2008年6月23日月曜日

猿蓑『梅若菜』もどき 


 

 猿蓑「梅若菜」もどき         猿蓑「梅若菜」
                    餞乙州東武行
梅若葉とろろを啜る老二人     修 梅若菜まりこの宿のとろゝ汁  芭蕉
 傘要らぬらし春の曙       狸  かさあたらしき春の曙    乙州
揚げ雲雀棚田三枚借り受けて    智 雲雀なく小田に土持比なれや  珍碩
 太巻たんと下されにけり     奴  しとき祝ふて下されにけり  素男
隣家から団欒漏れて暮の月     寅 片隅に虫歯かゝえて暮の月    州
 茶腹で厠近くなるあき      蘭  二階の客はたゝれたるあき   蕉
メタボなる鶉の姿見えもせず    光 ウ 放やるうづらの跡は見えもせず 男
 ドクターストップ力なき風    兔  稲の葉延の力なきかぜ     碩
煩悩を捨てずにこゆる古稀の坂   修 ほつしんの初にこゆる鈴鹿山   蕉
 内蔵助殿おおお蕎麦屋か     狸  内蔵頭かと呼声はたれ     州
卯の刻の湖岸に並ぶ釣りの馬鹿   奴 卯の刻の箕手に並ぶ小西方    碩
 松の根元で欠伸こらえて     寅  すみきる松のしづかなりけり  男
吟行の御隠居萩に苦吟され     蘭 萩の札すゝきの札によみなして  州
 百舌鳥の贄見てやおら矢立を   光  雀かたよる百舌鳥の一声   智月
平成の文武両道月読み男      兔 懐に手をあたゝむる秋の月   凡兆
 ニートになりて行方わからず   修  汐さだまらぬ外の海づら    州
吊革やステンにすがり花の朝    狸 鑓の柄に立すがりたる花のくれ 去来
 痰まきちらす蓬生の駅      奴  灰まきちらすからしなの跡   兆
競輪ですってんてんの春の日に   寅 ナ 春の日に仕舞てかへる経机  正秀
 種物乗らぬ饂飩立ち喰ひ     蘭  店屋物くふ供の手がはり    来
茶髪の子汗ぬぐいつつ走り来る   光 汗ぬぐひ端のしるしの紺の糸  半残
 間夫が逃げたぞ鶏小屋探せ    兔  わかれせはしき鶏の下    土芳
すきものが年甲斐もなき恋をして  修 大胆におもひくづれぬ恋をして  残
 腹筋すれば取所あり       狸  身はぬれ紙の取所なき     芳
押入れの月賦払いの健康具     奴 小刀の蛤刃なる細工ばこ     残
 猫と対話の大年の夜       寅  棚に火ともす大年の夜    園風
しのびつつ須磨ば都と明石けり   蘭 こゝもとはおもふ便も須磨の浦 猿雖
 手打ちしゃんしゃん良きに計らえ 光  むね打合せ着たるかたぎぬ   残
此夏も気にかかること温暖化    修 此夏もかなめをくゝる破扇    風
 車ねさせて月と歩いて      狸  醤油ねさせてしばし月見る   雖
第三の男と見ゆる隣かな      奴 ウ 咳声の隣はちかき縁づたひ    芳
 聞けば聞くほど謎の生立ち    寅  添へばそふほどこくめんな顔  風
身を隠し妻の織りける千羽織    蘭 形なき絵を習ひたる会津盆   嵐蘭
 明かりほのかに雪の降りける   光  うす雪かゝる竹の割下駄   史邦
花筏流れ行く先定まらず      修 花に又ことしのつれも定らず  野水
 ギター春風マイトガイ来る    狸  雛の袂を染るはるかぜ    羽紅

          2008.5.11〜6.22

写真:鞠子宿とろろ汁の丁子屋

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