2011年5月17日火曜日

気色(景色・景気)

「先師曰。気色はいかほどつゞけてもよし。天象・地形・人事・草木・魚虫・鳥獣のあそべる其形容みなみな気色也。」(『去来抄』修業教) 

気色(景色・景気)とは、人を含む自然の風物を対象とする心象風景。

連歌と俳諧はなにが違うのかー常識のウソ

 蕉風俳諧の発端となったと言われる、冬の日「狂句こがらし」の巻には、俳諧師芭蕉が敬慕する連歌師宗祇が出てきます。宗祇は連歌を完成させたと言われています。同様に芭蕉は俳諧を完成させたと言われています。

 一般に「連歌は景句ばかり詠んでいる」、それに対して「俳諧は人情句ばかり詠んでいる」と思われているようです。両者とも長い歴史があるのでそういう時期もあったことでしょう。

 俳諧の代表として「狂句こがらし」の巻、連歌の代表として宗祇らの「水無瀬三吟何人百韻」を見て実際の所どうなのか明らかにしてみました。

 人情句か景句かの判断は微妙な領域ではありますが、私の独断(同じ基準)を両者に公平に適用するということで。

●俳諧 冬の日「狂句こがらし」の巻 芭蕉他
http://www.ese.yamanashi.ac.jp/~itoyo/basho/shitibusyu/huyunohi.htm

   人情句   景句
表   4    2
裏  10    2
名表  9    3
名裏  5    1
ーーーーーーーーーーーーー
計  28    8
   77、7% 22、2%

●連歌 水無瀬三吟何人百韻 宗祇他
http://www.h6.dion.ne.jp/~yukineko/minase.html

   人情句   景句
表   2    6
裏  10    4
二表 13    1
二裏 13    1
三表  7    7
三裏 12    2
名表 12    2
名裏  6    2
ーーーーーーーーーーーーー
計  75   25
   75%  25%
  
 この結果、連歌と俳諧を景句と人情句の多寡によって特徴付けることは無理だということが判明しました!!

 水無瀬三吟の表八句は序なので神祇釋教述懐恋旅など人情の入りやすいものが御法度で景句が多いのだと思います。これだけを見て連歌って景句ばっかりと思ってしまう人もいるでしょう。

 また俗語がなく雅語ばかりなので人情句を読んでも景句のように感じる向きもあるかも知れません。人情をものに託したり譬えたりする向きも見受けられ、表向きは景句のように見えるでしょう。

 二折や三裏、名表など破の部分はほとんどが人情句で、自他場論の北枝におこられそうです。でも芭蕉さんにはおこられないと思います。芭蕉さんもこの点に関して執着がなかったようですから。

 俳諧はもともと俳諧之連歌で俗語を使った連歌の一種(部)でした。俳諧が連歌から独立したあとも両者の違いは一点、俗語を使うかどうかに絞れると思います。俗語を正すのが俳諧だと芭蕉さんが言った意味の一端もここにあろうかと思います。

おわり

2006年08月22日21:51

人倫2句去り

■人倫2句去り
原田曲斎『貞享式海印録』は芭蕉が参加した連句と高弟の連句をすべて調査し、人倫と人倫の運びに別ある事を芭蕉門の通則として発見した。曲斎は、人倫(人事、人情)とは何か古来混乱してきたのは、体と用、姿と情を一緒くたにしてきたからだとする。それに対する一つの方策と見られる北枝の自他場論については根本的に無理があるとして退けている。

芭蕉門は人倫を<人倫>と<人倫の運び>に分け、人倫については二句去り、人倫の運びについては打越可としてきたと曲斎は主張する。人倫の運びで打越可とするのは、芭蕉門には前句の意を転ずる妙法(取り成し付け等のことか)があるからだとしている。

■人倫  父母、男女、親子、六親九族、僧名、俗名(人名): 二句去り 
■人倫の運び                      : 打越可
1、噂
1-1主 物を司る人の呼び名 
     官名、神主、坊主、名主、殿、奥様、隠居、庄屋、古人名等
1-2誰 広く他人をさす言葉 
     翁、若僧、尼人、客、友、仲間、連衆、旦那、先生、汝等
1-3身 自分をさす言葉   
     我、己、某、私、拙者、手前、自身、此方、影法師等
1-4独 人数をさす言葉   
     一人、二人、幾人、多勢、群集等
1-5媒 態・芸(仕事)   
     仏師、医師、酒好、関取、馬鹿者、大工、左官、六部、巡礼等
2、姿 体の部位名、病名   身、髪、乳、鼻
3、情 心の感情を表す言葉  つらし
4、用 行いを表す言葉    つくらせて、米を苅る、しぼりすて、なく等


●例1:冬の日                <人倫の分類>        
狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉 芭蕉  姿(身) 人倫(竹斎)
 たそやとばしるかさの山茶花   野水  誰(たれ)  
有明の主水に酒屋つくらせて    荷兮  主(主水) 用(つくらせて)
 かしらの露をふるふあかむま   重五  
朝鮮の細りすゝきのにほひなき   杜国
 日のちり/\に野に米を苅    正平  用(米を苅る)

