2011年12月18日日曜日

【歳暮三つ物】

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    聖樹の満ちて光る街筋    私
3  忘年会ビンゴで1等ゲットして  私

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    傘はいらないほどの初雪   私
3  旧市街羽子板市で賑はひて    ね子

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    煤払の手止むる着メロ    ね子
3  冬休みお駄賃で子は動くらん   私

1  君のこと幾つ記すや日記 買ふ   風牙
2     煤払の手止むる着メロ    ね子
3  レコード屋エアーで指揮す第九にて 風牙

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    傘はいらないほどの初雪   私
3  クリスマス予約で埋まり席もなし 風牙

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    傘はいらないほどの初雪   私
3  晦日そば手繰りてくぐる藍のれん 私

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    聖樹の満ちて光る街筋    私
3  所得税年末となり戻るらん    風牙

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    煤払の手止むる着メロ    ね子
3  ボロ市で会おうと話がまとまつて 私

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    もしもに備へ貯めるボーナス 私
3  忘れたき上司の隣り年忘れ    ね子

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    冬至南瓜の炊くるキッチン   ね子
3  思はざる試練の年も暮れゆきて  私

1  君のこと幾つ記すや日記買ふ   風牙
2    冬至南瓜の炊くるキッチン  ね子 
3  年の内にいざ断ち切らん負の連鎖 私

2011年12月14日水曜日

百韻『葉を脱いで』の巻


at 杭全神社インターネット連歌

        百韻『葉を脱いで』の巻
                  2011.11.5~12.15

発句・冬   葉を脱いで冬日よびこむ林かな     佐為 景
脇・冬      鵠が掛けし霜の帷子        浜菅 景
第三・冬   水烟る湖に捨舟うらみせて       涅阿 景
4        をちこち糸を垂らす釣人      佐為 景人
5・秋月   月あかり昼かとまがふ影法師      涅阿 景人
6・秋      よすがら庭にすだく虫の音     佐為 景
7・秋    野にやどる過客は露に濡れるらん    涅阿 旅
8        山をしるべのみちのはるけさ    佐為 旅

