2008年12月5日金曜日
鬼に喰われた男
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本
与謝野鉄幹 ー鬼に喰われた男ー 青井史著、深夜叢書社
歌風がますらお(益荒男)ぶりの与謝野鉄幹は、たおやめ(手弱女)ぶりの妻である鬼、与謝野晶子に喰われてしまった。晶子(ら?w)との恋愛を機に鉄幹は慷慨調・虎剣調から星菫調・明星調の感傷的な歌風に転じたが、晶子にはかなわず彼女の伯楽に徹した。と一般には言われるが、この本では鉄幹のたおやめぶりの歌風はもともとあったもので転じたわけではないとする。ますらおぶりは時代背景から壮士気取りしただけで鉄幹の生来のものではなく、生来なのはたおやめぶりだと言っているようだ。(鉄幹の歌は句読点を省略)
野に生ふる草にも物を言はせばや涙もあらむ歌もあるらむ 鉄幹
うるはしく心はもたむ飛ぶ蝶をまねくも花のにほひなりけり 同
春の野の小草になるる蝶見ても涙さしぐむ我身なりけり 晶子
ますらをを喰らふ手弱女実は鬼 春蘭
これと相似のことが川柳でも起こっているのかも知れない。現代川柳は詩的抒情・浪漫(たおやめぶり)を強調して女性の賛同と進出をうながした。しかしそれによって伝統的な川柳の滑稽で軽くうがちのある骨太の句風(ますらおぶり)は、恋と感傷の鬼の女性たちに喰われてしまった。現代のますらお達はそれに追従している図式なのか。
写真提供はウィキペディアさん
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