わがいほは鷺にやどかすあたりにて 野水  身(わが)
 髮はやすまをしのぶ身のほど   芭蕉  姿(髪)用(しのぶ)姿(身)
いつはりのつらしと乳をしぼりすて 重五  情(つらし)姿(乳)用(しぼりすて)
 きえぬそとばにすご/\となく  荷兮  用(なく)
影法のあかつきさむく火を燒て   芭蕉  身(影法) 用(焼て)
 あるじはひんにたえし虚家    杜国  主(あるじ)
田中なるこまんが柳落るころ    荷兮  人倫(こまん)
 霧にふね引人はちんばか     野水  用(引)誰(人)姿(ちんば)
たそかれを横にながむる月ほそし  杜国  用(ながむる)  
 となりさかしき町に下り居る   重五  用(下り居る)
二の尼に近衛の花のさかりきく   野水  誰(尼) 用(きく)
 蝶はむぐらにとばかり鼻かむ   芭蕉  姿(鼻) 用(かむ) 

●例2:今年竹
ちりめん山椒の歌仙『今年竹』を試みにこの観点から分析しましたがノープロブレムでした。人倫二句去りは普通にやっていれば気にする必要はあまりなさそうです(^^) 

                           <人倫の分類>
発句  今年竹面妖な皮ぬぎにけり      百 夏  
脇     煮しめたっぷり早苗餐用意  みかん 夏  用(用意する)
第三  この村を何とかしよと集まりて   青波    用(集まりて)
四     元芸人の先生さ呼ぶ      春蘭    媒(芸人)誰(先生)
五   とどのつまり変哲もなき月の客   鉄線 秋月 誰(客)
六     流れ流れて落鮎となり     草栞 秋

一   柿むいて入り日はなやか新所帯   木槿 秋恋 媒(新所帯)    
二     氏神様の前はばからず      亮 恋  用 はばからず
三   寺もたぬ僧の教化は愛語にて     蘭    主(僧)
四     ツーリングして津々浦々へ    百    用 ツーリングして
五   潮騒に誘はるるまま午睡かな     栞 夏  用 午睡
六     あなたと聴いたあのフォービート 鉄 恋  誰(あなた)用(聴いた)
七   手をひかれアイスダンスの輪の中に  み 冬  用 ひかれ
八     マッチ消ゆれば木枯らしの月   槿 冬月
九   紙巻きを葉巻のやうに摘まむガイ   蘭    誰(ガイ)用(摘まむ)
十     石津謙一ジーンズ似合う     百    人倫(石津謙一)
十一  花に雨今日はフランスパン焼いて   亮    用(焼いて)
十二    入学試験の準備OK       波 春  用(準備 )
ナオ
一   始発列車ムーミン谷に春惜しむ    鉄 春  用(惜しむ)
二     アケボノスギの梢遙かに     栞 春
三   ピンボケの写真いまだ棄てきれず   亮    用(棄てる)
四     瓦礫に埋もれた故郷の家     み     
五   やらしいわあどっちにしよう今年の蚊 槿 夏  情(やらしいわ、しよう)
六     草清水までまとわり付いて    百 夏  
七   思い出を断ち切りたいと旅にでる   波    情(断ち切りたい)用(でる)
八     離婚届けはテーブルの上     亮
九   ATM暗証は「サラダ記念日」だ   鉄
十     僕もしらない日本語のゆくえ   槿    身(僕)情(しらない)
      画廊出づれば黄昏る街      槿    用(出づれば)

2008年05月20日 10:31 No.65

2011年5月15日日曜日

本:芭蕉の方法 - 連句というコミュニケーション



■内容の強引な咀嚼
 前句と同意ー言葉は違っても内容的に同じことの言い換え、前句の説明はだめ。

 古来のありきたりの連想の寄合ー物付けは面白くない。

 前句の意味内容に直接付ける心付けも前句から離れず展開が面白くない。

 前句から離れ、前句と意味内容が直接関係ない事柄を詠んでいながら前句と二句一連で意味の通る(短歌を構成すること。三句の転じは当たり前だが、)二句の転じがベスト。前句の余情に付け匂わせたり、響かせたりする。これが正風の蕉風。

 思い成しー見込み、面影、取り成しー見立て替えもあり。

 前句の作者が予想するような付けではなく、思いも寄らない句を付け展開していくのが連歌の面白さだ。

■感想
 著者、宮脇真彦氏は東明雅氏の弟子。連句は短歌を連ねていくという自明のことをわかっているようで、わかっていないような印象も受けるのはなぜだ? 引用にある『救済・周阿・心敬連歌合』応仁二年、に興味が湧いた。古典籍の画像は早稲田大学図書館のデータベースにある。


本:ツァラトゥストラ 黄金の星はこう語った 





印象に残った部分の抜き書き:

序説:
 おまえたちに超人を教えてやる。人間は克服されねばならぬ何かである。おまえたちは人間を克服するために、何をしたというのか?

