2007年12月5日水曜日

能勢朝次『聯句と連歌』

能勢朝次『聯句と連歌』より

「鎖連歌の第三句は、第一句と第二句とによって作られている世界とは、別の境地を、第二句と第三句とによって作りあげるように構想しなければ、新しい展開の味は出で難いことになる。例を、『続世継』巻八の連歌にとって見ると、

  奈良のみやこを思ひこそやれ    藤原公教
  八重ざくら秋のもみぢやいかならむ 源有仁
  しぐるるたびに色やかさなる    越後乳母

という三句の連歌に於ては、これを解きほぐせば

  八重ざくら秋のもみぢやいかならむ奈良のみやこを思ひこそやれ

という歌と

  八重ざくら秋のもみぢやいかならむしぐるるたびに色やかさなる  

という歌とが成り立ち得るようになっている。即ち、八重ざくらという五七五の句は共通であるが、その二つの歌は明らかに違った意境を表現している。ここにくさり連歌としての展開性があるのである。」(p91-92)

  注:この本で「聯句」とは、中国発の漢詩句を連ねる形式を指している。

うはづら文庫:能勢朝次『聯句と連歌』
      :潁原退蔵『俳諧史』

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