかりはまけてゐず
283  若後家の剃りたいなどとむごがらせ
284  能笛は忘れたやうな勤めかた
285  一門はどぶりどぶりと奏聞し
286  よい小紋着て紺屋までひきづられ
287  病みぬいたやうに覚える四十三
288  年男うまい咄を淋しがり
289  道問へば一度にうごく田植笠
290  羽子板で茶を出しながら逃げ支度
291  逆落しまでは判官ぬけ目なし
292  髪ゆひも百に三ツは骨を折り
293  掛人寝言にいふが本の事
294  ひそひそと玉藻の前を不審がり
295  母の気に入る友だちは小紋を着
296  大勢の火鉢をくぐる禿の手
297  御局はそっとそっとの十三日
298  知盛は喧嘩過ぎての棒をふり
299  四郎兵衛を恐ろしがるが恐ろしい
300  傍輩を寝静まらせて絎けてやり  
301  普賢ともならう四五日前に買ひ
302  乳母に出て少し夫を歪んで見
303  ひん抜いた大根で道を教へられ  
304  花娵の不粋でないの憎らしさ
305  妙薬を開ければ中は小判なり
306  留守の事唖は枕を二ツ出し
307  よい娘年貢すまして旅へ立ち
308  薬の苦せない親仁は喧嘩の苦
309  屋形から猪牙へ恋路のはしけもの
310  岩茸はぞんざいに喰ふものでなし
311  紫屋これも同じく嘘っつき
312  春まではふみこんで置く女ぶり
313  吉治が荷おろせば馬は嗅いでみる
314  万歳の口ほど鼓はたらかず
315  ごとくなる刀を抜いてせめる恋  
316  小便に起きて夜鍋をねめ廻し
317  姑と違ひ舅のいぢりやう  
318  相惚れは顔へ格子の跡が付き
319  辻地蔵山師仲間へ抱きこまれ
320  目合見てそっといふほど高く請け
321  供船へお玉の類はえり出され
322  恥かしさ知って女の苦の初め  
323  男ぢゃといはれた疵が雪を知り
324  川止めの間太夫も麦をつき
325  清水は費えな銭に譬へられ
326  お歯黒を醤油のやうにあてがはれ
327  木戸木戸で角がもがれて行く屋台
328  新造に砂の降ったる物語
329  角兵衛獅子笛吹ばかり人らしい  
330  凱陣の日には生酔五百余騎
331  擂鉢を押へる者が五六人
332  引っ張った茶台は客に持たせけり
333  吉日がここにも居るとこそぐられ
334  寝たふりで一度は埒を明けてやり
335  借りのある家へ桃灯紋尽し
336  霊棚の牛ははたけの鼻まがり
337  人参の親の秤の欲がはね
338  喰ふほどは数えて天狗おっぱなし
339  山寺は祖師に頭巾を脱ぐばかり
340  関取の乳のあたりに人だかり  
341  前帯で来ては朝から敵になり
342  紙雛はころぶ時にも夫婦連れ  
343  化かされた頭で直に奉加帳
344  大門を出る病人は百一ツ  
345  手の甲へ餅をうけ取る煤払ひ
346  新見世といへばわづかな欲を買ひ
347  樽買に無駄足させぬやうに明け
348  銅仏は拝んだあとで叩かれる  
349  立臼に芽の出たやうな松飾り
350  昼過の娘は琴の弟子も取り
351  髪置に乳母も強気な髱を出し
352  棟上の餅に汚れぬ育てよう
353  藪入を霞に見そめ霧に出来
354  持ちなさい女は後に老けるもの
355  昆布巻を喰はせておいて伝授をし
356  米刺は舟宿にでも置けばよい
357  堪忍のいっちしまひに肌を入れ
358  初午は世帯の鍵の下げ初め
359  包丁を淋しく遣ふ薬喰ひ
360  言ひなづけ互い違ひに風を引き  
361  珍しい神の名を売る宮雀
