2008年7月5日土曜日

「蛍獲て」百韻


  蛍獲て少年の指みどりなり       誓子
   河童でさうな村の夏川        春蘭    
  坂東太郎暴れ刀を振り上げて      青波
   髭を剃つたら意外美男子        蘭
  方言のこぼるるさまもご愛嬌       亮
   絵文字にはつか癒されてゐる     面白
  有明に霊感湧いて解読す         蘭
   虫売りの声聞きつつ眠る        波
ウ 目覚めては先ず一献に焼く秋刀魚     亮
   かひがひしさに身もぞ焦がるる     蘭
  十七の春をたすきで洗ひ張り       蘭
   記念日の今日摘むはサラダ菜      波
  野蒜食ふ僕はとつくにロハスだね     蘭
   シンプルが好き身辺整理        亮 
  向かふには一切合財もつてけず      蘭
   とげはあるけど薔薇は綺麗だ      波
  嫦娥出づ見なほすきみの初浴衣      蘭
   花火の音に近づける顔         波
  パレードにおとなも児らも夢心地     蘭
   明日の試験はいいさどうでも      波
  ニッポンのお城を飾る飛花落花      亮
   舞ひ込む蜂に沸ける婆沙羅座      蘭
二 野馬群れて小高い丘を疾走す       波
   眉くっきりとイザ戦さ場へ       亮
  マーメイド北京五輪は負けられぬ     波
   同じ条件かぎはメンタル        蘭
  息災に過ごす貴重な千羽鶴        亮
   イメージしようこの地球船       蘭
  緑あふれ大気あまやか我が故郷      波
   胡瓜トマトは山の朝採り        蘭
  腕白小僧よその畑で食べちらす      波
   服も体も泥で真つ黒          蘭
  祭りから帰ればみんないい女       波
   群れて愛らし桃色ペリカン       亮
  深閑として悠久の月の下         亮
   それよそれこそ宮城野の萩       蘭
ウ 虫々はこゑをかぎりと鳴いてをり     蘭
   我も負けずにコーリューブンゲン    波
  巻き舌のサザン休業なる話題       亮
   白け錆びたる浦の浜小屋        蘭
  波音を子守唄とし一眠り         波
   鳶が空からわれを見てゐる       蘭 
  謀られているやも知らぬノーテンキ    亮
   ピュアな思ひは人を動かす       蘭
  月天心貧しき町を通りけり    (蕪村)波
   からくれないに割れる実石榴      亮
  ちはやぶる神とも見えぬ竜田姫      蘭
   何を食べるか年をとらない       波
  薄墨の花はろばろと見上げおり      亮
   かすむや千代に雪の白山        蘭
三 田楽の味懐かしき峠茶屋         波
   ナナハン連ね老若男女         亮
  青春はこころに若さあるかぎり      蘭
   立って半畳寝て一畳    (織田信長)波
  わが城で茶漬けかけこみいざ出陣     蘭
   網タイツの脚どぶ板を踏み       亮
  破障子のぞく長屋の野郎ども       蘭
   えらい美人の嫁がきたらし       波
  かの子には一平がいたながい雨(時実新子)亮
   愛の地獄を越える大乗         蘭
  父母の星が見守る四川の子        波
   おなかいっぱい食べているやら     亮
  牡鹿啼く片山陰のゆふまぐれ       蘭
   配所の月に想う都を          波
ウ 栄転とだまされ来たる島の秋       蘭
   軒下を行く青大将           波
  きゃっとすがる君の重みを受けとめて   蘭
   上向き加減笑顔美し          波
  赤い道ゆけば群がるちまき売り      蘭
   自分を見つめ直す初旅         同
  鞄捨て杖一本で四国へと         波
   かつを漁師に海はゆりかご       蘭
  海神の吐息聞こえる月涼し        波
   昭和は遠くなりにけらしも       蘭
  反戦の思想封印された時         波
   ひそかに流行るリリーマルレーン    亮
  花開き静かに眠る子を悼む        波
   風の光ればこころ鎮もる        亮
名 うぐひすにゆかしくなるや雑木山     蘭
   歴史の道にすみれ草咲く        波
  ここがその都の跡か燃ゆる野馬      蘭
   独りの時間独りの至福         亮
  写し彫る利休泪の竹茶杓         蘭
   雨の降る日は雨を見つめて       波
  ピストルを一発胸に受けて恋       亮
   親の縁談蹴って駆け落ち        蘭
  考えたどうせ行くなら地の果てへ     波
   砂漠のリビア・ビルがニョキニョキ   亮
  オアシスはひとそれぞれの憩ひの場    蘭
   二度と会えない人と会うかも      波
  月光にこころの底を覗かれて       亮
   閃光きらめき妖剣の露         蘭
ウ ほろほろと首が落ちるか秋の暮      波
   回転ドアはスコンと回る        亮
  頭越し子分は所詮らちのそと       蘭
   現世精進来世往生           波
  チンチラを抱いてざあます血統書     亮
   散歩にドレスとくと紅引く       蘭
  花見坂美男と美女の勢ぞろい       波
   のどかに過ぐる春昼の夢        亮

        首尾 2008.6.2〜7.5



写真提供はフォト蔵さん

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