2015年3月17日火曜日

【満尾】春連歌 『よく見れば』の巻 第五千句第六百韻

                      百韻『よく見れば』の巻   
                                                                                  2015.3.18〜4.28

発句  よく見ればなづな花咲く垣ねかな    芭蕉  春
脇     郷のしゞまに響むうぐひす     春蘭  春
第3  山高み雲居はいまだ残る雪       野茨  春
4     年々増すは日々の速さよ      杜角
5   燃えるごみ燃えぬごみ分け煩はし    真葛
6     「お持ち帰り」がゴシップとなり   曙水 
7   いつになく顔曇らせるお月さん     草栞  秋月
8     夜食を買ひに馳せるコンビニ     茨  秋

9   気の所為で終はりたくなし秋の声    ね子  秋
10    ちぎりは夢か憎き戯れ男       蘭  恋
11  偶然も運命になる片想ひ         水  恋
12    旅の余韻に身をまかしつつ      角
13  しばらくは無為に籠らん草の庵      茨 
14    圏外なれば邪魔も入らず       栞
15  アマチュアがゴルフツアーに優勝し    蘭
16    大きなつづらを背負ふ冬晴      ね  冬
17  人絶えし関所跡なり冴ゆる月       葛  冬月
18    来るなと言えばついてくる部下    水
19  缶ビール乾き物にて花の宴        角  春花
20    風やはらかく心うららか       茨  春
21  君の嘘看破れなかつた万愚節       栞  春
22   「好きだつたの」と匂ふ沈丁      ね  春
二オ
23  上京のいとこの婚儀伝へ聞く       蘭  恋
24    彼に伝へぬメアド変更        水  恋
25  白玉のつるりと喉をおちてゆき     里代  夏
26    岩うちしぶく滝のとどろく      角  夏
27  ぬぐふ汗苦労にほうびある登山      茨  夏
28    露天湯つかり心気充実        蘭
29  祝定年友と卒業旅行して         角
30    想ひ起せる異動発令         栞
31  世界中紛争地帯となりにけり       ね
32    えさに群れ寄り競ふ水鳥       茨  冬
33  枯れてなほ形おもしろき蓮の骨      蘭  冬  なり
34    祖父が好みの志野の七化け      水
35  山の音聞きしと思ふ谷戸の朝       代
36    四葩にほそる雨後の参道       角  夏  よひら
二ウ
37  短夜を惜しむ逢瀬の狂ほしき       栞  夏恋
38    乱筆をどる衣衣の文         葛  恋
39  上司より逆玉縁談舞ひ込んで       茨
40    ひとカラ通ひロック絶叫       水
41  右肩のタトゥーの名前見え難し      ね
42    妻の顰蹙耐へてプロレス       蘭
43  会話なき息と一献古酒開けて       角  秋
44    もつてのほかの蘊蓄を添へ      栞  秋
45  突き抜けて拝領の槍嫦娥刺す       葛  秋月
46    逢魔が時に辻を行く馬        水
47  白無垢に覚悟秘めるや綿帽子       茨
48    枝ふつくらと揺れる花房       蘭  春花
49  風ぐるま地蔵の前に置き去られ      ね  春
50    わらんべ群れて遊ぶ紫雲英田     角  春  げんげだ
三オ
51  モーニングサービスにつく茹で卵     代
52    剥れかかつたレトロ広告       栞
53  つまらない授業はサボり映画館      茨
54    定まる夢の欠けし青春        蘭
55  アルバムを整理仕出して時忘れ      角
56    どこに隠すか妻お見通し       水
57  シュレッダー嵩なしてゐる年の内     代  冬
58    物色やめて嫁ぐ二十九        茨
59  味噌汁の茗荷の味もほろ苦く       栞
60    帰省久しく老いし父はは       角  夏
61  休耕田むぐら隠れに鹿の角        蘭  夏
62    げに難しき異種の共存        茨
63  満月の迎へ拒めぬかぐや姫        ね  秋月
64    今ひとたびの竹伐りもがな      栞  秋
三ウ
65  新藁を束ね修練居合術          角  秋
66    決まつてひとが覗く節穴       蘭
67  いつまでも鬼が目隠しかくれんぼ     代
68    ゆふべの鐘に合はせ鳴る腹      茨
69  向日葵は禅僧のごと立ち尽くし      水  夏
70    ふらりふらふら誘ふ蛍火       ね  夏
71  忍ぶれど思ひ焦がれて後を追ひ      栞  恋
72    振袖綾に恋は盲目          葛  恋
73  幼ななじみ成人式に見違へて       角  新年
74    東京さ出るとやつぱ違ふね      蘭
75  めくるめく洗練度増すオフィス街     茨
76    蜃気楼にも現れるとや        栞  春
77  蓬莱山富士の裾野は花ごろも       角  春花
78    てふてふ追ひて転ぶをさな子     水  春  まろぶ
ナオ
79  天才を育てる塾のあるといふ       ね
80    自撮りばっちり独り見蕩れて     代
81  辻占で今がモテ期と煽てられ       蘭
82    着た切り雀がスーツ新調       茨
83  副賞は世界一周社長賞          角
84    耳慣らしにとAFN聴く       蘭
85  たいていのことはネットで用が足り    栞
86    アイフォン見つつ漬ける沢庵     ね  冬
87  エコライフ求め田舎に移住して      茨
88    街のネオンがまれに恋しき      角
89  下弦月小遣ひ更に減らされる       蘭  秋月
90    唇寒く手折る残菊          栞  秋
91  坂の家柿はたわわに人なくて       水  秋
92    そつと触れれど零余子こぼるる    茨  秋   
ナウ
93  泣き止まぬ児を背負ひ出る昼の丘     角
94    悠々自適の老後遠のく        ね
95  埋み火を掻けばまた燃ゆふるき恋     蘭  恋
96    異国の空からおくる絵葉書      茨
97  オリオンの星を仰げば冴返り       栞  春
98    田螺蠢く小田の水底         角  春
99  大将は一本立ちの花の巨樹        茨  春花
挙句    木々は萌黄に芽吹き初めたる     蘭  春