362  御亭主の留守で鰹を手負にし  
363  料理人客になる日は口が過ぎ
364  請状が済むと買ひたいものばかり
365  荒打ちに左官ばかりは本の顔  
366  掛暇は暇もくれず目もかけず
367  大屋をば尻にはさみし論語読み
368  大名は一年置に角をもぎ
369  別当は馬や狐で茶をわかし
370  生り初めの柿は木にあるうち配り
371  藪入の二日は顔を余所に置き
372  御年貢を大部屋へ来てなし崩し
373  歌かるたにも美しい意地があり  
374  匙で盛るものとは見えぬ薬種船
375  初鰹家内残らず見たばかり
376  弁天を除けると跡はかたはなり
377  大は小兼ねると笑ふ長局
378  神奈川の文は鰹の片便り
379  枕絵を持って炬燵を追ひ出され
380  母の手を握って炬燵しまはれる  
381  祐経は椿の花のさかりなり
382  岡場所で禿といへば逃げて行き
383  雀形たたいて雪の注進し
384  日本勢一人は伽羅の目利もし
385  脇差をもどせば茶屋は彼のを出し
386  寒念仏鬼で目を突く切回向
387  大つづみ茶食の胴をぶっ潰し
388  町内の仏とらへて猿田彦
389  はねむしる鴨に手の込む長局  
390  つまむ程道陸神に箔を置き
391  お歯黒をつけつけ禿にらみつけ
392  今以て根津の焼物すめかねる
393  四郎兵衛もひやうひゃくまじり暇乞い
394  なんの手か知れぬ夜更の硯蓋
395  佐渡の山検使の前でぶらつかせ
396  紙花もしばしのうちの金まはし
397  喜の字屋は梯子の口で人ばらひ
398  法の声請状までに行きとどき
399  黒礼の札には馬鹿な顔で来る
400  藪入が来て母親は遣手めき  
401  家持ちの次に並ぶが論語読み  
402  霜月の朔日丸は茶屋でのみ
403  新造のやっかいにする鼠の子
404  桟敷から人をきたないものに見る
405  藪入のうち母親は盆で喰ひ
406  厄払ひ出しなに壱ツやって見る
407  丸薬を貰ふ座頭はちぢこまり
408  霍乱もどうか祭りの罰あたり
409  伊豆ぶしも八代まではだしがきき
410  半分は仕着せで拝む閻魔堂
411  盆山は欠落らしい人ばかり
412  江の島へ硫黄の匂ふはけついで
413  桟敷から出ると男を先へたて  
414  人の物ただ遣るにさえ上手下手  
415  下駄さげて通る大屋の枕元
416  その手代その下女昼は物言はず  
417  竃標のうちは飯焚かしこまり
418  藪入の出がけに物をかくされる
419  死に切って嬉しさうなる顔二ツ  
420  土こねは手水を遣ひ幣を立て  
421  三囲のあたりからもうぶちのめし
422  大磯は欠落するにわるい所
423  田楽を面白く喰ふ座頭の坊  
424  二階から落ちた最後の賑やかさ  
425  百合若の弓はつぶしに踏んで買ひ
426  辻斬を見ておはします地蔵尊  
427  初旅へ晩はこれぢゃと二本出し
428  雪の夜は糊で付けたる顔二ツ  
429  商売も国と江戸とは雪と炭
430  地紙売り目につくまでは指をなめ
431  そろばんを控へたやうな団子茶屋
432  そこ掻いてとはいやらしい夫婦仲
433  下戸の礼者に消炭をぶんまける
434  樽拾ひ目合を見ては凧を上げ
435  あの中で意地のわるいが遣手の子
436  御伝馬で行けばやたらに腹を立て
437  生酔の琴をけなしたとうとう寝  
438  ぶちまけた跡は駕籠舁湯気が立ち
439  中宿で先ず初手からの封を切り
440  四里四方見て来たやうな新茶売り
