能勢朝次『聯句と連歌』より
「鎖連歌の第三句は、第一句と第二句とによって作られている世界とは、別の境地を、第二句と第三句とによって作りあげるように構想しなければ、新しい展開の味は出で難いことになる。例を、『続世継』巻八の連歌にとって見ると、
奈良のみやこを思ひこそやれ 藤原公教
八重ざくら秋のもみぢやいかならむ 源有仁
しぐるるたびに色やかさなる 越後乳母
という三句の連歌に於ては、これを解きほぐせば
八重ざくら秋のもみぢやいかならむ奈良のみやこを思ひこそやれ
という歌と
八重ざくら秋のもみぢやいかならむしぐるるたびに色やかさなる
という歌とが成り立ち得るようになっている。即ち、八重ざくらという五七五の句は共通であるが、その二つの歌は明らかに違った意境を表現している。ここにくさり連歌としての展開性があるのである。」(p91-92)
注:この本で「聯句」とは、中国発の漢詩句を連ねる形式を指している。
うはづら文庫:能勢朝次『聯句と連歌』
:潁原退蔵『俳諧史』
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