2008年10月6日月曜日

百韻『名月や』


発句  名月や十百韻の九の巻きを      合 秋月
脇     つづれつづれと綴刺鳴く     蘭 秋
3   さつま芋出来は上々早生種にて    百 秋
4     ひとに喜びおすそわけする    蘭
5   人の世は人の世ながらさりながら   波 
6     暗い土蔵に風が吹き込み     合
7   思ふほど住みやすくなき故郷かな   蘭
8     月餅買いに中華街まで      百

1   マドンナに僕のやうな恋をして    蘭
2     術もなきまま闇に手探り     合
3   雷神は忿怒相なり大停電       蘭 夏
4     損保会社へ被害届けを      百
5   薄雪の下りS字で脱輪し       蘭 冬
6     出鼻くじかれ頭真っ白      〃
7   理髪店パーマヘヤダイいたします   百
8     泡立つ海に臭いたちこめ     合
9   月高し夜っぴき塩焚く破れ小屋    蘭 秋月
10    夜食しながら昔語りを      百 秋
11  菊いじり鼻歌交じる爺さんは     合 秋  
12    江戸っ子でなく東京っ子だ    波
13  花のころ隅田あたりをかけめぐる   蘭 春花  
14    大蛤の糶にかけられ       百 春

1   霾晦り笑ふ金歯の老漁師       蘭 春
2     お酌が地獄の使いと知らず    合
3   お上手にだんだん伸びる鼻の下    蘭
4     父の日忘れ娘迎えに       百 夏
5   Tシャツの汗の匂いが誇らしげ    合 夏
6     学校登山落伍者はなし      蘭
7   うるさくてクマは近くに寄り付かず  波
8     メッカの峠集ふ走り屋      蘭
9   赤城山やくざによつて名が売れて   〃
10    極道育ちの先生人気       合     
11  優男強い女性が好きになり      百 恋
12    親の縁談蹴つて駆け落ち     蘭 恋
13  有明に別れを告げし清滝の      合 秋月
14    大河となりて秋の野をゆく    百 秋

1   鰯雲みては腹鳴る山頭火       蘭 秋
2     鉄鉢一つ命の頼り        百
3   仏法で食は修行の一部なり      蘭
4     不味いなどとは言語道断     〃
5   添加物見えぬところが恐ろしい    百
6     未来に残す豊かな自然      合
7   故里の緑私の目を洗う        波 夏
8     汗をながして縮み着流し     蘭 夏
9   梅雨晴れ間半片の月うすうすと    百 夏月
10    観音菩薩に母の俤        蘭
11  遍路して過ぎにしかたに思ひはす   〃 春
12   蕗味噌詰める備前の小鉢      合 春
13  花見舟杭に繋げど去りがたく     百 春花
14   人の曲まで歌ふカラオケ      蘭

1   だみ声の負け知らずにはえへへへへ  合
2    一年幾度首のすげ替へ       蘭
3   早々とマフラーをしてジョギングし  百 冬
4    葉っぱが欲しいともらう大根    合 冬
5   残りめし粥にのばして日を暮らす   蘭
6    二日剃らねば顔もごま塩      〃
7   無精髯しぶしぶすれば良い男     百 恋
8    鏡の中に妻微笑んで        〃 恋
9   湯あがりのうす桃色の美しく     蘭 恋
10   かはいいままでゐてね初孫     〃
11  ブランコも滑り台まで家の中     百 春
12    雛飾る日の待ち遠しくて     〃 春
13  朧月嫁入り支度する母と       蘭 春月
14   ランチをかねてケーキバイキング  合

1   今晩の食事のしたくサボりたい    百
2    コンビニ弁当食はしといたろ    蘭
3   今日もまた夫は山に行くらしい    波
4    どこへ行っても山ノ神のいる    百
5   若い娘にミステリアスと迫られて   蘭 恋
6    ついに名前をどうだんつつじ    合 春恋
7   鳥さかるスリル味わう葉隠れに    百 春恋
8    微笑む如き春の月かな       蘭 春月
9   ポケットのサクマドロップかさばって 亮
10   歩くたんびにカラカラと鳴る    蘭
11  通せん坊カウベル付けた牛の群れ   〃 
12   ガンジス河の沐浴ビデオ      合
13  よみがえる吾が花嫁よハネムーン   蘭 雑花
14   シャンパンの栓隣席に飛ぶ     百

1   二本目になるとさすがに酔ひがきて  蘭
2    忘れたなんて罪な言葉を      合
3   もしここで断わられたら死ぬといい  蘭 恋
4    はねっかえりのこのしおらしさ   亮 恋
5   黒ぶちのグラサン胸にヨットハーバー 合
6    隠し通さん実はかなづち      蘭
7   建売の今日も売れずに旗しまい    百
8    外目いいけど中はどうだろ     蘭
9   笑顔よきあの子はおみず馴れていて  合
10   僕は静かな君が好きだよ      蘭
11  言の葉をこころの底より絞り出す   〃
12   鳴いて血を吐く杜鵑かな      波 夏
13  思ひ寝の目覚めおぼろげ朝月夜    蘭 夏月恋
14   タクラマカンに棄ててきたこと   亮

1   遥かなるわが彷徨をなほ傷む     蘭
2    かくあることに付ける折り合ひ   〃
3   宿六をとりかへるほどの気力なし   〃
4    大江戸小江戸ぶらり散策      波
5   古いもの内に感じる新しさ      蘭     
6    芝居に残るしぐさ美し       波
7   花灯り闇にけざやぐ薪能       蘭 春花
挙句   これぞこれこそ春の夜の夢     〃 春

             2008.9.14〜10.6

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