冬 初雪や畳の垢の目にかゝる 春耕
冬 一市過てむら千鳥鳴 一茶
春 舞々が迹のまひから春立て 同
春 倒れし梅を人にみらるゝ 成布
春月 むもれ水おぼろ月夜となるままに 春
春 笠の祝ひの餅やつくらん 茶
ウ 魚買に越の女の馬引て 布
赤い御門の昔恋しき 春
夏 蚊やり火に草をかぶせてしのぶ也 茶
夏 ばらばら雨にひらく夕顔 春
鶏の嘴より起る小いさかひ 茶
けふはから手でもどる乞食 布
秋月 島舟にきよろりと月のさしかゝり 春
秋 庭一ぱいに木実ひろげる 茶
秋 吹風にこゝろ冷つく遠ぎぬた 布
三かさの山のうつくしき形り 春
春花 はつ花のちる日/╲を侘ならひ 茶
春 蝶もとべよと芝に眠れる 布
ナオ春 雲雀鳴名古屋へ駕の値が成て 茶
幕のうちなる声のやさしき 布
朝々の膳に涙のかゝる哉 茶
冬 丗日神楽に交る木がらし 布
一里は貢の菰の荷拵ひ 茶
長と呼れて酒をたふるゝ 布
夏 涼しさは菊も見事に咲にけり 茶
榎の虻のつかむ程なく 布
親もたぬ児のづんづと伸過て 茶
後の咄に豆煎を出す 布
秋月 少づゝさむく成たる宵の月 茶
秋 たゞ四五人の踊也けり 布
ナウ秋 大葡萄ぶどうの番の念仏して 知一
駿河だよりにかへすかな槌 茶
夕鐘の片々暮て水明り 同
薮のあちらに家鴨おひ込 布
春花 塩からき団子の砂も花の山 一
春 三月七日陽炎の立 茶
引用:『一茶の連句』高橋順子
『連句のたのしみ』の著者。一茶が一座した250巻の連句のうち6巻を評釈する。底本は『一茶全集 第五巻』信濃毎日新聞社。ちなみに芭蕉が生涯で一座した連句は340巻、蕪村112巻。
0 件のコメント:
コメントを投稿