1      悠久の時をたゆまず大河ゆく      涅阿 景
2・春      雪間の草に春のおとづれ      佐為 景
3・春    来てみれば霞みの奥に不二見えて    涅阿 景人
4・春      城の甍に風光りけり        佐為 景
5      ふるさとは変はらぬままがありがたき  涅阿 懐旧
6・恋      初恋の人今もわが胸        正純 恋懐旧
7・恋    儚くもをさなきどちの契りにて     佐為 恋懐旧
8・秋      おもひで溢れ出づる秋風      涅阿 懐旧 
9・秋月   くもりなき月はこころを映すらん    佐為 景人
10・秋     寝るさへ惜しき夜の菊の香     涅阿 人
11     神仏の幽かな波動身に感じ       佐為 神祇釈教
12       わびすむ庵も御殿とぞなる     涅阿 無常
13・春花  もゝちどり深山に花の咲き初めて    佐為 景
14・春     帰へさ小川に根芹摘みをり     涅阿 景人
二オ
1・春恋   片もひの君すむ方は遠がすみ      佐為 恋
2・恋      なしのつぶてのふみのむなしき   涅阿 恋
3      夢やぶれ帰国と友のうわさ聞く     佐為 無常
4        むしろ憂きものひとのなぐさめ   涅阿 無常
5      詮ずれば苦労ばなしも自慢なり     佐為 懐旧
6・冬      更けて音なく積もる初雪      涅阿 景
7・冬    つぎつぎとなき人浮かぶ小夜時雨    佐為 景人
8        濡るる蓑笠縋るひとすぢ      稔  旅         
9      庵住に飽きては出づる旅ごろも     涅阿 旅
10・春花    花追ひ人の性もかなしや      佐為 人
11・春月  玉盈(たまもひ)に映る月かげ朧なる  稔  景
12・春     たどればあやし春の夜の夢     涅阿 人
13     極楽も地獄もおのが心にて       佐為 無常
14       ありのすさびの糸竹のみち     稔  人
二ウ  
1      流されし身に情け染む須磨明石     涅阿 無常
2・恋      藻塩のけぶりなびく浦風      佐為 恋
3・恋    わりなくも縁を断つや迎船       稔  恋
4        日々孝行はすべきものかな     涅阿 懐旧
5・秋    雁さへもひととせ一度かへる里     佐為 景
6・秋      さらぬだにしむ秋の夕風      稔  景人
7・秋月   弓張のいづれ満つらん酒の酔ひ     涅阿 景人
8・秋      虫のこゑにもあるや序破急     佐為 景
9      ここと知る御代つかの間の都跡     稔  無常
10       四方の田面を吹きわたる風     涅阿 景 
11     ゆるぎなき山の姿に気が晴れて     佐為 景人
12・春     空はのどかに春あさぼらけ     稔  景
13・春   桜こそ造化の神の佳作なれ       涅阿 景神祇
14・春     無心に蜜をあつめ飛ぶ蜂      佐為 景
三オ
1・恋    一刺しに相対死にとすがる恋      稔  恋
2・恋      よよと涙に濡るるきぬぎぬ     涅阿 恋
3      なきつまのおもかげ追へば夢うつつ   佐為 無常懐旧 
4・夏      なにを名告るややまほととぎす   稔  景
5・夏    ゆくりなく門を出づれば青時雨     涅阿 景人
6        霑(しほ)れし野仏の笑みはかはらず 佐為 景釈教
7      あらましのいまはつきぬる老いの身に  稔  無常
8・冬      なほつれなくも止まぬ木枯らし   涅阿 景
9・冬    あかあかとともる家の灯冴ゆる夕    佐為 景
10・冬月    繊月寒く出づる山の端       稔  景
11     世に古るもまなこ冷まじ阿吽像     涅阿 釈教  
12       托鉢終へし僧あどけなき      佐為 釈教
13・恋   手習子寺小屋帰りふと見染め      稔  恋
14・恋     おもひたくさんひらがなのふみ   涅阿 恋
三ウ
1      英雄になれど息子は異国にて      佐為 人
2        母の「いしよのたのみ」胸うつ   稔  人
3      たはれをを悔いて四十路で身を固め   涅阿 人
4・春      かすみの晴れて見えし道筋     佐為 景人
5・春花   吹く東風もそふるめでたき花の宴    稔  景人
6・春      ひと差し舞へば和すや鴬      涅阿 景人
7      こゝろみに引いた神籤に吉が出て    佐為 神祇    
8        舫ひ綱解き漕ぎ出す岸辺      稔  景人
9      旅に死す覚悟はとうに隅田川      涅阿 旅無常
10       おもへば遠き空よ陸奥       佐為 旅無常
11・秋月  のがれたる一本松を月照らす      稔  無常景
12・秋     末枯れし野をつつむ夕闇      涅阿 景
13・秋恋  来ぬ人を待つはむなしき虫の声     佐為 恋
14・恋     かずにあまれる身のおもひ憂し   稔  恋
名オ
1・恋    妻の座を奪ひ盗らんやみだれ髪     涅阿 恋
2        すずしき顔で道を説くきみ     佐為 人
3      さればいざさなむかくなむ分けてみよ  稔  人    
4        十中八九もめるさうぞく      涅阿 人
5      ひとはみな修羅にもなれば仏にも    佐為 釈教
6・冬      塔の上なる冴ゆる寒星       稔  景
7・冬    あやぶみし年越できるありがたさ    涅阿 人    
8・冬      ふうとため息浸かる柚子の湯    佐為 景人
9      刺青もともに老いたり鯔背肌      稔  人
10・夏     軒端をかりてしのぐ夕立      涅阿 景人        
11・夏   つばめの子みなそつくりの口あけて   佐為 景 
12・夏     夕べ門田をわたる涼風       稔  景
13・秋月  ひんがしの山際あかり月出づる     涅阿 景
14・秋     祈りおのづと五山送り火      佐為 景人釈教
名ウ
1・秋    鉦叩一院の闇深きより         稔  景釈教
2        そろりと歩む雨後の延段      涅阿 景人
3      能の舞急にわからぬ面白さ       佐為 景人
4        眉白妙の翁出でまし        稔  景人
5      神さぶる千代の松が枝苔むして     涅阿 景
6・春      清き社に満つる春光        佐為 景
7・春花   花の下ほどはとはれぬ連歌の座     涅阿 景人
挙句・春     善男善女を撫づる軟東風      佐為 景人

