※執中:前句から連想されるものの中で中心となるもの。これを執り題として付句を詠むことを執中の法と呼ぶ。
歌仙『古池や』の巻
執中
発句 古池やかはづ飛びこむ水の音 芭蕉 春 歩く人
脇 背筋を正し春の新服 春蘭 春 入学式
第三 そうりやうの入学式は天晴れて 同 春 気も漫ろ
四 要所だけ見てたゝむ朝刊 時事川柳
五 ひもすがら苦吟をすれば疾うに月 秋月 妻の目
六 理解のできぬつまの冷やか 秋 美術展
ウ一 ヌード画のけつこう多い美術展 秋 デート
二 ふいに縋られ重き片そで 恋 浜辺
三 あし長き波のときをり打ち寄せて 睡魔
四 こくり舟漕ぎはつと驚く 留守番
五 留守電の釦を押してするゝすゐ 犬
六 隣近所は犬の無駄吠え 物干
七 物干に胡瓜なすびの苗育ち 夏 月の出
八 月を擁して明かる山際 夏月 飯炊き
九 褒められてけふも飯炊き竈の番 一芸
十 きつと未来を助く一芸 花見
十一 シートとて酔へば上等花座敷 春花 飛行機
十二 黄金週間ロスへ飛び立つ 春 研修
ナ一 研修も実に長閑なものもあり 春 よそ見
二 あかず眺める雲のうつろひ ふるさと
三 ちちははのいぬるふるさとかはりなく 墓参
四 雨にあを濃し寺のあぢさゐ 夏 知らぬ道
五 知らぬ道行つてみるのも面白き 蜜柑
六 たわゝな蜜柑塀にかほ出す 冬 乙女
七 こつそりと見初めしひとの後つけて 恋 光源氏
八 折り枝添へておくる恋文 恋 殺し文句
九 シンプルに短いフレーズ繰り返し トップ交代
十 人心つかみトップ交代 テレビ
十一 望の月おなじ話題の局ばかり 秋月 虫の音
十二 猫抱き椽で聴くは蟋蟀 秋 蚊
ウ一 哀れ蚊をそつとかいやる捨て団扇 秋 清貧
二 板についたり老いの清貧 人生論
三 うけ売りの論をさまざま取りまぜて 俳諧
四 愚に遊ぶべし歌仙一巻 花の下
五 花の下連れのかんばせほのあかく 春花 吾妻
六 われも同じくこころ麗らか 春
1、前句(ウ三)から言外に<俳諧>を連想。
2、<俳諧>を題として枝葉を付け加え付句を仕立てる。このとき前句は意識外にする。
3、前句と二句一連(短歌)で意味が通るように調整する。
4、打越方面をチェック。
1、前句(ウ四)から言外に<花の下>を連想。
2、<花の下>を題として枝葉を付け加え付句を仕立てる。このとき前句は意識外にする。
3、春の季語<花の下(もと)>をそのまま入れる。
4、前句と二句一連(短歌)で意味が通るように調整する。
5、打越方面をチェック。
1、前句(ウ五)から言外に<吾妻>を連想。※
2、<吾妻>を題として枝葉を付け加え付句を仕立てる。このとき前句は意識外にする。
3、春の季語<麗らか>を入れる。
4、前句と二句一連(短歌)で意味が通るように調整する。
5、打越方面をチェック。
※ 同時に冬の日『つゝみかねて』の巻、芭蕉の挙句「その望の日を我もおなじく」を連想。
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