2010年4月6日火曜日
連歌新式追加并新式今案等の翻刻・読解(13)可分別物―2
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連歌論俳論
底本:京都大学附属図書館所蔵 平松文庫『連歌新式追加并新式今案』 [ ]は訳者注。
一、可分別物
[ふんべつ(ぶんべつ)すべきもの:今まで述べてきた式目(分類、四季、去り嫌い)の原則を杓子定規には適用できない言葉の具体例をその分類とともに列挙する。]
夜寒 身にしむ(以上秋なり) 淡雪 涙の時雨 庭火 木葉衣 紅葉散て物をそむる 北祭(賀茂臨時祭なり) 豊明節會(夜分にあらず) 小忌衣 日蔭絲(共に神祇) 年内立春(以上冬なり) 椿 柏 蓬 葎 浅茅 忘草 蜻蛉 鴎 鳰(同浮巣) 松緑(以上雑なり 緑立つ若緑は春なり) 塩屋 宮居 寺 家を出る(釈教なり) 里神楽(以上居所にあらず) 都 御階 百敷 雲上 九重(以上居所にあらず名所にあらず) 簾(居所の用なり) 床 御座(以上居所なり) 草枕 柴戸 松門 杉窓 菅笠 篠庵 草庵 浮木 流木 爪木 柴取 絵に書く草木(其の物に依り其の季有るべし) 催馬楽等の名(絵に准ずべし) 衣裳の色 花木(植物と為すべからず。但し其の色に依り其の季有るべし)
木をきる しをり あし鴨 蘆田鶴 竹宮(名所に為す 以上植物にあらず) 軒菖蒲 末松山 篠枕 稲筵 苔筵 蓬宿 葎宿 夕顔宿 草莚 草を刈(以上植物なり) 水鶏(水邊なり) 螢 蚊遣火 筵 枕 床(ゆかは昼なり) 又寝 神楽 夕闇 いさり(以上夜分なり) 浮ね鳥 心の月(釋教なり) 鶉の床 心のやみ 其暁 夢の世 常灯 明はてて 明過て 朝ぼらけ 三日月の出 有明の入 鐘のかすむ(以上夜分にあらず) 焼火(影と云ても猶夜分と為すべからず) 夕月夜(夜分にあらず) 宵(夜分にあらず) 夕に日晩[ひぐらし] 時雨に時の字 名所の春日に春字日字 橘に花 雷に神字(これを嫌わずといえども然るべからず 打越にこれを嫌う) 槿に朝字(但し其の意不庶幾[不切望]うんぬん)
日に昼 稲妻に月日(以上これを嫌わず) 下紐 ひれ(衣裳なり) 帯 冠 沓 衣々(衣裳にあらず 但し衣に打越を嫌うべきや云々) 佐保姫の衣(衣類にあらず) 平秋の句に戀の秋の句付て又平秋の句(これを付けるべからず 他これに准ず) 朽木と云う句に杣と付て又杣の名所これを付けるべからず 生田と云う句に森と付て又杜の名所隠題にもこれを付けるべからず 槙には木の字を憚るべからず 真木柱 真木戸には木の字五句これを嫌うべし(良木の故なり) 躑躅 卯の花(木なり) 藤(草なり) 海士 小舟 泊瀬山(舟字に付て水邊にこれを嫌うべし)
棹姫(春なり) 立田姫(秋なり) 山姫(雑なり 以上神祇にあらず) 無常 述懐 懐旧(引合て三句これを用うべし) 述懐 釈教の詞これを一句と為す時は釋教[方]に付けるべきことなりてには字相合を[これを]付けるべからず 東遊 求子(神祇なり) 野の宮(前に同じ) 神楽の名の蛬[きりぎりす](絵に准ず 但し秋季にはこれを用いるべからず 神の方を本と為すべし)
桜鯛 桜貝(名に付て春と為すべきか云々) 桜人 桜田(植物と為すべし) 菜摘(春と為す) 野遊(春にあらず) 詞の花(前に同じ) あたゝかなる(日の暖なるは春と為すべし云々) 水のぬるむ(春なり) かすむると云う詞(霞字にあらず 但し詞のつゞきやうにて聳物を嫌うべきか霞の心に用うべきは春の季をもつべき[な]り) 若葉(春夏両説有り 花を加えれば春と為す 然かれども夏の季は大切の間夏と為すべし云々) ねらひがり(獣の事なり 夏なり) 紅葉橋(大河と為す事の間植物に為すべからず 句に依り二句隔つべきなり)
初塩 色鳥(秋なり) 思草(植物なり 秋と為すべきなり) 戀草(植物にあらず) 戀摺(前に同じ) 頭雪 眉の霜(降物にあらず 冬にあらず) 夜の更る 露ふけて(時分にあらず) 御祓にはらふ 蛙に河字 つれなきに無の字 いさりに舟 釣に舟海士等(これを嫌わず) 夕ま暮(間の字真の字共にこれを嫌わず) 山の滴 軒のしづく(降物にこれを嫌わず) 老に若を嫌う事(其の謂れは無きや 若年壮年等の次第なり 親に子弓に矢を嫌う[類]にはかはるべし) 深きに浅き 遠きに近き(この「き」文字嫌う事此の類これ多し 然るべからず付句にもこれを嫌うべし) 何字に幾字(付句にこれを嫌う 打越にこれを嫌わず)
さ夜 さをじか等に小舟 小篠の小字(前に同じ) 鷹に狩(付句にこれを嫌わず) 民のかまど(居所にこれを嫌わず) 夜の明に戸をあくる(付句事にこれを嫌う) 横川(水邊にあらず) 蓬杣(山類にあらず) 山がつ(山類にあらず 山字に五句これを嫌うべし) 山鳥(前に同じ) すそ野(山類なくてもす?べし) 龍(獣類に用いたる事もあり 然かれども別種の類たるべし 龍は吾知るあたわず 先聖の語なり) 鷺(水邊にあらず) 菅(前に同じ) 舟(海路渡舟は旅なり 句躰に依り旅と為すべからずなり)
さか月の光りなど月によそへたらば月に二句これを嫌うべし 然れども秋と為すべし 鞠の庭(庭の心ならば一の外如何) 國名と國の名(三句隔つべし) 國名と名所(打越を嫌うべし) 國の海(名所なり) 名神(名所にあらず) あづまに越路等(打越を嫌うべきか) もろこし過て 唐國とはあるべし
To Be Continued.
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