※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
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初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
貞享式海印録
付け転じ方
写真借用はフォト蔵さん

2015年1月5日月曜日

【満尾】初懐紙『正月の』の巻 ー 第五千句第五百韻



                      百韻『正月の』の巻   
                                                                                  2015.1.5〜2.9
発句  正月の子供に成て見たき哉       一茶  新年
脇     白紙はみ出すほどの書初め     春蘭  新年
第3  マジシャンの金の箱より鳩飛びて    真葛
4     ふだんとがめる妻も空箸      野茨
4     逢魔時の行合の空         草栞  秋
5   明月や無理とさとりぬ隠しごと      蘭  秋月  両句に
6     ラ・フランスの甘き香を剥く    里代  秋
7   茶話会へ持ち寄る品につど迷ひ     杜角
8     不器用通し得たる定席        葛

9   黙阿弥の影武者となり存へて       栞
10    悔ひ改めに遅きことなし       茨
11  シニアにてふたたび戻る大学生      蘭
12    テレビ消せない箱根駅伝      曙水  冬
13  酒気帯びの亭主炬燵で指図する      角  冬
14    宇宙旅行の夢は伏せたり       代
15  面接は上手に嘘をつく場らし       茨
16    化粧濃いめに再婚の朝       ね子  恋
17  みそ汁はあなた好みに薄くして      蘭  恋
18    浅き浦にも春きざす頃        栞  春
19  空の月掌にある如し月日貝        葛  春月
20    花はつぼみのうちこそが華      角  春花
21  加速する世代交代フィギュア界      茨
22    バブルの記憶レジェンドとなる    ね
二オ
23  ある意味で会社選びは博打に似      蘭
24    響かぬ鉦を捨てて悔いなし      葛
25  炎天下心頭滅し布施修行         栞  夏
26    緑蔭すずしありがたき風       角  夏
27  冤罪の不倫疑惑の渦中にて        ね
28    女も好きでお茶屋遊びは       代
29  オアシスを求めるやうに京都・奈良    茨
30    身軽な独りむしろ羨む        蘭
31  賃貸かローンを組むかで喧嘩をし     水
32    相棒見ては真似る口癖        栞
33  もう少し足長けりゃと埒もなし      葛
34    記憶はいつも鬼ごっこの鬼      ね
35  ねんねこの中の妹ずり上げて       代  冬
36    街の昼月氷砕のごと         水  冬月
二ウ
37  若作りすぎて老化を目立たせり      角
38    秘めたる情事噂広まる        栞  恋
39  ウィンクにVサインして玉の輿      葛  恋
40    早や二代目に移る追っかけ      代
41  青春はたぎる情熱あるかぎり       茨
42    もう一花とダンス教室        蘭
43  右足と右手同時に前に出し        ね
44    パパのビデオへ園児駆け出す     水
45  春びよりパワー全開晴れ男        角  春
46    空へぐるりと半仙戯漕ぐ       代  春
47  山裾を覆ふばかりの花の波        栞  春花
48    今ある生を礼す野仏         茨
49  退院後だんだん伸ばす散歩路       蘭
50    日々微かにも季節うつろふ      角    
三オ
51  花時計黄色のパンジー今何時       水
52    言葉あそびは少女得意で       葛
