2011年7月19日火曜日

杭全神社の連歌(二)

2009/3頃の自分の付句を抜き出してみた。


今年またこの花の下小編笠
  こころに染むや杜のうぐひす  佐為

明けぬれば所の夷訪ね来て
  鳥渡おほめに投げる賽銭    佐為

世の中は酸いも甘いも裏表
  うららに老の楽しくあらな   佐為

  霞がくれの恋の行く末
背き出づるわがふる里は遠のいて  佐為

祭笛ひときは高く響きをり
  床のあかりをゆらす鴨川    佐為

  山法師らの為業ゆゆしき
堪忍をひとには道と説きながら   佐為

いずくにぞ鹿の隠れて忍び居る
  もみぢかつ散る峡のゆふぐれ  佐為

  木枯らしも見よすぐなる心
ひたぶるに生くるはよそ目狂ふごと 佐為

行く雲にいざなはれつつ膝栗毛
  そらをさだめて立たん有明   佐為

  雁のこゑ閨にほの聞く
花のころたどる夢路のおぼろにて  佐為

  近くばよって雛をめでなむ
子をなしてだんだんわかる親ごころ 佐為

  朋と語りしひとときありて
倖せはひとそれぞれに違ふらし   佐為

  隈なき空に月を眺めむ
ひたひたと寄せてうねるや望の潮  佐為

人しげくあきなふ傍の難波橋
  みをつくさねばくいのこるべき 佐為

  ほととぎすの声まづぞ待たるる
山がつの庵のけぶりもほそるらん  佐為


杭全神社の連歌作法・式目

杭全神社の連歌

名残裏
 五  広き河色もかえずにとうとうと  
 六    ひねもす春の海をめざしぬ  
 七  うかれ出づるこころは花もとめられず  佐為

   うかれ出づるこころは花もとめられずひねもす春の海をめざしぬ

杭全神社(くまたじんじゃ)はリアルにも連歌を続けている稀有な所だが、インターネット連歌もやっている。久しぶりにのぞいて見た。百韻、発句が2009/10/22 〜 名残裏六2011/2/14でとまっていた。挙句前を付けた。西行 and/or 芭蕉の俤付け。法楽連歌にはふさわしくないかも。

   行く春にわかの浦にて追付たり 芭蕉

行く春とは西行のこと。わかの浦とは和歌のこと。西行を追慕するする芭蕉の心境。

杭全神社の連歌作法・式目

2011年7月18日月曜日

初心には随分許すべし。去嫌より変化の実を優先せよ!

去嫌総論 in『貞享式海印録』曲斎著

本書(芭蕉伝書『二十五箇条』支考著を指す。)
   【俳諧に指合の事は、凡そ嚔草の類に随ふべし。少しづゝの
    新古の事あり。されど一座の了簡を以て、初心には随分許すべし。】
   
    注:指合(さしあい) 連歌・俳諧で、同字語や同義語などが規定以上
      に近くに出るのを禁じること。また、そのきまり。

    注:嚔草(はなひくさ) 野々口立圃が寛永十二年に著した最古の俳諧
      作法書。
 
 ▲(曲斎の解釈を示す。):
   我家は禅俳の宗なれば、古法の去嫌を固(もと)とせずといふ心なれども、
   従容してかくいへり。

   此の故に古式に或ひは五去といふも、其の句其の句の出るに任せて五去
   にも二去にも、其の理ある物は越をも許されけり。

   初心には随分許せとあるをもて、古式に拘らざる故明らか也。素(もと)
   より去嫌を必とせざれば、是と定まりたる掟なけれど、門人は其の席々
   の證を鏡(かがみ)とせし故に、人々各々の訯き(さばき)も同意の訯きも
   あり。今則(のり)とせば、句去近き物をとるべき事也。

本書:【一句の好悪を先づ論じて、指合は後の僉義なるべし。指合とは辞の事
    也。去嫌とは象物の類也。指合、去嫌の用は、変化の為め也と。先づ
    其の故をしるべし。】

 ▲:一句の好悪とは作の事ならず。前句を、見かへしか見かへざるかと骨髄
   の変を論ずる事也。よく前情を変ずる時は、猫の越に鼠と付けても意の
   運び雲泥にて輪廻しせざれば、生類の論は時に臨みて許し、又前句を其
   の間々に付くる時は、趣向は唐天竺に異なるとも、その情通へば許すま
   じとぞ。
 
   指合とは字類の事、去嫌とは神、釋、恋、無常、名所、山川、衣食、生
   植等の模様を配る皮毛(ひもう)の変なり。この故に「後の僉義」と云へ
   り。されば恋は二より五なれども、百句続きたるも長句花短句鳥と並べ
   たる変格もあり。

   如此は前句を見かふる骨髄の変ならで、模様の皮毛に何の変かあらむ。
   抑も宗匠の能といふは、翁の金言を述ぶるのみなるを、句々出づる毎に
   掟たる付肌の論には及ばず、己が涅覔(ねちみゃく)の工夫より、なの花
   に行燈も、打越の浮名を立て、徒に句を返す宗匠もあるよし、祖師の冥
   見恥づべき事になむ。