441  労咳に母はおどけて叱られる  
442  ちっぽけな桶で鋳掛は手を洗ひ
443  縫物を少しよせるも礼儀なり  
444  樽拾ひとある小蔭ではごをしょい
445  双盤のひしげた所で御十念
446  草市はひだるい腹の人だかり
447  浅草の鏡に千の姿あり
448  飼鶴は袴着てゐる人へ行き
449  約束をちがえぬ紺屋哀れなり
450  和藤内一家の義理はかきどほし
451  日の暮れに高輪の戸はをしく立て
452  大滝は一言もないところなり
453  そこら中蓋を明け明け亭主ぶり
454  行燈で喰ふは大工も仕舞の日
455  京町へ来る鬼灯は選りのこり
456  張物に娵は結ばぬほほかぶり
457  昼買った蛍を隅へ持って行き
458  あいあいといふたび締める抱へ帯
459  小枕のしまり加減に目をふさぎ
460  仲人を地者とおもや太鼓持  
461  半人で仕舞ふ大工に菰をやり
462  車引き女を見るといきみ出し
463  扇箱鳴らして見ては熨斗を付け
464  いろは茶屋客をねだって富を付け
465  薮入の供へは母が飲んでさし
466  手代ども根太盛りであんじられ
467  めし時といへば塗師屋はにょっと出る
468  親類の持ちあまされは麦を喰ひ
469  夜蕎麦切りふるへた声の人だかり
470  悪筆と仕舞の方へ痴話を書き
471  飛鳥山毛虫に成って見限られ
472  片棒をかつぐゆふべの鰒仲間
473  初鰹薬のやうにもりさばき
474  連れに礼言ひ言ひ生な封を切り
475  口近い化物で先づ一ツ消し
476  線香が消えてしまえば壱人酒
477  付き合ひで行く深川は箸休め
478  のびの手でつかんではなす削掛
479  入王と聞いて火を引く料理人
480  通り者羽織はふるが癖になり
481  油揚を提げたばかりで夜を明かし
482  塗桶へ書いてくどけば指で消し
483  座頭の坊急くと浅黄に目をひらき
484  医心のあるで女房事にせず  
485  桶伏のあるで家内が洗足し
486  金谷から臼ひき唄を覚えて来
487  夜蕎麦切り立ち聞きをして三声よび  
488  草履取名残の裏と聞きかじり
489  両介は第一飯がうまく喰え
490  仲条は手ばかり出して水を打ち
491  壱軒の口上で済む配り餅
492  景清はお尋ね者によい男
493  綿摘はみかんの筋も肩へかけ
494  生酔はおどかすやうなおくびをし
495  襟元のうっとしさうな田舎馬  
496  褌をするが湯治の暇乞い
497  真黒な小刀遣ふ野老売り
498  蝋燭を消すに男の息を借り
499  太鼓の値出来てから出す火打箱
500  船頭の女房よい日に洗濯し
501  猿田彦坂際へ来て嗅ぎ廻し
502  追ひ出されましたと母へそっと言ひ  
503  夕立の戸はいろいろに立ててみる
504  金持ちのくせに小粒に事を欠き
505  鰒買って余所のながしへ持って行き
506  女房は蚊屋を限りの殺生し
507  針仕事手の軽くなるほととぎす
508  物申といはるるまでに成りおほせ
509  樽拾ひ危うい恋の邪魔をする
510  御悋気のもう一足で玄関まで
511  若後家に随喜の泪こぼさせる
512  きめ所をきめた弐百はしゃちこばり
513  言ひ出して大事の娘寄りつかず
514  家老とは火を磨る顔の美しさ
515  見世さきへきっかけのある唄が来る
516  薮入はたった三日が口につき
517  かみさまと取揚婆が言ひはじめ
518  奥さまの加勢立臼鍋の蓋
519  腰縄の気で母親は苧を預け
