『花鏡』世阿弥、能楽論集、小学館
序破急之事
ー 略 ー
「急と申すは、挙句の義なり。その日の名残なれば、限りの風(最終の風体)なり。
破と申すは、序を破りて、細やけて(細やかに)、色々を尽くす姿なり。
急と申すは、またその破を尽くす所の、名残の一体なり。
さるほどに、急は揉み寄せて(体を激しく動かし集中する)、乱舞(格をはずれた自由な舞、速度の早い手の多い舞)・はたらき、目を驚かす気色(けしき)なり。揉むと申すは、この時分(急)の体なり。
およそ、昔は能数、四・五番には過ぎず。さるほどに、五番目はかならず急なりしかども、当時は、けしからず(むやみに)能数多ければ、早く急になりては、急が久しくて急ならず。
能は破にて久しかるべし。破にて色々を尽くして、急は、いかにも(なにがどうあろうとも)ただ一切り(一曲)なるべし。」
0 件のコメント:
コメントを投稿