2010年9月14日火曜日

一茶の連句 五

   蝿打てけふも聞けり山の鐘   一茶  夏
    松葉散りうく水のうれしき  乙因  夏
   麻畠ちいさき人の見え初て   成美  夏
    薄きいなづまおちつきもせず 浙江  秋
   乗ものゝ戸をなくしたる月の夜に 因  秋月
    雁鳴門や餅を搗らむ      茶  秋
ウ  風の吹小塩の宿に朝寝せし    江
    古もの買に顔を見しられ    美
   馬の背に十月桜ゆひ付て     茶  冬
    とび/╲濡るゝ枯原の雨    因  冬
   つれづれをおもしろがりて人に恋 美  恋
    軒の瓢は夢にからつく     江  秋
   月にさへ隠す刀を抜て見て    因  秋月
    吉次も参れ秋の志賀山     茶  秋
   竹九本其まゝほしき壁隣     江  
    冷ためしにも花の香ぞする   美  春花
   君が代は奈良鴬も声上て     茶  春
    酔万歳をおくる川風      因  春
二  春霞留守じやと書て張られたり  美  春
    山おかしさに又笛を吹     茶
   搗栗をしろき扇にならべ置    江
    光広どのへ念珠を参らす    美
   茶の花も鶴も久しき在所也    茶
    銭がふる程雪のつのりし    江  冬
   五十日御油の宿屋に病臥て    美
    恋しき外にけぶり立なり    茶  恋
   指の爪噛とて星をかぞへつゝ   江  恋
    家越せばやと月の夜を待    美  秋月恋
   粟酒のはやり初たる笹の露    茶  秋
    きたなく成りしかうろぎの声  江  秋
ナ  玉川を鍋ずみかきに踏こへて   美
    朝から辻に放下はじまる    茶
   状箱をかざして見たる閻魔堂   江
    雨にぬれたる鶏盗むらん    美
   百年も一人寝て見る花植て    茶  春花
    鼠のへらす春のうちまき    江  春
  
引用:『一茶の連句』高橋順子

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