歌仙『秋時雨』の巻
2007.9.14〜2007.10.17
発句 秋時雨きみと寄り添ふ傘うれし 紫桜 秋恋
脇 紅葉に映えて匂ふ黒髪 春蘭 秋恋
第三 子らと来て千草を手折る川辺にて 紫 秋
四 ゆふべの鐘にみれば月の出 蘭 秋月
五 米とぎて庭で火起こし肴焼く 紫 雑
六 西瓜を冷やす裏の古井戸 蘭 夏
初折裏
一 じりじりと蝉鳴く午後はいねもせず 蘭 夏
二 はなを愛でつつ早き湯あみす 紫 雑
三 せつかちの旅のプランはせはしなく 蘭 雑
四 笑む声こぼる居間の窓辺に 紫 雑
五 一人だけ大正琴の音はづれ 蘭 雑
六 そぞろの宵にひとすじの星 紫 雑
七 聖し夜の月にうつせしわが心 紫 冬月
八 いやな上司に賀状書きけり 蘭 冬
九 差し向かひ酌み交はす酒ほろ苦し 紫 雑
十 不義理せしまに老いし父母 蘭 雑
十一 花片をつなぎ遊びし髪飾り 紫 春花
十二 先をきそつて泳ぐ若鮎 蘭 春
名残折表
一 浪人も今年で終わり新入生 青波 春
二 鼻すり付ける仔犬なでつつ 紫 雑
三 こはもての破顔慮外にかはいくて 蘭 雑
四 髭面男眉毛細いぞ 波 雑
五 太鼓の音浴衣羽織りて路地急ぐ 紫 夏
六 蚊ばしらはらふ白き二の腕 蘭 夏
七 寂しげにたたずむ女誰を待つ 波 雑恋
八 時計の針を少し戻して 紫 雑恋
九 ときめきの軌跡たどればおろかしき 蘭 雑恋
十 覆ひ隠せぬ我が思ひかな 紫 雑
十一 残業の帰りを照らす白い月 波 秋月
十二 わられし石榴道で蹴飛ばす 蘭 秋
名残折裏
一 鳴子鳴り逃げる猪遠ざかる 波 秋
二 窯にくぶ薪明々と燃ゆ 紫 雑
三 虚も実もおのが頭の骸のなか 蘭 雑
四 春の女神は気まぐれなのよ 波 春
五 ぎふ蝶は花見しながら蜜を吸ひ 蘭 春花
挙句 畦塗り終へて鍬にやすらふ 波 春
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