戦いと戦士:
 おまえたちの生命への愛が、おまえたちの最も気高い希望への愛であれ。また、おまえたちの最も気高い希望が、最も高貴な生命の思想であれ! そして、おまえたちの最も高貴な思想を、おまえたちはこのわたしから命令として授けてもらわなければならない。 その最も高貴な思想とは、人間は克服されねばならぬ何かである、というものだ。
 このように、生命の声に従い、そのために戦う人生をおまえたちは生きるのだ! 長いだけの人生が長いが何だ! 戦士は労ってもらいたいなどと望むものか! わたしはおまえたちを、大切にしすぎるようなことはしない。おまえたちを心の底から慈しんでいるからだ、わが戦友たちよ!

新しい偶像:
 大地は今なお、偉大な魂にとっては自由に開かれている。今なお穏やかな海の香ただよう多くの場所が、孤独な者たちや唯一の伴しかない者たちを待っている。束縛されずに生きる道が、偉大な魂にはなお残されている。まことに、僅かしか所有しない者は、それだけ何かに取り憑かれることも少ない。細やかな貧しさに称えあれ!

自己克服:
 絶えず自分自身を克服しなければならないもの、それがわたしなのよ。善と悪の創造者となる星を担う者は、絶対にまず破壊者となって、既存の価値を打ち砕かねばならぬ。最高の善意を実現するためには、最高の悪意が必要になる。この悪意があればこそ、最高の善意は創造的となるのだ。

詩人たち:
 詩人たちはあまりにも多くの嘘をつく。しかし、ツァラトゥストラもまた、(比喩を操る)一人の詩人である。

 あらゆる神々は詩人の紡いだ比喩であり、詩人が読み手の心を詐取しただけのことである。

 わたしは詩人たちにうんざりした。古い詩人にも新しい詩人にもうんざりした。わたしにとって、彼らはすべて、上辺だけを追い求める者たちであり、浅い海である。彼らは十分に深く考えなかった。それゆえ、彼らの情感は、ものごとの根底にまで下がっていくこともなかった。何がしかの歓楽と、何がしかの退屈、これがせいぜい彼らの最も上等な思索であった。

救済:
 過ぎ去っていったものを救い、すべての『しかたがなかった』を『わたしがそれを望んだのだ!』に創り変えることーこれこそ、わたしにとって、はじめて救済と呼ばれるにふさわしい!
 意志ーそれが自由を与えてくれ、喜びをもたらしてくれる者の名前である。

癒されつつある者:
 『今からわたしは死ぬ。そして消え去っていく』と、あなたは語ることでしょう。『忽ちのうちに、わたしは無に帰する。魂は肉体と同じように死すべきものである。しかし、わたしという生命を織り成していた糸の結び目は、再びやって来る。その結び目がわたしを再び創り上げることだろう!わたし自身が永遠回帰を織りなす糸なのだ。わたしは再びやって来る。この太陽と倶に、この大地と倶に、この鷲と倶に、この蛇と倶に。新たな別の生命、もしくはより良い生命、あるいは似たような生命のもとにやって来るのではない。
 わたしは永遠に繰り返し、細大洩らさず同一の生命のもとに還って来る。繰り返し万物の永遠回帰を教えるために。くり返し、偉大なる大地と人間の正午について語るために。繰り返し人間たちに超人を告知するために。わたしはわたしの言葉を語った。わたしは自分の言葉によって砕け散る。わたしの永遠の運命がそう望むのだ。わたしは告知者として、この身を捧げる!太陽のように下降する者が自分自身を祝福するときが今、やって来た。このようにしてツァラトゥストラの降臨は終わるのだ』

2011年4月24日日曜日

Twitterによる投稿連携の現状

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▼▲:投稿のエントリ・ポイント
閲覧用アグリゲーションは、Google ReaderとFlipboard for iPad

2011年4月23日土曜日

蕉風連句の付合

芭蕉俳諧の精神、赤羽学

連歌の余情は、そのまま俳諧の付合の「にほひ」に移行しない。連歌の余情は、前句に意味的な連関を考え、それを情趣化したものである。付合の根底に、飽くまで理を立てようとする所がある。それに対して俳諧は、対象の状態を瞬間的に言語化し、理りを言い切ってゆく。付合においても、前句との間に論理的な展開を考えない。そしてその断絶の間に理りによっては計り難い深遠な情趣醸し出す。それが「にほひ」であろうと思われる。


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2011年4月20日水曜日

連歌の付け順ー膝送り

両吟から六吟までは参考文献を引用、七吟から十吟はそれを基に拡張した。 ...は、以下繰り返しを表し、||は、繰り返しの起点を示す。例えば、四飛び二飛びとは、四吟のAに注目すると次は4人の後に詠み、その次は2人の後に詠みそれを繰り返すことを表す。

■ 両吟 AB BA AB BA... or
     AB AB...半分まで BA BA...