第三千句 第四百韻『冬耕や』の巻



         百韻『冬耕や』の巻
                  2011.12.1~12.15
        
発句   冬耕や明日を信じる鍬の音      冬  禾
脇      天を仰げばかかる風花      冬  私
第三   寒稽古裸身のままに続きゐて     冬  風牙
4      奥の座敷に御膳整ふ          氷心
5    美しき裾捌きして割烹着          ね子
6      撫子残る里の夕暮        秋  草栞
7    ゆふがほの実にも月光とどくらん   秋月 私
8      鍵盤奔るリズムすさまじ     秋  莉由

9    洋館の出窓に見ゆるトウシューズ      牙
10     スリーサイズを思ふあれこれ   恋  由
11   横たはる着衣の美女を透視せん    恋  栞
12     予言の書などあるかも知れず      ね
13   大伯父の遺産分与にあづかつて       私
14     はたた神来て下ろす鉄槌     夏  由
15   山盛りのかき氷食ふ海の家      夏  心
16     過去の自分を子に見ては笑む      私
17   ぬばたまのダースベイダー広き背な     ね
18     月読男眼を剥いてゐる      秋月 由
19   残暑とて疲れしらずの仁王像     秋  牙
20     ちゃんこに入れる鰹椎茸     秋  心
21   アラフォーもアラ古希も居て花の笑  春花 由
22     陽はうららかに吟行の会     春  私
二オ
23   うぐひすも北鎌倉の寺めぐり     春  〃
23   声聞けど姿解らぬ百千鳥       春  栞
24     鞄の底で鳴りしケータイ        牙 両句に
25   マニュアルで誘ふアンタはA型か   恋  由
26     スカイツリーはデートスポット  恋  心
27   シルバーの物見高さは年季入り       私
28     野次馬ならぬ辻講釈師         栞
29   たまさかに心改め社会鍋       冬  由
30     卍固めを観る大晦日       冬  牙
31   鬼嫁にボーナス減がつひにバレ    冬  私
32     ウォール街のデモに加はる       ね
33   馬上には写真映えするユニフォーム     氷
34     無印といふブランドもあり       由
35   画用紙に余白残して筆置きぬ        栞
36     処世術にもぼかしあるらん       私
二ウ
37   やうやくに出てきた月のおぼろにて  春月 禾
38     いまだ区別のつかぬ毒芹     春  牙
39   弦楽を運ぶ優しさ桜南風       春  由
40     アンダンテよりなほゆつくりと     栞
41   いつまでも幼なじみでゐられずに   恋  牙
42     その気があるか使ふ当て馬    恋  私
43   合コンのメンバー揃へ出陣す     恋  ね
44     睥睨してる寒猿のボス      冬  由
45   湯煙に顔も赤らむ雪見酒       冬  栞
46     至福に忘る医者の警告         私
47   借金は泥酔しても纏ひつく         空秋
47   この頃は短いものに巻かれます       由
48     一家総出で入学式へ       春  私
49   眩しさが際立つてゐる花の顔     春花 心
50     カメラの前を黄蝶白蝶      春  由
三オ
51   夕方のニュースにチラリ自慢して      牙
52     鮮度が勝負旬の先取り         栞
53   トレーサビリティー舌を噛みつつ辞書編纂  禾
54     疑惑のにほふ彼のやさしさ    恋  私
55   野球部の寮の前にて抱き寄せる    恋  牙
