2010年4月7日水曜日
完了!連歌新式追加并新式今案等の翻刻・読解(16)和漢篇―2
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連歌論俳論
底本:京都大学附属図書館所蔵 平松文庫『連歌新式追加并新式今案』 [ ]は訳者注。
和漢篇[つづき]
一 隔三句之物 可隔二句
[三句隔つものは二句隔つべし]
嫌打越之物 同連歌式目
[打越を嫌うものは連歌式目に同じ]
一 山類 水辺 居所等 不可有躰用之分別事
[山類、水辺、居所など体用の分別は有るべからずこと]
一 万物異名就本躰可定其季但可為本躰事
[万物の異名は本体に就いて其の季を定むべし 但し本体と為すべきこと]
假令金鳥は日 銀竹は雨 金衣は鴬 鳥衣は燕 霜蹄は馬 鯨は鐘(如此之類)可依連哥異名物之例
[けりょう、鳥は日 銀竹は雨 金衣は鴬 鳥衣は燕 霜蹄は馬 鯨は鐘(此の如きの類)異名物の例は連歌に依るべし]
[以下の聯句中可定其季等字之事の部分を連歌初学抄に含めた本がある。]
一 聯句中可定其季等字之事
[聯句中、其の季等を定むべき字のこと]
暖芳(花の意あり) 紅(同じ)淑気 焼痕 踏青 芳草(此の如きの類は春なり) 新緑 霖(雨) 暑 炎熱 草木の茂字 清和(四月此の如きの類は夏なり) 初涼(新涼同じ) 冷爽 金気 黄落(此の如きの類は秋なり) 枯(草木の心なり 拾枯 薪なり) 臘 探梅 春信 守歳(此の如きの類は冬なり) 信(書信) 客(賓客にあらぬ客) 一葉身(舟) 帰字 漂泊(此の如きの類は旅なり) 錦字 御溝葉 私語(此の如きの類は戀なり) 人名(人倫と為すべし 姓は人倫と為すべからず 但し事に依るべし) 名利塵(世の意) 浮跡 出処(此の如きの類は述懐) 一絲(釣絲の意 水邊と為すべし) 禅定 錫(此の如きの類は釋教なり)
応安以来新式之今案之追加条々並近代用捨篇目等 依多其端 末学常迷之商量而今彼是勒以為一冊 但猶未一決之事 或暫漏之或先載之以待後君子志同者従之亦宜乎
[応安以来新式の今案の追加の条々並びに近代の用捨の篇目等は、其の端の多さに依り、末学は常にこれに迷う 今よりあれこれ商量(条件・状況を判断)して勒し(抑えとどめ)以て一冊と為す 但しなお未だ一決せぬ事 或いは暫くこれを漏らす 或いは先ずはこれを載せ以て後の君子、志を同じくする者を待つ、これまた宜しや]
文亀辛酉林鐘上澣 肖柏
[林鐘 りんしょう:陰暦六月]
[上澣 じょうかん:月の上旬]
右之八冊法橋紹巴左以自書之本加校合本
[右の八冊は、法橋(ほうきょう)紹巴自書の本を以て本に校合を加え左(たすく)]
[里村紹巴 さとむらじょうは:1525-1602 連歌師の第一人者 貞徳の師]
完
感想:
種々異本がある。戦国時代の連歌師の第一人者、里村紹巴がかかわっているとの文が最後にあり、筋の良い本だと思われる(思いたい)。紹巴の弟子に松永貞徳がおり一般の通説では彼から俳諧が創始されたとされる。連歌師の宗祇をはじめ連歌師兼俳諧師の貞徳、俳諧師の芭蕉が皆この連歌新式(応安新式+追加変更)を見て連歌・俳諧を仕切っていたと思うと身が引き締まる。
連歌で使ってよい言葉は当初雅語・歌語だけであった。二条良基らによって歴史的には早々とその禁が解かれたが、実際は長いことその禁は守られたようだ。連歌新式は去り嫌い等を具体的な言葉(インスタンス)によって記述しているため煩雑な印象を受ける。限られた数の雅語・歌語だからできた記述法であろう。
だが、最後まで読むとその読みにくさを忘れ、これだけ?と誰もが思うことだろう。この記述法では俗語・漢語・仏語もよしとする俳諧ではさらに煩雑の度を極めること必定である。そこで貞門以後(maybe)の俳諧では分類の型の言葉(タイプ)レベルで去り嫌い等の式目は説かれることになる。
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1 件のコメント:
初めてコメントをお書き致します。
俳諧の研究論文を書き、
『連歌新式』の資料に困っているところ、
貴サイドと出会えて、大変勉強になっています。
現在、近世初期で漢詩を題にする俳諧を検討しております。
これまで関心をもっているテーマは次のサイトに載せています。
https://independent.academia.edu/HuangChiahui
機会があれば、ご教授頂きたいと思いますが、どうかよろしくお願い申し上げます。
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