53  きらめきの湖もとは名なき池       茨
54    白鳥飛来添へる彩り         角  冬
55  初デート手袋越しに手をつなぐ      ね  冬恋
56    グリューワインに一夜明かして    代  恋 
57  残る月そぞろ身に入む朝の市       栞  秋月
58    立ち籠めし霧うすれゆく川      蘭  秋
59  越え難き砂漠にせめて野菊咲け      ね  秋
60    宙を仰げば恒河沙の星        茨
61  顔ならべ視線泳がす露天風呂       角
62    手拍子打って宴もたけなは      葛
63  特訓のカラオケで人振り向かせ      蘭
64    狐忠信花道を翔ぶ          水  雑花
三ウ
65  騙されたフリ作戦の父母の知恵      ね
66    おとり捜査に一役買つて       栞
67  裁判の傍聴レポが趣味となる       茨
68    またぞろもたぐ作家への夢      角
69  こなからが五合となって四畳半      葛
70    口説き文句は常の鉄板        水  恋
71  同窓会聞けばマドンナ未亡人       蘭  恋
72    主演脚本語る半生          ね
73  冬銀河韓流ブームいまいずこ       代  冬
74    波の花立つ断崖の磯         茨  冬
75  お仕覆の裂地問はれて答へけり      栞
76    そっと正座を崩しもむ足       角
77  楽しみはお清め鄙の法事ごと       蘭
78    当番札の失はれをり         葛
名オ
79  学ランの釦懐かしブレザーは       水
80    蛮カラやがてチョイ悪に成る     ね
81  フレックス制開始前からフレックス    茨
82    店の外まで薫る珈琲         角
83  切絵図をたどり味はふ江戸情緒      蘭
84    消えた町名復活の縁         栞
85  なれそめは判子もらひに地区回り     角  恋
86    ハスキー声も婀娜にかはゆく     茨  恋  あだ
87  体裁をつくろふなかれ猫の恋       蘭  春
88    チューリップ皆小首かしげて     水  春
89  背負ふものどうでもよくて朧月      ね  春月
90    脱ぎしさしぬき行方知らずも     葛
91  きぬぎぬの別れに憎きすましがほ     茨  恋
92    総務部長にばれた二股        水
名ウ
93  前門の虎後門の狼で           栞
94    苦難試練は成長の糧         角
95  けなげさや野になにを食む悴け鳥     蘭  冬  かじけどり  
96    掛大根の並ぶ庫裡裏         代  冬
97  残したき風景ばかりの写真集       ね
98    蝶の舞ひゆく懐しき径        栞  春
99  一面の花筏割る舟の水尾         茨  春花  みお
挙句    四つ葉みつけてあがる歓声      角  春

※定座は守っても守らなくてもよい。四花四月〜七月。
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初折表 123456月8       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678月012花4 (9〜22) __________
二折表 123456789012月4 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)__________
三折表 123456789012月4 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)__________
名残表 123456789012月4 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 123456花8       (93〜100)_________

作法式目
貞享式海印録
付け転じ方