2008年10月27日月曜日

百韻『秋澄める』


発句  秋澄める北の海色紺深し       百 秋
脇    萩のこぼれる岬から見る     青波 秋
第三  望月の供に愛犬すわらせて     春蘭 秋月
四    あ忘れちゃった今日の講演     合
五   まいいかお茶をすすって髭なぜる   波
六    昇った坂をだらだら降りて     百
七   徒労人トンネル内の土合駅      合
八    慣らしにしてはきつ過ぎるかも   蘭     
ウ一  蕨採り秘密の場所は教えない     百 春
二    薮に知られず咲ける春蘭      蘭 春
三   麗日や君が顔心根も         百 春恋
四    旅路の人と忘るものかは      蘭 恋
五   ノーベル賞学生時代を原点に     合
六    ひねくれもんもつひに号泣     蘭
七   ねじりんぼ越後駄菓子を噛み締める  百
八    雪の便りに今年も帰れず      合 冬
九   別荘はできれば囲はぬ方が良い    蘭
十    こころ開かん月は隈なし      〃 秋月
十一  無人駅コスモス好きとゆらゆらり   合 秋
十二   昼はビールと言へど身に入む    蘭 秋
十三  花吹雪子供歌舞伎の見得をきる    百 春花
十四   菜飯の箸をやすめ喝采       蘭 春
二折
一   飛んでくるおひねりいっぱい山笑う  百 春
二    隣の君は頼りないナビ       合
三   運まかせ試行錯誤で探る道      蘭
四    初心者ゆえか大儲けする      波
五   けちけちのパックツアーでカジノ行く 蘭
六    円高チャンス勝負しどころ     百
七   木の葉沈んで石が浮くよなこの世界  波
八    明日も地球があるとおもはん    蘭
九   ゴリゴリと香り引き立つ豆を挽く   合
十    しばしの時間薀蓄を聞く      波
十一  小鳥来る朝の窓辺にパンくずを    百 秋   
十二   金木犀の香りが椅子に       合 秋
十三  眠り姫蒼き月光浴びて待つ      百 秋月
十四   たかが百年一瞬の夢        蘭
ウ一  北山の守りし杉ぞ天に伸び      合
二    たちまち此の身まとふ風花     蘭 冬
三   年の瀬の引越し荷造り皿割って    百 冬
四    清算します愛と友情        合 恋
五   夫より長いつきあい人の知る     百 恋
六    プラトニックなゆゑに永遠     蘭
七   願掛けて苦しいときの神頼み     百
八    増えるばかりの小銭放出      蘭
九   煙草買う月皓々と自販機へ      百 秋月
十    下を探れば竈馬飛び出る      蘭 秋
十一  庭に植ゑし薄どうやらさまになり   〃 秋
十二   田舎暮らしのブログなんぞを    合
十三  メル友に花の盛りを知らせおり    百 春花
十四   羽音で虻をかはすひとびと     蘭 春
三折
一   どの手にもソフトクリーム春の牧   〃 春
二    ベンチをさがす家族づれいて    百
三   ためらはずやさしく声をかける彼   蘭 恋
四    僕も一緒にそこで降ります     波 恋
五   踊子に峠の茶屋で追ひついて     蘭 恋
六    水かさ増した流れ激しく      合
七   五月雨に嵩むプラごみ出しにでる   蘭 夏
八    若奥様はショートパンツで     波 夏
九   からす2羽電線の上覗き居る     百  
十    トボトボダチョウ邪魔な金網    合
十一  すきあらばいっそ逃げたやくさり縁  蘭
十二   秋の蚊叩き溜飲下げる       百 秋
十三  月の舟銚子二本で止められて     蘭 秋月
十四   お芋つるりと未練を残し      合 秋
ウ一  嫁の里居やすくなるも心がけ     蘭
二    形ばかりのエプロンつけて     百
三   蕎麦を伸しかなりゆがんで世界地図  蘭
四    切ってしまえばわかりゃしないさ  〃
五   老獪の術も持たずにぬくぬくと    合
六    政治を野球にたとへ口出す     蘭
七   あっという逆転劇もたまにある    波
八    空気を読めばわかるはずなり    蘭
九   門閉めに新月いでし空の澄み     百 秋月
十    垣根はみ出す盗人萩ぞ       合 秋         
十一  虫しぐれ人の気配にやみにけり    蘭 秋
十二   なぜか分らぬ胸騒ぎする      波     
十三  一斉に花は咲けども身は一つ     蘭 春花
十四   彼方此方と佐保姫さがす      百 春
名残折
一   けふもまたいざと蜜蜂飛び立って   蘭 春
二    朝晩いつも橋が渋滞        合
三   給料は口座振込み慌てずに      百   
四    加齢とともにどじの連続      蘭
五   抱きしめる妻の体は細くなり     合 恋
六    糟糠ゆゑにみればいとしき     蘭 恋
七   遥けくも来たりしものよ五十年    百
八    何か伝えるものはあるのか     蘭
九   けちけちとしている割に財もなし   〃   
十    裏の竹やぶ掘ってみてくれ     波
十一  地下潜る悪の帝国根を張って     合
十二   拉致と核とを天秤にかけ      百
十三  なにしてんの月に代わってお仕置きよ 蘭 秋月
十四   ブーツで走る畔に吾亦紅      合 秋
ウ一  秋霖にけむる明日香の道遠く     蘭 秋
二    貸し自転車のペダル踏みこむ    百
三   夏草のゲレンデ一気にダウンヒル   蘭 夏
四    露天風呂浴び干す生ビール     百 夏
五   酪農の仕事に慣れた日々若く     合   
六    靴に分厚く着ける春泥       蘭 春    
七   花の香の馳走いただく古き家     合 春花
挙句   われも翁と同じ麗らか       蘭 春

                 2008.10.6〜10.27

写真提供はフォト蔵さん

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