本書:【変化の不自在より、世に指合、去嫌の掟あり。万物の法式は、此のさ
    かひにて知るべし。】
    
 ▲:連俳に去嫌を立てしは変化の為まなれど。当門には前句を転ずる妙法あ
   る故に、強ひて古式に預らずと其の理を堪破せよと也。

   つらつら惟(おもん)みるに当門専用の式と云ふは、「春秋五去にて三よ
   り五に及び夏冬二去にて一より三に至る。花は折に一つ。月は面に一つ
   にて、五去と云ふ類の外は、凡て臨機応変のさた也。」

撫子ジャパンW杯優勝

2011年7月15日金曜日

出張連歌:歌仙『雷の』の巻



      歌仙『雷の』の巻
                  起首:2011.7.5
                  満尾:2011.7.15
初折表
発句  雷の音は恐ろし梅雨あがり     夏  蛙紀羅  
脇     田の草取りに出づる合鴨    夏  涅阿(春蘭)
第三  蓮の花水上の園抜きん出て     夏  浮舟
四     賑ひゆかし城の松蔭         スナフッキン
五   名月の光り輝く独り舟       秋月 蛙
六     秋太郎殿でませや出ませ    秋  蛙
初折裏
一   はなたれて花野にはしゃぐ犬と主  秋  阿 
二     かけろやかけろ皆振り返る      蛙
三   高砂や九尾の狐着飾つて      恋  ス
四     色に出にけり秘めしときめき  恋  阿
五   大翁一息つくは語る時          蛙
六     そゝと奥よりお茶と菓子盆      阿
七   寒椿手折て床に挿し着せば     冬  ス
八     風花ながら冴ゆるゆふ月    冬月 阿
九   山茸や衣重ねて箸を持す         りゅんじょび
十     酒啜るとや煙る伏屋に        ス
十一  花の降る里にやどりぬ旅がらす   春花 ス
十二    ゆくすゑみればかすむくさはら 春  阿
名残折表
一   また増えし休耕田に雉子なく    春  阿 (きぎす)
二     ハートのジャックの懐事情      ス
二     懐さむく蔵も荒れ果て        蛙
三   何処へゆく国の舵取りふらふらと     蛙
四     それにつけても憂しやみちのく    阿
五   何時の世も水無月灯す人の群れ   夏  蛙
五   30°以下は冷房我慢して      夏  阿
六     たかが17文字に汗する    夏  阿
六     見た目だけでも浴衣すずしき  夏  阿 両句に
六     祈りの中に夏越過ごせり    夏  阿 両句に(なごし)
七   原子の子役にたてれど大暴れ       蛙
八     因の成すまま歴然として       り
九   君の背をいとし母屋に袖をふる   恋  り
十     わかれせつなき露の後朝    恋  阿 (きぬぎぬ)
十一  有明やあけぬうちから鳴くからす  秋月 阿
十二    紅葉敷く庭ながめ坐しけり   秋  り
名残折裏
一   美術展絵より自然が美しく     秋  阿
二     言葉無くして見いる万葉       り
三   千歳ふる歌の息吹がよみがへる      阿
四     いさ大和のちめぐる旅立ち      り
五   見上げれば花は空にてとおせんぼ  春花 り
挙句    ぬきつぬかれつ泳ぐ若鮎    春  阿

         蛙紀羅  九
         涅阿  十五
         浮舟   一
         スナフ  五
         りゅん  七

出張先:Gree
写真提供はフォト蔵さん

2011年7月3日日曜日

百韻『五月雨の』の巻



第二千句第十百韻

       百韻『五月雨の』の巻
                   2011.6.1~7.3

発句   五月雨の降りてとゝのふ山田かな   夏  私
脇      一軒家にて祝ふ早苗饗      夏  草栞  さなぶり
第三   遠方に幼言葉の聞こえゐて         ね子  をちかた
4      孫より猫を可愛がる祖父        私   じじ
5    一日を無為に過ぐして夜長し     秋  ね
6      更待月の侘しさに堪え      秋月 栞
7    あはれ蚊を障子の外にみちびいて   秋  私
8      手塩に掛けし弟子の旅立ち       ね

