■ 作法
正風芭蕉流準拠十カ条
1、二句で短歌になるように詠む。
俳諧は上下取り合わせて歌一首と心得べし。(芭蕉翁二十五箇条、支考)
2、一句単独で意味が通じること。短歌の詠み掛けのような句は詠まないこと。
3、二句で意味が通じること。これが付くということである。
4、三句の間で転じ変化していること。打越と同趣・同想にしないこと。
5、前句に付け過ぎないこと、ただし脇は除く。付け過ぎにならないよう、見立て替え、余情付け、疎句付けによる二句の転じも活用する。
去來曰。附句は附ざれば附句にあらず、附過るは病なり。蕉門の附句は前句の情を引來るを嫌ふ。ただ前句は是いかなる場、いかなる人と、其事・其位を能く見定め、前句をつきはなして附べし。(去来抄、去来)
前句にいひのこしてあるものから趣向を遠く句作を近く附くべし。(俳諧寂栞、白雄)
6、春秋3〜5句 5句去り、夏冬1〜3句 2句去り、花は折に一つ、月は面に一つだだし名残裏は除く。(貞享式海印録、曲斎)
7、同趣・同想のものはなるべく避け、詠む時は十分に離して詠む。この類いは芭蕉流準拠で臨機応変の沙汰。(貞享式海印録、去来抄、三冊子などから芭蕉翁の生の声、作品から総合的に判断)
差合の事は時宜にもよるべし。先ずは大方にて宜し。格は句よりはなるる也。はなるるにならひなし。(三冊子、土芳)
8、短歌として、語呂・リズムを損ないやすい、短句下七の四三は避ける。
結の句の七は必ず三四ならざるべからず。万葉には四三なるもの往々之あれども苟も重きを調べに置くを知りてよりこの方古今然り金葉然り。四三にすれば自然に耳立ちて諧調を得ず。(井上通泰)
9、付句で特に避けるべき作法
(1)前句の一部の言葉や言葉尻をとらえ、前句とはそれ以外関係のないことを詠む。結果、二句一連で支離滅裂、意味が通らない。しかもこれが芭蕉門の余情付け、匂い付けだと大いなる勘違いをしている。
(2)付け過ぎは初心者だと言われるので、はじめからまったく前句と関係のないことを詠みベテランのふりをする。無心所着歌、はいかい鉄砲は駄目。(去来抄、去来)
(3)前句に引きずられ単なる前句の説明、言い換え。前句の続き、これを昔から前句の噂(うわさ)、前句の断(ことはり)と呼び嫌う。(俳諧十論發蒙、支考)
10、心構え ー 連衆心
連句は、その一句としての価値を完全に発揮するためには、
・必ず前句を生かさなければならないこと、
・前句を生かすには、前句の中に潜在的にひそむところの余情的な世界に着目して、それを別趣の映像として発展させることによって、前句に新生命を与える手段が取られていること、
・その生かし得たものによって付句の作者は自己の作を創造し、これを発展させるものであること等が、おおよそに理解せられたかと思う。他を生かすことによってのみ自己が生き、自己が生きることは同時に他を生かすことであるという消息は、ここに明らかにみられるのである。(連句芸術の性格、能勢朝次)
人の付け方が自分の気に入らぬ時でも、それをそのままに受納してそうしてそれに付け方によって、その気に入らぬ句を気に入るように活かすことを考えるのが非常に張り合いのあることのように思われます。これはもちろん油臭い我の強いやり方ではありますが、そういう努力と闘争を続けることによって芭蕉の到達した処に近づくことができるのではないかという気もします。甚だ非凡なことではあるが適切にそういうことを感じましたから申し上げます。(寺田寅彦と連句、榊原忠彦)
■ 式目
【百韻】
初折表 123456月8 (1〜8)
初折裏 12345678月012花4 (9〜22)
二折表 123456789012月4 (23〜36)
二折裏 12345678月012花4 (37〜50)
三折表 123456789012月4 (51〜64)
三折裏 12345678月012花4 (65〜78)
名残表 123456789012月4 (79〜92)
名残裏 123456花8 (93〜100)
1、四花七月 花は折に一つ。月は面に一つ(名残裏除く)。定座は任意。
2、春秋は、三句から五句まで。五句去り。夏冬は、一句から三句まで。二句去り。
3、恋は、一句から五句まで。二句以上がベター。三句去り。
【千句における百韻】
初折表 12345678 (1〜8) 花一つ、月一〜二つ
初折裏 12345678901234 (9〜22) __________
二折表 12345678901234 (23〜36) 花一つ、月一〜二つ
二折裏 12345678901234 (37〜50)__________
三折表 12345678901234 (51〜64) 花一つ、月一〜二つ
三折裏 12345678901234 (65〜78)__________
名残表 12345678901234 (79〜92) 花一つ、月一つ
名残裏 12345678 (93〜100)_________
1、千句を構成する十の各百韻は四花四〜七月とする。定座は任意。
2、千句一座にわたる一座一句物は、鬼、龍、狼、血、屍、幽霊、天狗などの類のみとし、その他の一座一句物は、従来通り各百韻の範囲内で適用することとする。
その他のこまごました式目については、正風芭蕉流準拠、臨機応変の沙汰。芭蕉翁(永遠の宗匠)は、連歌新式以降の後世の式目書はすべて信用しがたしと断じ自身では式目書を残しておりませんので、『去来抄』『三冊子』『貞享式海印録』など信用のおける俳書にしたがうことといたします。
以 上
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