520  不甲斐ない魂二ツ番がつき
521  月ふけて下戸の哀れはひだるがり
522  笑ふにも座頭の妻は向きを見て  
523  伸びをする手に腰元はついと逃げ
524  囲はれの何を聞くやら陰陽師  
525  指切るも実は苦肉のはかりごと
526  十分一取るにおろかな舌はなし
527  ぶらつくを棹で招いた渡し守
528  棒の中めんぼくもなく酔いは醒め
529  手付にてもう神木と敬はれ
530  上下は我儘に着るものでなし
531  勘当を許すと菜を喰ひたがり
532  奥家老顔をしかめるものを踏み
533  寝てゐても団扇のうごくおやごころ  
534  煤掃きの孔明は子を抱いている
535  松の内七ツの星をよく覚え
536  見附から山葵おろしが出て呵り
537  大磯の落馬はすぐに煙草にし
538  唐人を入り込にせぬ地獄の絵
539  日和見の味噌気で傘を下げて出る
540  丸山でかかとの無いもまれに産み
541  松右衛門二言といはず酒をうけ
542  抱いた子に叩かせてみる惚れた人  
543  これきりの小袖着て寝る太鼓持
544  網の目を潜ってあるく娵の礼
545  籤取りで遣手が灸を据ゑてやり
546  剃った夜は昨夜の枕きたながり  
547  行燈は百と百との結び玉
548  忙しくなると鹿島は襟へさし
549  いっちよく咲いた所へ幕を打ち
550  病み上がり母を遣ふが癖になり  
551  五六町銭屋を叩く戻り駕籠
552  これからは行くばかりぢゃと櫛払ひ
553  三人で三分なくなる智恵を出し
554  逃げたときゃ男の中で夜を明かし
555  腰元は寝に行く前に茶を運び  
556  三囲を溜め小便の揚場にし
557  猿廻し内へ戻って顎を出し  
558  雪隠の屋根は大かた屁の字形
559  除けの歌大屋の内儀持ち歩行き
560  子を抱けば男のものが言ひ安し  
561  草津の湯名聞らしい人はなし
562  笑ひ止むまで灸点を待っている
563  桜花兄は莟のあるを取り
564  江の島で鎌倉武士は片旅籠
565  首取ったその日を急度精進し
566  鎌足へ真裸での暇乞ひ
567  若後家の不承不承に子に迷ひ  
568  羽子板を預けて帯を締めなほし
569  御身様の聞きあきをする祭り前
570  外料を祭りの形で呼びに行き
571  尻持に和尚を持って地紙売り
572  瘡毒に衣を着せる長屋中
573  隙入りと書いて来てのは女房の手
574  男ならすぐに汲うに水鏡
575  犬蓼の心よく這ふ無常門
576  真先でさぐればぐらゐは化かされる
577  長噺とんぼの止まる鑓の先
578  糠味噌にもしかも瓜の百一ツ
579  舟嫌ひ壱人は川のへりを行き
580  太夫職百で四文もくらからず
581  佐野の馬さて首を垂れ屁をすかし
582  浪壱ツあだには打たぬ玉津島
583  狛犬の顔を見合はぬ十五日
584  弁天の前では波も手をあはせ
585  御婚礼蛙の声をみやげにし
586  遣唐使吹き出しさうな勅をうけ
587  舟宿へ内に律儀を脱いで行き
588  蔵の戸が鳴ると盃大きくし
589  家内多留ちひさい恋は蹴散らかし
590  蠅打でかき寄せて取る関手形
591  やはやはと重みのかかる芥川
592  風鈴の忙しないのを乳母と知り
593  鳥刺がかつぐと七ツ過になり
594  あいさつを内儀は櫛で二ツかき
595  女房は酔はせた人をにちに行き
596  傘借りに沙汰の限りの人が来る
597  本降りになって出て行く雨宿り  
598  張肘をしてもやうやうよい女郎衆