9    マジックのBGMを一新し          栞
10     夢の舞台に乙女らが舞ふ        郎女
11   タカラヅカデートとしては高くつき  恋  私
12     口説いてみればニューハーフなり 恋  ね
13   水仙の甘きかほりの似合ふひと    冬  郎
14     石焼薯をやり過ごせずに     冬  栞
15   江戸情緒たづね歩いて路地や辻       私
16     行き止まりにぞ好機潜める       ね
17   からくりを張り巡らせて古屋敷       郎
18     人目隠れて棲む小人たち        栞
19   家事すればただと人情大家さん       私
20     新入生は同郷訛り        春  ね
21   花むしろ守りを頼む知らぬ顔     春花 郎
22     巣立ち鳥来て餌をついばむ    春  栞
二オ
23   事もなく油揚げなど掻つ攫ひ        ね
24     金がもの言ふ企業買収         私
25   失敗といふオプションは考慮せず      栞
26     ただ白球を追ひ駆けるのみ       郎
27   松ばやし木下闇は涼しかり      夏  私
28     物の怪の気に満ち満ちてゐる      ね
29   丑三つの刻に煌めく五芒星         郎
30     美神を前に僕となりて         栞  しもべ
31   新婚の課長定時に帰宅する      恋  ね
32     月もよしとて急遽合コン    秋月恋 私
33   飲み比べ薦め酔はせる濁酒      秋  栞
34     からりからりと瓢かわきぬ    秋  郎  ひさご
35   ガラス戸に陽射しやはらぐ六畳間      私
36     ご飯ですよの声懐かしく        ね
二ウ
37   子らの手を引いて訪ねる独身寮       郎
38     白旗掲げ一時休戦           栞
39   与党対野党にあらず枯野原      冬  ね
40     うらは無心にゆりかもめ舞ふ   冬  私
41   空の木にいざ言問はん天の声        栞
42     少女の熱き想ひをのせて     恋  郎
43   あへぬまゝ月日流るゝ花筏     春花恋 私
44     八十八夜を駆けてゆきたし    春  ね
45   ゴールデンウィークこそが稼ぎどき  春  郎
46     句集作りのSOHO倶楽部        栞
47   育メンは仕事半ばに席を立つ        ね
48     チャイムとゝもに帰るコールか     私
49   教室に携帯電話置き忘れ          栞
50     夜が明けるまでwebでツイート    郎
三オ
51   essayを作家気取りで書きためて    私
52     つれづれ過ぎてものぐるほしけれ    ね
53   原文で読めと言はれてみたものゝ      郎
54     野外シネマで恋のレッスン    恋  栞
55   満月は狼男を誑かし        秋月恋 ね
56     遠き雲居を走る稲妻      秋恋  私
57   わびぬれて浅茅が宿に辿り着き    秋  栞
58     昔語りに涙雨ふる           郎
59   同期会かほでわからず名乗り合ひ      私
60     ガキ大将は文部大臣          ね
61   まあ俺についてこいよと胸を張る      郎
62     なさねばならぬメダル獲得       栞
63   一日ですつからかんのラスベガス      ね
64     あだな燭蛾に悔いはあるまじ   夏  私  しょくが
三ウ
65   井戸水で冷した西瓜いさぎよく    夏  栞
66     叩きて割れば色あざやかに       郎
67   あらうれし明石の塩がま桜鯛     春  私
68     眼にちらり浮かぶ春愁      春  ね  まなこ
69   いもうとも卒業の日を迎へをり    春  郎
70     謝恩の席に集ふ花の輪      春花 栞
71   幾年の思ひを胸に秘めたまま        ね
72     打てば血がわく祇園太鼓よ    恋  私
73   待ちきれず小路の茶屋に誘ひ入れ   恋  栞
74     団子喰う間に入る横槍         郎
75   すいとんが美味でひもじさ伝はらず     私
76     思ひやらるる夏の節電      夏  ね
77   それなりの制約がありクールビズ   夏  郎
78     掟破りのヒーロー出でよ        栞
ナオ
79   変身を試みれども我はわれ         ね
80     ちまたの小町に返す流し目    恋  私
81   短くも美しく燃え露と散る      秋恋 栞
82     月見の酒に酔はされるまゝ    秋月 郎
82     残る蛍は君がたましひ      秋恋 郎
83   ほのゆれてうつろひ初むる秋の草   秋  私  両句に
84     浦の苫屋は人影もなし         ね
85   今むかし藻塩の身をや焦がすとふ      郎
86     夕餉のけむり立ちのぼりつつ      栞
87   買ひだめもいいものですと冬籠り   冬  ね
88     積読本を炉辺に読まばや     冬  私  つんどくぼん ろべ
89   寝ては覚め謎解き推理繰り返し       栞
90     パズルの付いた日めくりめくる     郎
91   仏壇に快気お礼の香焚いて         私
92     昨夜の夢はラベンダー色     夏  ね  ゆふべ
ナウ
93   久方のすがしき寝覚め避暑のやど   夏  郎
94     窓の向こうはマグリットの絵      栞
95   現世とは何かと問はれ目を逸らす      ね
96     むゝゝと唸りどつと冷や汗       私
97   奪衣婆の座る番台後にして         栞
98     川面見やれば風きらめけり       郎
99   晴れ晴れと春を感じて花盛り     春花 ね
挙句     ひらりひらりと初蝶の舞ふ    春  郎

       私  二十五    
       草栞 二十五
       ね子 二十六
       郎女 二十五

縦書きPDF版 by ふないさん


式目  
正風芭蕉流準拠十カ条 

写真1借用は北杜市観光協会大泉支部さん 写真2借用はLivedoorPICSさん