2010年6月24日木曜日

点取俳諧・前句付・川柳

●点取俳諧とはなにか、前句付の点取と同じことか

点取とは、歌や句を評価して点を付け、名誉、賞品、賞金を競うことで、和歌、連歌の時代から存在し俳諧においても隆盛した。評価するひとを点者と呼ぶ。

点取俳諧にも、参加者(e.g 弟子)に歌仙や百韻の独吟を提出させて点者が各句の採点(5点句何句。。。)するもの、実際の張行(e.g旦那衆)をして採点するものなど、連句を対象にしたものがまずあった。これらは特定少数が対象と言える。

また、前句付(短連歌)といい、前句(たいてい七七)を点譜として事前に呈示し、万句合への参加の募集を行い、参加者は付句して応募するものがあった。そこで高点をとった付句を集めた前句付高点付句集(武玉川、二葉之松、童の的、俳諧ケイなど)は、座の機関紙的なものとなり出版され隆盛を極めた。これは不特定多数が対象。
 
さらに一句立で一句としての面白さを競うものもあった。上5に75を付ける(笠付)、下5に57(沓付)を付けるなどいろいろな趣向があった。前句付とこれらを総称して雑俳とも呼ぶ。

やがて、前句付から前句のない川柳が生まれるが、それもこの仲間とされるむきもある。

●前句付からどうやって川柳が生まれたか

数ある前句付の一介の点者として柄井川柳は1757年ごろから登場。そのとき寄せられた句は207句。翌年5千、1762年一万句以上が3回と人気に。理由は、点料安い、入選率高い、選句が誠実、熱心、観賞能力高い、機関紙柳多留(川柳点、可有選)が面白い。

寄句が207句しかなかった万句合の点譜と入選句

 点譜
  祝ひこそすれ祝いこそすれ  この3つが前句付用。      
 ○はずかしい事はずかしい事  ○△は対応関係を示す記号。
 △にぎやかな事にぎやかな事
  がってんじゃ        これらは上5の笠付用
 ×おびただし         ×も対応関係を示す記号。

 入選句
  死跡の弔ひ永き一の鋸    広徳寺    みどり
 ○十月には弘めぬ先の月を入れ 浅草阿部川町 若葉
 △ふる雪の白きを見せぬ日本橋 市谷     初瀬

前句付でありながら前句無視の傾向があり庶民の身辺生活のうがちを詠む風潮がその当時にあった。武玉川は前句が省かれた付句集であるが、付句だけで十分面白いことを証明しており、前句がなくてもいいという動機付けに大いに役立ったとか。

1768年、前句のない点譜で万句合。ここに前句付から独立した「川柳」が誕生した。前句のない「川柳」が大部分の『柳多留』と、本来前句がある付句集『武玉川』は、非常によく似ていることに誰でも驚くはずである。川柳のずっと前から川柳はあったのかと。

参考:江戸川柳辞典、江戸座点取俳諧集、川柳雑俳集

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