■ 三吟 ABC ABC ABC...

■ 四吟 ABCD BADC ABCD BADC...
                        (四飛び二飛び or 二飛び四飛び)

■ 五吟 ABCDE||BADCA ECBED...
                        (六飛び二飛び or 二飛び六飛び)

■ 六吟 ABCDEF BADCFE...     
                        (六飛び四飛び or 四飛び六飛び)

■ 七吟 ABCDEFG||BADCFEA GCBEDGF...
                        (八飛び四飛び or 四飛び八飛び)

■ 八吟 ABCDEFGH BADCFEHG...
                        (八飛び六飛び or 六飛び八飛び) 
 
■ 九吟 ABCDEFGHI||BADCFEHGA ICBEDGFIH...
                        (十飛び六飛び or 六飛び十飛び)

■ 十吟 ABCDEFGHIJ BADCFEHGJI...
                        (十飛び八飛び or 八飛び十飛び)

参考文献:『連句入門』東明雅、中公新書

芭蕉の夢とは

『漂泊の魂』井本農一編、昭和45年、角川書店
 第一編「漂泊者の系譜」唐木順三

風雅の道

1、風雅の誠を勤むるといふは、風雅に古人の心を探り、近くは師(芭蕉)の心よく知る
  べし。」(『三冊子』)

   風雅に古人の心を探りというのは、風雅において古人の心を
   探りということ、すなわち、風雅とは何かを主体的にせめあ
   かした古人の心を探ってそれを追体験せよということである。

2、造化にしたがひて四時を友とす・・・造化にしたがひ、造化にかへれ(『笈の小文』)

   風雅の道へいたるためには、私意を去り、自己執着を去るこ
   と、すなわち自己を放下して造化にかえり、造化の美を己が
   言葉によって荘厳することが課せられる。そしてそこへ到る
   ための条件として無住無庵、一所不住の漂泊の旅を、芭蕉は
   選んだ。  四時:四季

感想:上のことを踏まえて以下の句を読むとき、字面の意味以上の
   感慨をもって芭蕉が句を詠んだことを感ぜずにはいられない。
   この道とは、風雅の道のことで、枯野をかけ廻る夢とは、ま
   だ極めきっていない風雅の道の先にあるであろう境地を希求
   する心のことであろう。
   
     この道やゆく人なしに秋の暮れ
  
     旅に病んで夢は枯野をかけ廻る

2011年4月19日火曜日

百韻『垂乳根の』の巻


第二千句第八百韻

         百韻『垂乳根の』の巻

                        2011.4.1〜4.18

 1 発句 垂乳根の母ふと寂し弥生尽      春   朧月夢
 2 脇    はらはら肩にかゝる花びら    春花  私
 3 第三 洋上の東風異国より来たるらむ    春   ね子
 4      小瓶に詰めた手紙拾ひて         草栞
 5    モチベーション溢れるままに曲作り      リュウ
 6      気づけば空のいろ移りけむ        郎女
 7    黙つても気詰まりしない旧き友        私
 8      汝が名忘るる我を許せよ         不夜

