2010年9月15日水曜日

一茶の連句 六

   夕暮や蚊が啼出してうつくしき 一茶  夏
    すゞしいものは赤いてうちん 一瓢  夏
   露しぐれはら/╲松も宝にて   茶  秋
    筆一本に秋は来にけり     瓢  秋
   月かげの翌日は湖水のなきやうに 茶  秋月
    蒲団の下へ草鞋かいこむ    瓢  冬
ウ  西念は願の通りなられたり    茶
    雨の相手にかきたてる灯か   瓢
   桐のはなしのび車を筋違せ    茶  夏恋
    絵かきの袖はひくによごるゝ  瓢  恋
   蕎麦切の寝覚の里に年寄て    茶  秋
    丸くなくとも八月の月     瓢  秋月
   召給へ蛼轡きりぎりす      茶  秋
    しびれさましに河岸へふと出る 瓢
   肥後米の買そこなひを笑はれて  茶
    人にかくして笠に字をかく   瓢
   おほとけの花ことごとく咲にけり 茶  春花
    蒙古追討このかたの東風    瓢  春
ナ  蛤のもれば崩るゝ大座敷     瓢  春
    よい夢見する薬くれたり    茶
   ひとりでも馴れば旅は歩行るゝ  瓢
    あらことごとしつごもりの雪  茶  冬
   膳棚は鼠のものかとばかりに   瓢
    二人がふたり京ぎらひ也    茶
   碁にまけて詠むる空も青くこそ  瓢
    野なら山ならみなころもがへ  茶
   押出す七里の船に素湯焚て    瓢
    南無観世音ありあけの月    茶  秋月
   白露の足はいづれへさし入む   瓢  秋
    伐ことなかれ窓の葛華     茶  秋
ナウ 宗旦が末の弟子とも成たれば   瓢
    深山しぐれのうれぬ日もなし  茶
   をしまれて死るは人のまうけ物  瓢
    そのきさらぎのみごとなる空  茶  春
   うめぼしの核をはうるも花ごゝろ 瓢  春花
    文化八年日暮里の春      茶  春
  
引用:『一茶の連句』高橋順子

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