2010年6月3日木曜日

支考、翁に難破される

『葛の松原』で支考は、余情付として、三つの付け方を提示したが、後に芭蕉に難破され、論を撤回し、別の三法七名八体説※を提唱した。

「世に景気付、こころ付といふ事は侍れど、

○走
     敵よせ来るむら松の音
   有明のなしうちゑぼし着たりけり
○響
     夜明の雉子は山か麓か
   五む十し何ならはしの春の風
○馨
     稲の葉のびの力なき風
   発心の初に越る鈴鹿やま

無所住心のところより付きたらば、百年の後、無心の道人あつて、誠によしといはむ。いとうれしからずや。」 (『葛の松原』支考)


「名目伝(露川)に馨(におい)・走(はしり)・響(ひびき)の事も、葛の松原(支考)を御学びなされ候かな。

これは故翁在世の時に、

 響とは起情の事也、

 走とは拍子の事也、

 馨とは百句が百句ながら二句の間のにほひ

をいへば、付方の一名には如何ならんと、其時に故翁に難破せられて、此たび十論(俳諧十論、支考)に弁義を付て、其誤りを悔み申し候。然ば貴房が名目伝も無用の沙汰と申すべく候。決して抜捨たまふべし。」(『口状 露川責』支考)

※ 三法:    有心付      会釈     遁句
  七名: 有心、向付、起情 会釈、拍子、色立  遁句
  八体: 其人 其場 時節 時分 天象 時宜 観相 面影

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