2010年4月5日月曜日

連歌新式追加并新式今案等の翻刻・読解(12)可分別物―1















底本:京都大学附属図書館所蔵 平松文庫『連歌新式追加并新式今案』 [ ]は訳者注。



一、可分別物
  [ふんべつ(ぶんべつ)すべきもの:今まで述べてきた式目(主に分類)の原則を杓子定規には適用できない言葉の具体例をその分類とともに列挙する。]

 花の波 花の瀧 花の雲 松風の雨 木の葉の雨 河音の雨 月の雪(夏の詞入ては降物と為すべからず)月の霜(前に同じ)桜戸 木葉衣(この如きの類は両方にこれを嫌うべし) 花の雪(植物にこれを嫌うべし 降物にこれを嫌うべからず)涙の雨(降物にこれを嫌うべからず) 波の花(水邊に可嫌之 植物に不可嫌之)波の雪(冬也 両方に嫌之)袖の露 涙の露 涙の時雨

  水邊躰用事
  [この見出しはふさわしくないの無視すべし。]

 假令[けりょう:たとえば]波として浦と付て、又水塩などはすべからず、蘆・水鳥・舟・橋などはすべし、為各別物之故也 須磨 明石(可為水邊 上野岡非水邊 他准之) 難波 志賀(非水邊他准之) 杜若 菖蒲 芦 蓮 薦 閼伽結 懸桶 氷室 手洗水(已上水邊也)都鳥(同前)蓬屋 霞細[網]小田返 布曝 硯水 涙川(為名所者可嫌水邊也)月の氷 袖行水 たるひ 軒の玉水 苗代 早苗(已上非水邊)

 山にある関は山に嫌之 浦にある関は浦に可嫌之 岩橋 薪 爪木 猿 瀧 津 瀬(已上非山類)宇治 川嶋(非山類 凡そ川嶋同之)泊瀬寺(山に在る関に准ず 山類に為す 餘は之に准ず)清見寺(浦に在る関に准ず 水邊と為す)難波寺(水邊に非ず)木曽路 鈴鹿路(小野芳野奥に准ず 山類を遁るべし)鶴林(植物と為すべし)鷲嶺(山類躰と為すべし)
 
 杣人 炭焼 雪山(山類と為すべし)室八嶋(山類水邊に之を嫌わず)冨士 浅間 葛城(などばかりは山類の躰用の外なるべし)松嶋(山類に之を用い来ず)田蓑嶋 三嶋(山類と為すべからず)戀山(句に依り名所に為すべからず)遅桜 松花 萩焼原 鳥巣(春なり 水鳥の巣は夏なり 鶴の巣は雑なり)雉子(きじと云ても猶春なり 但し狩場の雉は冬と為すべきなり)

 氷のひま 荒玉の年 春日祭(両度の祭、初めを以て正と為す)南祭(石清水臨時の祭なり)縣召[あがためし] あらればしり 須磨の御祓(春と為すべきなり)心の花 白尾鷹 継尾鷹(以上春なり)志賀山越(これを春と為す説有り しかれども近来春に非ず)神楽 榊取 杜若 牡丹(杜若牡丹は両説に哥題といえども景物に依り少夏に之を入る)

 毛をかふる鷹並鳥屋鷹(以上夏なり)平野祭(夏なり)鴬(時雨にむすびては夏なり)鮎(夏なり 若鮎は春なり さびあゆは秋なり)須磨のながめ(夏なり 但し其の儀あたらずば夏と為すべからず)清水(雑なり むすぶと云ては夏なり ただ水をむすぶは雑なり)

 日晩 稲妻 鳩吹 楸 裏枯 蔦 芭蕉 忍草 穂屋つくる 初鳥狩 初鷹狩(鳥屋前に同じ)小鷹がり 鶉衣(非動物) 萱 枯野の露 草枯に花残る 初嵐 露 霜 露時雨 つかさめし 相撲 放生(神祇なり)星月夜(月と云字に五句へだつべし)秋去衣(七夕の具なり)願絲(同上)鵙[もず]草茎(植物なり)千鳥(雁にむすび入ては秋なり)扇をゝく(秋と為す事句に依るべきなり)冷(物に依り秋の由と為すべからず)

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