56     青梅の実も熟す機を待つ     夏  ね
57   五月雨を托鉢に出る修行僧      夏  私
58     翁の泉もとくとくと湧き     夏  栞
59   連句して想像力が活性化          私
60     凍る嫦娥は頬を赤らめ      冬月 由
61   いちゃいちゃとダウンコートのバカップル 冬 私
62     いつ踏み外す時雨る畦道     冬  ね
62     無頼の日々は遥か遠くに        空
62     命みじかし燃えろよペチカ    冬  禾
63   漂泊の詩人駆けるやボヘミアン       栞 全句に
64     誘ふがごとく匂ふアブサン       牙
三ウ
65   魂を美神に抜かれぬやうにせよ    恋  私
66     今宵はありや殿のお渡り     恋  由
67   雨しづく花の蕾はふくらみぬ     春花 私
68     はじける肢体駆ける春の野    春  空
69   立ち漕ぎのふららこ競ひ飛び立たん  春  牙
70     盗み酒する留守番のババ        由
71   公平に親の面倒持ち回り          私
72     ここで三泊かしこで五泊        由
73   旅行記と何やら違ふ事ばかり        牙
74     脆くも滅ぶ天空の城          栞
75   松籟にいにしへしのぶ十三夜     秋月 私
76     言の葉くべん風炉も名残か    秋  禾
77   鯊日和父の威厳を取り戻す      秋  ね
78     何が何やら絡む配線          牙
名オ
79   絆とふ一字で〆てよいものか        禾
80     署名印鑑すべて御破算         空
81   解き放つ心のままにひとと逢ふ    恋  由
82     思はせぶりに帯をゆるめて    恋  栞
83   懺悔録伏せ字あれこれ妄想し        由
84     はつと気づけば電車乗越        私
85   遠き目の少年を見る神無月      冬  ね
86     エイトビートで降る冬の雨    冬  牙
87   ユーミンの歌詞あれこれと口ずさみ     栞
88     いくさの轍いまも続けり        由
89   武士やめて身を墨染めの草枕        私
90     智に働かず流されもせず        由
91   ようそろと池に漕ぎ出す月の舟    秋月 禾
92     管弦たまに和さずひやひや    秋  私
名ウ
93   文化祭わが子見直す溌剌さ      秋  私
94     血は争へぬ坊ちゃん気質        栞
95   骨の無い魚ばかりを食べてをり       牙
96     煮凝こそが究極の味       冬  禾
97   パスワード捨ててをみなは旅に出る     由
98     東風に誘はれそぞろなる日々   春  私
99   花の香を想ひ起せる葛干菓子     春花 栞
挙句     春星あかく幸せの降る      春  ね

                             定座なし
                           __________
 初折表 12345678       (1~8)   花一つ、月一~二つ
 初折裏 12345678901234 (9~22) __________
 二折表 12345678901234 (23~36) 花一つ、月一~二つ
 二折裏 12345678901234 (37~50)__________
 三折表 12345678901234 (51~64) 花一つ、月一~二つ
 三折裏 12345678901234 (65~78)__________
 名残表 12345678901234 (79~92) 花一つ、月一つ
 名残裏 12345678       (93~100)_________

