2011年6月6日月曜日

百番連歌合(三十三)




97     此浦よりやあかし成らん
     灯のとをきひかりの明て後       侍
     月出て嶋がくれなき浪の上       周
     くらき夜の舟にしるしの火をみせて   心

98     夢もあだなる手枕の露
     うき人のきかねば風も身にしみて    侍
     月かげの入野の旅ねあくる夜に     周
     うたゝねをいさめがほなるさ夜時雨   心


(跋文)

此前句にて救済周阿句を
合(あわせ)侍りて二條太閤御墨
など申給へる頗金玉也 一見感
情に堪かねて瓦礫を付侍り
且はかたはらいたき事に侍れども
田舎の冷然の心をやしなひ又
聊(いささか)の稽古にもと思ひ侍るば
かりなり 殊(ことに)両賢既(すでに)前句の心
詞の髄脳をば毎句とり尽し
給侍れば一塵も残べきにあら
ず候 上古風躰までに大様大
どかにしてありがたくこそ見え
侍給 しかあれど時代遥かに過去
侍れば此頃古人の風雅のまゝ
にてあそび侍らばいまの世の耳
には事ふりたる成べし 唐の

文も世々に替るとなれば時代
うつりかはり侍る 風躰の用捨
簡要たるべく候哉 此前句しな(品)ゝく
えん(艶)にをくれことごとく心つた
なく難句どもに候哉

 応仁貳年六月廿五日
   桑門釋 心敬


参考文献
(1)百番合連歌、救済・周阿・心敬 早稲田大学図書館所蔵

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