2008年11月12日水曜日

歌仙『秋に立つ』


                     
発句  秋に立つ旅さへあては吉野山  春蘭
脇    月をめざして山越ゆる雁    百
第三  刈田面隠者の影の揺れるらむ   合
 四   拾ふ落穂に袂ふくるる     蘭
 五  年木樵蓑笠つけて枝払ひ     百
 六   暮れた苫屋にしばし宿借り   合
ウ一  美麗なる武者絵に精魂かたむけて 蘭 
 二   滝修行せし清めたる身を    百
 三  雨乞ひのあやしき呪文口籠り   蘭
 四   小松を植ゑて記念にしたる   合
 五  まぼろしの兜跋国をば探しゆく  百
 六   思ひがけなく出遭ふ緑泉    蘭
 七  忍ぶれど墨染めの身の色香まし  百
 八   未練がましき蝉のこゑかな   蘭
 九  蚊遣火の子を寝かしたる月を待ち 合
 十   秘蔵の古酒をそそぐ古伊万里  蘭
十一  花陰の世捨て人にも笑ひ声    百
十二   髪に小手毬風にこぼれて    合
ナ一  安曇野に光あふるゝ春の水    蘭
 二   開山遠忌幡翻る        百
 三  早暁に般若心経書き終へて    蘭
 四   乳しぼるままこぼるる涙    合
 五  弓張に来世も共と誓ひ合ふ    蘭
 六   一夜限りの月下美人待ち    合
 七  深き野をはるばる鞍に露分けて  蘭
 八   虚空のぞめば燃える水煙    〃
 九  音もせぬ猫の隠れ家タマイブキ  合
 十   軽口ほどに溶ける初雪     〃
十一  是非もなく神籤で決まる社守   蘭
十二   綴れを纏い墨磨る夜は     合
ウ一  こし方を思ひ物狂ほしくなり   蘭
 二   魂うらぬ身こそ誉れぞ     〃
 三  われこそは源氏の君の血筋ぞと  百
 四   衣香匂へる舞ひのうつくし   蘭
 五  掉させど流れの速き花筏     合
挙句   同行二人春の虹たつ      百

      2008.10.27〜2008.11.12

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