 9    秋彼岸一輪早き契草         秋   夢
10      蟷螂なればいつそ食はれん    秋恋  ね  たうらう
11    共寝して月を見上ぐる怠け者     秋月恋 ふない
12      若き牡鹿の声懐かしき      秋恋  夢
13    立ち寄ったマンガ喫茶はレトロ風       リ
14      一反もめん暖簾にいかが         栞
15    もの売りの吐く息白き勝手口     冬   不
16      討ち入りの日は遂に決せり    冬   私
17    ネクタイを結んでほどきまた結ぶ       ふ
18      迷路のごとき地下駐車場         ね
19    買ひだめは駄目と知りつゝ弥次郎兵衛     私
20      両手に何を持ちて帰らむ         郎
21    倒産の倉庫整理の明易し       夏   不
22      酒酔星は泪色して        夏   リ
二オ
23    短冊に夢書きし子も嫁ぎ行き         夢
24      猫と煮干を分け合うてゐる        ね
25    幸せは己が心で決めるもの          私
26      レモンかじりし君の目が言ふ   秋   夢
27    密やかな仕掛けのごとく稲つるび   秋   栞
28      花野に落ちる鉄塔の影      秋   ふ
29    有明にシベリア鉄道驀進す      秋月  リ
30      寡黙な客の髪は砂色           不
31    吉原の遊びが過ぎて縁切られ         ね
31    同じ席いつものあれを注文す         郎
32      忘れられぬは馴染みのにほひ       郎  両句に
33    一押しのパン屋にはかに店仕舞        私
34      霙の濡らす貼り紙の文字     冬   不
35    束の間に聖樹映せるマッチの火    冬   栞
35    かたしきの袖の時雨も氷つき     冬恋  夢
36      覚めぬ夢こそ永久に見まほし   恋   夢  両句に
二ウ
37    ときめきの薄れるころにつぎの恋   恋   私
38      自転車操業せねば回らず         栞
39    母の日は母を休ませ母代はり     夏   ね
40      白玉茹でる大鍋の湯気      夏   ふ
41   「トルコ風呂」淫らと言われ丸くなり      夢
42      絵は省略とデフォルマシオン       私
43    爆発の後もじわじわ熱帯びて         栞
44      空と海とのまぐはひの刻         リ
45    明星が口に飛び込み大悟する         私
45    見つけたよ、何を?ってほら永遠を      夢
46      理解者なくば天才ならず         不  両句に
47    むだ口を叩き喫茶の夜は更けぬ        ふ
48      入学式を終えて一息       春   郎
49    花見する人を横目の忙しさ      春花  不
50      芋は煮えれど棒鱈煮えず     春   夢
三オ
51    レシピには載せぬ秘伝のありぬべし      私
52      微妙な違ひたれも解らず         栞
53    八百長の噂に力士押し切られ         ね
54      切り返せずに首捻りつつ         私
55    仮免許にて舵をとる無鉄砲          不
56      由良のと渡るお七じゅうろく   恋   夢
57    愛しさの増せば苦もます狂ほしさ   恋   私
58      文も寄越さぬ君のつれなさ    恋   郎
59    巻き湯葉に結び針魚の春の椀     春   夢  さより
60      ちらちら雛をみてはおすまし   春   私
61    篝火のただ煌めきて朧月       春月  夢
62      橋のたもとに狂女舞ふゆめ        ね
63    語り聞く遠き昔の人柱            不
64      伝へる術も今はブログに         栞  すべ
三ウ
65    あへてする告白炎上期してをり        私
66      時に汚名も売名となる          〃
67    上げ下げはムードで変はるマスメディア    〃
67    ロックスタードラッグの沼玻璃の蓮  夏   夢
68      うつけ者こそ覇王の乱世         夢  両句に
69    創造に必要なのは非常識           私
70      グラスの底に顔よあれかし        不
71    二丁目に河岸を変へたか人相見        ね
72      おねえ口調は処世術なり         私
73    ACのリフレインには愛想尽き        栞
74      カフェdeブレイク気分さはやか 秋   私
75    はじかみの鮮烈にして秋の鯖     秋   夢
76      柿の一葉を添える去来忌     秋   栞
77    風そばふ嵯峨のまほらの花紅葉    秋花  私 
77    面影や仕舞ひも出来ぬ花灯籠     秋花  夢
78      消せぬ炎のいと浅ましき     恋   夢  ほむら 両句に
ナオ
79    我が魂を結び留めむ君いづこ     恋   ね
80      祈れば来たるものならなくに       郎
81    みちのくのしのぶるたみにさちよあれ     私
82      ラピスラズリの夕闇の下         栞
83    工房に絵の具をつくる音しきり        不
84      身を粉に砕く様のうつくし        私
85    香味触フリーズドライで進化して       夢  こうみそく
86      軽さの価値を思ひ知る山         私
87    朝寒に師僧笑って震へをり      秋   ふ
88      敗荷といふ美学もありて     秋   ね  やれはす
89    名月の酒に飛び出すアート論     秋月  私
89    夜も更けて猪口に映るは後の月    秋月  栞
90      飲み干したればしばし去れ友       不  両句に
91    ひもとけば古今の知己のそこにあり      夢
92      頁のノドに紙魚が隠れる     夏   ふ
ナウ
93    暑がりにあはせ設定する温度     夏   私
94      ウルトラマンも弱る節電         栞
95    ヒーローになるもなれぬも時の運       郎
96      ただひたすらに追ひかける夢       不
97    帰郷する球児の頬に花の風      春花  夢
98      斑雪は吉と出でし山肌      春   私  はだれ
99    げんげ田に農作業車を走らせて    春   ふ
100挙句   春祭り待つ友ら楽しも      春   ね

縦書き版 by ふないさん

                            定座なし
                           __________
 初折表 12345678       (1〜8)   花一つ、月一〜二つ
 初折裏 12345678901234 (9〜22) __________
 二折表 12345678901234 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
 二折裏 12345678901234 (37〜50)__________
 三折表 12345678901234 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
 三折裏 12345678901234 (65〜78)__________
 名残表 12345678901234 (79〜92) 花一つ、月一つ
 名残裏 12345678       (93〜100)_________

式目  
正風芭蕉流準拠十カ条 
転記用:http://zrenga.ya-gasuri.com/
写真提供はフォト蔵さん

 

