2010年9月14日火曜日

一茶の連句 四

   蛙なくそば迄あさる雀かな   成美  春
    春めくものに門で薪をわる  一茶  春
   旅人の小雨にかすむ顔見へて   美  春
    かさごの安き浦のおもむき   茶
   階子貸す騒ぎも過て小夜月    美  秋月
    木履をはけばきりぎりす鳴   茶  秋
ウ  清澄の堂の油の秋も尽      美  秋
    肱一尺の総や染らん      茶
   もどりには首に引まく小鳥罠   美
    行灯めぐりて春を待つとか   茶  冬
   粕汁にむせかへる程泣出して   美  冬
    うそつかぬ木を立しあさぢふ  茶
   する事の何にもなさに百合の咲  美  夏
    けたゝましさよ入梅の夕月   茶  夏月
   筆とりの大津の長に名を問れ   美
    鈴ふらぬ日ぞ嬉しかりける   茶
   死ぬ事のなくばなをさら春の花  美  春花
    わり竹しめす水のやまぶき   茶  春
二  菅笠をきればすぐさま東風の吹  ゝ  春
    三輪の餅屋に見しられにけり  美
   檜さす弥勒祭の鐘なりて     茶
    ぬれて菖蒲を人跡にふく    美  夏
   二の宮の御意そむかねど先涙   茶
    射散らす鏑矢拾ひ人もなし   美
   高砂は榎の声もなつかしく    茶
    寺にも寝たる細きあきなひ   美
   名月の一年ましに寒うなり    茶  秋月
    松葉にまじるはらゝごの塩   美  秋
   萩の露目へさし消やすおもしろさ 茶  秋
    鹿島の舟にかるたうつらん   美    
ナ  方々にまな板たゝくむ月とて   茶  春
    淡雪そふる紙子浪人      美  春
   五六本寝て見る花の目利せん   茶  春花
    鋸借に扉たゝくか       美
   初霜の瓶の中迄夜は明て     茶  冬
    もろこし舟に身をたとへけり  美
   
引用:『一茶の連句』高橋順子

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