式目  
正風芭蕉流準拠十カ条
投稿用 

写真提供はフォト蔵さん

2011年12月2日金曜日

本歌(本句)取りの連鎖

本歌 世にふるは苦しきものを槙の屋にやすくも過ぐる初時雨かな 二条院讃岐
  
   世々ふるもさらに時雨のやどり哉  後村上院
   世にふるもさらに時雨のやどりかな 宗祇
   世にふるもさらに宗祇のやどり哉  芭蕉

   世にふるもさらに時雨の山路かな  春蘭

付合

at 連句KUSARI

   70億人絆問われる       
 黙々と引っ越してゆく蟻の道
  
 年金と常に相談忘れずに   
   大向こうにて歌舞伎通ぶる 

   未読メールの数は三桁
 山籠りして変わりしは無精髭 
 
   泥鰌の顔をしみじみと見る  
 店構え客あしらいも味の内
   
   桜島まで駆け抜ける恋
 青春は無知が特権トライアル
  
 連れの者弘法大師と笠に書き
   無理はいかんと医者に止めらる
 
 青空のピーヒョロロとは鳶のはず
   這いつくばって庭の草取り
  
   私を拒む細い指先     
 触れもみで道説くきみは君子にて 没
    
 国宝と言われる程の技を持ち  
   にらみが効かぬ息の夜遊び
 
 美しい青翳りゆくエーゲ海
   再会約す船上の恋
 
 約束は薄紅色の花の下
   あふるゝごとく流る大川

   鏡の中のおのれ見つめる
 てて親に姿ばかりか似た仕草
 
 孫バカの入学祝奮発し
   わが幸福度中ぐらいなり

   觀音菩薩描く御念珠   
 身軽にと旅の持ち物絞り込み
  
 これまでに泣かせた男数知れず  
   まことしやかにかたる身の上
  
 歓迎のフラは心の揺れのごと  
   格安ツアーで新婚の旅
  
 ☓4でとても幸せ子沢山     
   もらう手当はみな貯金する 没
 
 寝待月母美しく年重ね       
   聴き分けめでる庭の虫の音

   あれもこれもと僕は食べたい
 お酉さま熊手を買ったことはなし

 うす紅の芙蓉咲き初め夏さりぬ 
   やゝ静けさのもどる鎌倉
 
 巡回の省エネ奉行の靴が鳴る
   蒲団にもぐりながら勉強

 屋根で待つ臼の役割とどめさし
   ねんがら年中買える切り餅 没
 
 屋根で待つ臼の役割とどめさし 
   飛び石替えて茶事の演出

 クリスマスプロポーズありの予感して
   揺らぐこころよ彼は年下

   大漁歌うこぶし回して
 ありがたや山の恵みの茸汁

 フォトコンの締め切りまでの日を数え
   気を入れ直すコーヒーブレイク
 
   あれやこれやと選ぶ駅弁
 研修と視察は遊山と同義なり
 
 すぐ傍にある幸せと言う宝   
   黙ってお茶を淹れて出す妻
 
   あっという間に過ぎて行く春  
 千年の花のしずくに立ち濡れて
    
 紅葉寺書院のテープ声に張り     
   ライトアップに白む月影

   ライトアップに白む月影  
 めづらしや古妻寄り添ふミレナリオ 没
  
   山茶花通りにできた帽子屋   
 木枯らしにけふは任せん落ち葉掃き
 
   修行の辛さ報われる時    
 蕎麦通のやまい嵩じて鄙に店
    
 イケメンの笑顔につられ買い込んで 
   無理は承知の若作りする
    
   静かに流れる美しい歌       
 難ルート登頂果たしにぎり飯
    
 はらはらと黒髪に散る六つの花   
   まにまに萌える若菜摘む野べ 没
  
 空海が密教求め唐へ行く       
   帆は風はらみ離(さか)る島影 没
   
 朝になり熱い味噌汁頂いた   
   作り笑顔の友の新妻
    
   オンリーワンの教育の是非  
 幼児画がピカソに見える審美眼
 
 意外にもお祭り騒ぎの好きな彼   
   酒でチャックがゆるみ饒舌
     
   広すぎる部屋猫とくつろぐ 
 廃校を借りて工房兼ギャラリー

   断捨離された思い出の品     
 ゴミ漁りほくほく顔で父帰る
    