2011年4月9日土曜日


前句    橋のたもとに狂女舞ふゆめ  ね子
付句  新作は無意識下にて想を練り   私

  新作は無意識下にて想を練り橋のたもとに狂女舞ふゆめ
  
狂女が出てくる能の『隅(角)田川』の作者、観世十郎元雅の場合はどうだったか。

参考:「能役者による新作能-創作の内側-」
    この論文に出てくる宮沢賢治研究の大御所は、お隣りの旦那さん。

写真は借用:http://is.gd/BFM7TB

2011年4月7日木曜日


前句  レシピには載せぬ秘伝のありぬべし
付句    宋朝青磁のあをの復元                

  レシピには載せぬ秘伝のありぬべし宋朝青磁のあをの復元
               
(釉薬の調合、レシピを試行錯誤で工夫して復元不可能と言われた宋朝青磁の復元に成功した日本人の陶芸家がいる。)


写真は借用:http://www2.ttcn.ne.jp/~cyouei/sub3.htm

2011年4月4日月曜日


         極東の終着駅 ウラジオストック


  前句  有明にシベリア鉄道驀進す    リュウ
  付句    VISAは逃避の命なりけり 私

    有明にシベリア鉄道驀進すVISAは逃避の命なりけり 
               [日本のシンドラー、命のビザ]


写真は借用:http://oasis.halfmoon.jp/extphoto/russia1_main.html

2011年4月2日土曜日

李下不正冠


  
   古楽府「君子行」

君子防未然  君子は未然に防ぎ、
不處嫌疑間  嫌疑の間に処せず。
瓜田不納履  瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず、
李下不正冠  李下に冠(かんむり)を正さず。

(以下略)

 李下【りか】すももの木の下


写真提供はフォト蔵さん


 前句    気づけば空のいろ移りけむ
 付句  病院も旅のすみかと思ひなす

   病院も旅のすみかと思ひなす気づけば空のいろ移りけむ


写真提供はフォト蔵さん

2011年3月21日月曜日


 前句  多様なるひとの違ひを受け入れむ
 付句    地球まるごと人類の舟

   多様なるひとの違ひを受け入れむ地球まるごと人類の舟


写真は借用:http://www.h2.dion.ne.jp/~apo.2012/chikyu17.htm

百韻『椿市の』巻



         百韻『椿市の』巻
                         2011.3.2〜3.21
 1 発句 椿市の乙女の名さへ忘れけり        春  草栞
 2 脇   かすむ思ひ出たどり大和路        春  私
 3 第三 亀の鳴く聲に呼ばるる心地して       春  郎女
 4     雨戸開ければ静かなる庭            不夜
 5    羽目板の狭間に細き日の光            ふない
 6     硯の蓋に埃積もれる              栞
 7    まどろめば月影うごく文机         秋月 不夜
 8     利き酒セットでかほど酔ふとは      秋  私