599  切落とし気の毒さうな乳を飲ませ  
600  地紙売り母に逢ふのも垣根ごし  
601  舞留を常にくゆらす草履取
602  品川は木綿の外は箱へ入れ
603  姑のつむじは尼になつて知れ
604  欠落もきようにすればをしがられ
605  懐中の杓子を出していたゞかせ
606  見に行つてしめつぽく出る払蔵
607  すゝはきの顔を洗へば知つた人
608  火もらひのふきふき人に突当り
609  旅戻り子をさし上げて隣まで
610  佐野の馬かんろのやうな豆を喰ひ
611  なぎの葉を芝居の留守に掃出され
612  仕事師の飯は小言を菜にして
613  さいそくも質屋のするはゆるがしい
614  猿田彦いつぱし神の気であるき
615  御詠歌に預りものゝ娘あり
616  松が岡ちつとはじくが納所分
617  れんこんはこゝらを折れと生れ付
618  初見世はたんこぶ迄をうたがはれ
619  母おやはもつたいないがだましよい
620  けんぺきを打ち打ち戻る蔵のかぎ
621  生物をかゝへた婆ア不人相
622  湯屋へ来て念頃ぶりは側へぬぎ
623  餅はつく是からうそをつく斗り
624  色男四角な智惠で境へよび
625  腹立てばやぼらしく成る十三日
626  押入の戸やきぬ張で人をよび
627  出女の鏡へうつる馬のつら
628  針ほどを棒とは母の二ばんばえ
629  あたらしくしてもやつぱり親仁橋
630  戻る猪牙だるまもあればねじやか有り
631  江戸を出て姿の出来るぬけ参り
632  花なればこそ稀人の坊主持
633  色事に紺屋のむすめうそをつき
634  信濃へは地ひゞきがして日が当り
635  小腕でも長刀斗り二本しめ
636  ぬけた歯に禿のこぞる片ッすみ
637  貰ひ乳にかはるきぬたのちから過ぎ
638  碁敵は憎さもにくしなつかしさ
639  若後家のこすいでみんな貸しなくし
640  黒犬を挑灯にする雪のみち
641  一門のきなかと頼む能登守
642  迷ひ子が泣けば鉄棒ふつて見せ
643  産籠の内でていしゆをはゞに呼び
644  あだついた客ははしごでどうづかれ
645  さるだ彦角をはやして吸付ける
646  撥貸して見に行けば咽なでて居る
647  汐くみに所望の浪が打つて来る
648  年禮にもゝ引のいる縁を組み
649  うつちやつて看板にする紫屋
650  だきもりのわりなき無心鮒一つ
651  車座に紺の手の出る六夜待
652  桜見に夫は二丁跡から出
653  病み上り日本の人になぐさまれ
654  十露盤へしたむ小原のせはしなさ
655  燈籠の人を禿はむぐつて出
656  子を持つてから三日をやつとぬり
657  居酒屋に馬と車の払ひもの
658  寒念仏ころぶを見れば女成
659  母親の或はおどし手をあはせ
660  鼻声で湯治の供を願ひ出し
661  出格子へ子をさし上げて名をよばせ
662  女房を雪にうづめて炭をうり
663  先生と呼んで灰吹き捨てさせる
664  はやり風十七屋からひきはじめ
665  舞鶴に水をもらせる殿づくり
666  保昌は九條あたりへ迎ひに出
667  髭ぬきの鏡に娘気をへらし
668  雪打をおもの師斗りひたいで見
669  売上は稲こきの歯にくはへさせ
670  此石がそだかといへば最う真似る
671  よし町で客札貰ふ後家の供
672  子の内の支離に譲る水車
673  丸顔をみそにして居るかゐゐ澤
674  指を切るからは九品の浄土まで
675  花婿の馳走にやぶる村法度
676  通盛は寝まきのうへへ鎧を着
677  寝て居るは第一番の薬取