 国賭けて咸臨丸は洋上に     
   野にある臥龍今ぞ世に出よ
    
   ツケマぱちぱちネイルばっちり
 値踏みする視線はきつし場末バー 没

 一言に心をこめる年賀状     
   自虐気味なる俳句川柳
 
   自虐気味なる俳句川柳    
 ”無職”とは定年者には酷な名よ
  
   不況円高放射線量       
 賽銭は小銭のくせに多い願 
  
   突っ張り棒はパワー全開    
 押入れをクローゼットにプチ改修

   どっしりと立つ大黒柱
 落人の郷はしろがね雪見の湯

   カンマピリオド眼鏡光らせ     
 なにかしら天賦の才を誰も持つ  没 サンドイッチ付け
   ゴーストライター回顧録書く

   硯の海に浮かぶ花びら    
 一文字に念をいれつつ写経する

   紅いお盆にうさぎ饅頭       
 自己流で自作茶碗に茶を立てる   
   聞きもせぬのに語る蘊蓄    

   無い袖を振る巨大なカジノ
 香港のパックツアーはあわただし
   土産詰め込み鞄パンパン

   漂流の果て見えた島影
 仏道を求める国ははるかなり

   連句に興じ何も決まらず
 年用意口だけは出す亭主にて 没

 iPhoneジョブズに送るこの写真
   永遠に君を忘れないから

   なにもいらないが妻の口癖
 うつりゆく自然に合わせ生き暮らす 没

   なにもいらないが妻の口癖
 四十から齢を忘れたふりをする

   走るアンカー長い鉢巻き
 マドンナに何をやっても叶わない

   ジャンケンポンのゴミ出し係り
 何の日かまず確かめるカレンダー 

 冬籠家族の団欒なつかしく
   火鉢の網に餅のふくるる

 耳に残る異国の丘の歌遥か   
   およそ平和な御代を言祝ぐ

 ペンギンがうろうろ歩く動物園
   さっとカメラが砲列を敷く

 グルーミング邪魔なんだよと引っかかれ
   みなで取り合うママの懐

   目眩がしそうきみの曲線
 今夜こそプロポーズせんクリスマス
   後ろ手に持つ薔薇の花束    没

   雪は静かに駅に舞い降り
 おいそれと寄れぬ不義理のふるさとよ

   年賀状みなパソコンで打つ
 情報の伝達いまやメールが主

 情報の伝達いまやメールが主
   通勤電車だれもうつむく

   千差万別花の色さへ
 観ず嫌い次第にはまる宝塚

 観ず嫌い次第にはまる宝塚
   ダフ屋と間違えられてがっくり 没

   福寿草二輪にこやかに咲く
 負の連鎖いざ断ち切らん去年今年

 思っても思い届かぬもどかしさ
   義理チョコ装い付ける短文 没

 思っても思い届かぬもどかしさ
   女度胸でメール送信
 目安箱どぼん承知のご提案 没

   瞬いている数え日の星
 クリスマス別に普段と変わりなし

   リバーシブルの流行る政界
 団結は共通の敵倒すまで
   夫婦喧嘩を止めるゴキブリ 没

 一年の締めのレースに舞うお札
   背を丸くして駅までの道
 ほほえましパパを見送る乳母車

   浴衣姿は僕だけのもの
 アマゾネス団体の旅温泉場
   カラオケ半ば合唱となる

 懐かしの歌声喫茶店じまい
   壁に絡まりもみぢする蔦

   両手に受ける青き滴り
 頂きを仰げば遠し雲の峰

 いそいそと打ち掛けのままお床入り
   白黒つかぬ囲碁の熱戦

 あの人は何年たっても恋敵
   夫に色目を遣うめぎつね

 飛行機が轟音の中ランディング
   逢えぬからこそつのる遠恋

 百人の友だちできて大世界
   日々のブログにし合うコメント

   明日への糧は悲しみと笑み 
 上積みは最後と会社見限って

 初夢が見たくて二度寝してしまい
   駅伝すでにレース終盤

   今年はなんとかメタボ克服
 神仏は己が決意を伝える場

   油断されるな軽い春風邪 
 あわゆきの野辺に草つむ乙女らよ

   今日はツイてるまたも確変
 アンカーはおかま走りで区間2位 没

   疲れるばかり父の連休
 モールにて待てど戻らぬ女ども