 9    新蕎麦を振る舞はんとて二人連れ      秋  ふない
10     美術の秋もにはか蘊蓄          秋  私
11    絵心のあれば惹かれる恋心         恋  栞
12     思ひつめては見えぬ現実         恋  不夜
13    君がため幾度ハイウェイ走りしか      恋  郎女
14     都市間バスの集ふ駅前             ふない
15    錦なき身では故郷に帰れない           私
16     無駄な意地だとひとは言ふけど         私
17    禁煙と称して電子タバコ吸ふ           不夜
18     啓蟄なればそつと這ひ出し        春  栞
19    校舎裏ひとり始業の鐘朧          春  朧月夢
19    おにぎりを貰ひ早立ち遍路宿        春  私
20     花の香りの消え切らぬうち        春花 ふない (両句に)
21    清らかにほゝゑむナースに幸ぞあれ        私
22     ノルマ厭はず身を尽くすとや          栞
二オ
23    シベリアの日々をおもへば易きこと        郎女
24     家の中でもダウン着てゐる        冬  私
25    見てはだめ私が機を織るところ          夢
26     銀河を渡るその日来るまで        秋  不夜
27    いく度の荒波越えて望くだり        秋月 栞
28     欠けたる碗で里芋を食ふ         秋  ふない
29    すれ違ふ虫の垂れ衣艶かし         恋  夢
30     手加減せずに腹つねる妻         恋  私
31    阿も吽も知り尽くしたる間柄        恋  不夜
32     相棒あつての事件解決             栞
33    納涼舟粋でいなせな江戸の宵        夏  夢   すずみぶね
34     音なく花火の上がる遠ち方        夏花 私   をちかた
35    つれづれに刺し子をしつゝ見やる窓        郎女
36     うつれる顔に母のおもかげ           私
二ウ
37    ハネムーン葉書一枚寄越しけり          ふない
38     嫦娥つれなく弓も届かず         秋月恋 夢
39    晩稲刈る野良の娘に惚れ直し        秋恋 栞
40     色草の身の遊女儚し           秋恋 夢
41    こころまでは売らぬ矜持を保ち生き        私
42     古老に似たりサーカスの象           ふない
43    万物の長と言ふこそ驕りなれ           私
44     流転の末に忍び寄る危機            栞
45    悠然とけふも乞食山頭火             不夜  こつじき
46     旧街道の辻を横切る              ふない
47    囀りの影羽ばたきて春障子         春  夢
48     吾児が仕切りの雛のまゝごと       春  私   あこ
49    降り積もるブルーシートの桜蕊       春  不夜  しべ
50     水泡の筏消えつ結びつ             夢   みなわ
三オ
51    瀬を早み岩によどめる恋の川        恋  私
52     また逢ふ日まで契り守りて        恋  栞
53    遠ざかるバスの後席夏帽子         夏  不夜
54     二重の虹のトンネルに入る        夏  郎女
55    開演のブザー響きて宝塚             夢
56     トーン下がれどやまぬざわめき         私
57    こつこつと襖仕切を指で打つ        冬  ふない
58     時間稼ぎに生姜湯を出し         冬  栞
59    図書館で日暮らす主に電話して          私
60     実家へ帰る旨を告げたり            不夜
60     あはれ知る身のかなかなの声       秋  夢
61    延べ段に小花こぼるゝ萩の寺        秋  私  (両句に)
62     さやけき月の宿と為さんや        秋月 郎女
63    茸籠は逝きし嫗の形見にて         秋  栞
64     軍手を嵌めて山に踏み込む           ふない
三ウ
65    末黒野の春の息吹を信じつつ        春  夢   すぐろの
66     東風吹く中を犬と遊ばむ         春  不夜
67    宴飽きてくゞる小袖の花の幕        春花 私
68     ふと我にのみつき纏ふ虻         春  私
69    もそつとで痒い所に手の届き           栞
70     金が梯子の吉原天守              夢
71    猪牙舟にけふも其角の姿あり           不夜  ちょきぶね
72     ふる傷痛しあすは雨かも            私
73    病室で父方の祖父笑ひけり            ふない
74     家業を継ぐと方便のうそ            私
75    無心には殺し文句を用意して           私
76     顔を洗つて出直す覚悟             栞
77    ふつか酔ひ頭かゝえる昼寝覚め       夏  郎女
78     糸瓜の花の上に飛行機          夏  ふない
名オ
79    陽炎の線路遥かに無人駅          春  夢  かぎろひ
80     はや春月の出づる山の端         春月 不夜
81    掌にすれば福来たるらし落し角       春  栞
82     玉藻妲己も我が虜にて          恋  夢
83    ラブゲーム本気にさせてそつと逃げ     恋  私
84     得がたいものは永遠のときめき         私
85    印象の光に溶ける海と舟             夢
86     題名のない曲の愉しみ             栞
87    人生は変転やまぬストーリー           私
88     終の棲家は雪積む里か          冬  不夜
89    楼台の灯り眺めつ寒施行          冬  栞
90     ふと花の香の溢つ暗闇に         春花 夢
91    こころあてに待てば夢見の春の夜半     春恋 私
92     お伊勢参りの草紙ひもとく        春  ふない
名ウ
93    リフレッシュ休暇もらへど素寒貧         私
94     煩悩だけは無尽蔵なり             栞
95    我が住むは資源少なき秋津島           不夜
96     見飽きつることなき富士の山          郎女
97    折々の襲の色目麗しく              夢
98     温度分布に一喜一憂              栞
99    多様なるひとの違ひを受け入れむ         私
100挙句  幸くとばかりともに唄ひて           郎女  さきく
  

2011年3月19日土曜日

べた

 前句    終の棲家は雪積む里か    冬  *
 付句  木枯しに不住の決意ゆらぐ老い  冬

   木枯しに不住の決意ゆらぐ老い終の棲家は雪積む里か

  *これがまあつひの栖か雪五尺  一茶
   死ぬ山を目利しておく時雨哉  一茶  

 前句    得がたいものは永遠のときめき
 付句   水準を落としどうにか足るを知る

   水準を落としどうにか足るを知る得がたいものは永遠のときめき

2011年2月18日金曜日

百韻『鴛鴦や』の巻


      百韻『鴛鴦や』の巻
                    2011.1.21〜2.18

1 発句 鴛鴦や川面を撫でる明けの色     冬  郎女
2 脇   陽あたり側に笑まふ早梅      冬  私
3 第三 とり出だす句帳はいまだ白紙にて      不夜
4     ポットで淹れる煎茶一服         草栞
5    あれこれとまんじゅう試食ほぼ手ぶら    私
6     ケチケチ・ツアーはせこさ慣らしむ    私
7    検索の労を厭はず月の宿       秋月 不夜
8     柞紅葉にかかる湯けむり      秋  私  (ははそ)