678  国者に屋根ををしへる中たんぼ
679  玄関番くさくさとする下駄の音
680  岡場所は湯の花くさい禿が出
681  粉のふいた子を抱いて出る夕涼
682  新発意の寄ると輪袈裟で首ッ引
683  辻番へもりが差図のかしはもち
684  祝ひ日に疵のついたるねはん像
685  持参金疱瘡よけの守りにし
686  坪皿へ紙とはよほど学が長け
687  根津の客家のひづみに口が過ぎ
688  見のがしにすれば遣手も損はなし
689  狩人の子はそれぞれに雀罠
690  山門を下から拝む気の古さ
691  初がつをふん込みの衆天窓わり
692  引越の跡から娘猫を抱き
693  蝋燭の灯ですひ付けて足袋をぬぎ
694  ちつとづつ能手へ渡る御菜が子
695  新そばに小判を崩す一さかり
696  はごの子の命をすくふ左利き
697  女房と相談をして義理をかき
698  だんぎ僧坐ると顔を十しかめ
699  傾城はとッぱづしても恩にかけ
700  ふし見世は昼食の時尻をむけ
701  居酒屋で念頃ぶりは立つてのみ
702  薬箱初にもたせてふりかへり
703  はたけからせんそく程の日をあまし
704  りちぎものまじりまじりと子が出来る
705  しかられた禿たんすへ寄りかゝり
706  針妙の坐つた形に灯がとぼり
707  百姓は金でせかせるものでなし
708  色男はした斗り産をさせ
709  神楽堂逃げたあしたは母が出る
710  ごぜ斗り一艘につむ渡し舟
711  薮入の何にすねたか六あみだ
712  関守の聲を越えるとまねて行き
713  墓桶を下げて見とれるかくし町
714  腰帯は見越しの松に逃げのこり
715  病犬をちつと追つてはたんと逃げ
716  事納め気をつけられるあら世帯
717  祭から戻ると連れた子をくばり
718  まをとこを見出して恥を大きくし
719  団扇ではにくらしい程たゝかれず
720  髪結が替つてかはるあたま形
721  大磯にきゆうせん筋の地蔵あり
722  ひな棚の樋合ふさぐ楊枝さし
723  寒念仏ざらの手からも心ざし
724  居酒屋を止めた仔細は革羽織
725  検校の供は旦那が片荷づり
726  よめの部屋這入ると漆くさい也
727  丸山へはまつて髭で蠅を追ひ
728  二三間飛げたの有るかざり柿
729  折ふしは小粒もあたる遣手の歯
730  方丈の手から一歩がはがして出
731  小謡で来る浪人は元手なし
732  一網に打たれた禿蚊にくはれ
733  若殿がめせばりゝしい紺の足袋
734  神馬牽市をつッつきつんまはし
735  外科殿の豚は死に身で飼はれて居
736  吉原の鰐が見入れて紙が散り
737  前髪へ白髪の交るうたひ講
738  血の道もてんねき見える長局
739  一さかり身になる顔へ遠ざかり
740  五分々々にして店だてが二人出来
741  留守たのむ人へ枕と太平記
742  若たうに役者の墓をさがさせる
743  綿帽子風をおさへて長ばなし
744  身揚りが来て墨壺をこぐらかし
745  座頭の坊おかしな金のかくし所
746  入れ智恵でていしゆはやぼな腹を立て
747  鏡とぎぬすんだ女郎見出して来
748  歌がるた手ひどく乳母はいじかられ
749  船の子へ蟹なげてやる蜆とり
750  袂からけふは是ぢやと数珠を出し
751  いやうじんのうそを禿が引いて来る
752  寝た形で居るはきれいなりん気也
753  姑の屁をひつたので気がほどけ
754  生娘と見えて薬師を朝にする
755  勘当の訴訟のたしに髭がなり
756  一人者内へ帰るとうなり出し

誹風柳多留初篇終