9    ボジョレーを楽しみにして風呂上がり 秋  郎女
10    髪かきあげる君はセクシー     恋  私
11   天才の描く女神に一目惚れ      恋  栞
12    こころ浮わつく彼に肘鉄      恋  郎女
13   大南風走り出したら止まらない    夏  不夜 (おおみなみ)
14    グランドに水を撒く一年坊     夏  ふない
15   信ずべしおのが無限の可能性        私
16    賞受けたるは通過点にて         栞
17   あへぎつつペダルを漕いで峠越え      私
18    雪消しずくに喉をうるほす     春  不夜
19   月の出もいつとは知れず花朧     春花月 栞
20    きーこきーことふらここが鳴る   春  私
21   メーデーの行列すぎて人まばら    春  不夜
22    独身寮に届く絵手紙           郎女
二オ
23   ざらざらと洗ふた箸の乾く頃        ふない
24    そば屋の夕の仕込み始まる        私
24    エコの参加はリサイクルから       私
25   天ぷらの揚げ油にもこだわりを       郎女 両句に
26    手抜きをしないプロとアマの差      私
27   入念にからだほぐしていざ本番       不夜
28    寒声高く洩れ聴こえたる      冬  栞
29   マフラーを忘れて戻る細き路地    冬  ふない
30    作家志望の彼は太宰似       恋  私
31   女生徒の淡き想ひに気がつかぬ    恋  郎女
32    実習期間済めば去る人       恋  不夜
33   ”農業の体験”実は嫁募集          私
34    休耕田で吠える柴犬            ふない
35   夕月に出で来る鹿の光る目見     秋月 私 (まみ)
36    獣舎の掃除終へてやや寒      秋  不夜
二ウ
37   揃ひ踏み時代祭のエキストラ     秋  栞
38    差し入れられた兵糧を食ふ        ふない
39   奉仕とは清々しきや道普請         私
40    大師の指図響く夏空        夏  不夜
41   水喧嘩いつのまにやら鎮まりて    夏  郎女
42    明けは撤回戻り梅雨とか      夏  私
43   メンバーもファンもやきもきカラ騒ぎ    栞
44    ツイッターには謎のつぶやき       不夜
45   どこまでをまこととするや万愚節   春  郎女
46    往く手遥かに蜃気楼立ち      春  栞
47   啄木忌海峡の町墓地の坂       春  ふない
48    たちまち髪をみだす春風      春  私
49   指名にてマイクを握る花の宴     春花 不夜
50    紙のコップに佳き酒を注ぐ        ふない
三オ
51   軒先に杉玉青し蔵開き           私
52    ネットショップへ増ゆるアクセス     不夜
53   大道の声懐かしや叩き売り         栞
54    ついふらふらと釣られさうなり      私
55   相席は苦み走った好い男          不夜
56    ニッカボッカの鳶職の群         ふない
57   外人の目にはクールと映るらし       私
58    屋根の間に覗く初富士       新年 栞
59   武蔵野の台地が河に果つところ       ふない
60    百万都市へと治水埋め立て        私
61   絶えんとす動植物の種のあはれ       不夜
62    さてもクニマス発見あっぱれ       私
63   仰天のセレンディピティなればこそ     栞
64    偶然はみな摂理なるらん         私
三ウ
65   逍遙のアリストテレス深き皺        不夜
66    アテネの庭に不穏なる風         郎女
67   かはらけを投げて厄除したくなり      栞
68    湖に舟出す黄昏の頃           不夜
69   寒鮒を漁る網の生臭さ        冬  ふない(すなどる)
70    粕汁をもて君を待ちをり      冬恋 郎女
71   誰がためにみがくや白き泥大根    冬恋 私
72    黒のタイツに悩殺されて      恋  栞
73   われを厭ふ娘に媚びて宝塚         私
74    冷めたる体で買ふ乙女餅         ふない
75   おぼろ月旅は帰りの虚しかり     春月 私
76    別れを告げる引鳥の群れ      春  栞
77   この花をユーラシアにて眺めむと   春花 ふない
78    桜の苗木を贈り交流        春  私
名オ
79   友情は文化の垣根越ゆるもの        不夜
80    ひらがな書きのメール行き交う      ふない
81   誤変換の指摘合戦疲れ出て         私
82    目頭押せば暑さくらくら      夏  不夜
83   クーラーに頼らぬ主義と強がりて   夏  郎女
84    頬ふくらませ瓜を食ひたり     夏  私
85   勧められ片腹痛し居候           栞
86    身分違ひでのれぬ縁談          私
87   三畳の応接室に栗羊羹        秋  ふない
88    色なき風の忍び込む窓       秋  不夜
89   有明に去りにしひとの残り香に    秋月恋 私
90    悲しき天使聴きて泣き濡れ     恋  栞
91   根拠なく自信と夢に満ちし日々       私
92    人を傷つけ人に傷つき          不夜
名ウ
93   荒野行けば夜毎けものの声を聞く      ふない
94    孤独はきつと成長の糧          私
95   ファイバーに光一筋通るまで        栞
96    暗中模索も無駄でなかりき        私
97   雪どけに一息つきて交わす笑み    春  郎女
98    浮かるるごとく蝶も舞ひ出づ    春  不夜
99   花咲けば人の賑はふ城跡に      春花 ふない
100   余韻はかなき弥生狂言       春  栞


写真提供はフォト蔵さん