2010年3月25日木曜日

連歌新式追加并新式今案等の翻刻・読解(5)雑物躰用事



底本:京都大学附属図書館所蔵 平松文庫『連歌新式追加并新式今案』http://is.gd/aOqn8
   上段は原文、下段は訓み下し。( )は原文小文字。[ ]は訳者注。

    後普光園御筆
    [二条良基]
  
 源氏物語は大部のものなれは三句すへし但同所は二句はかりすへき也(雖有此説
 不庶幾也用本哥用古事之条重畳可有斟酌云々況於同物語乎)

   源氏物語は大部のものなれば[連歌百韻一巻で]三句すべし。ただし同じ所
   は二句ばかり[続ける]すべきなり。(この説あるといえども庶幾[しょき
   :切望する、こいねがう]せぬなり。本歌に用い故事に用いるの条[条項]
   は重畳にして斟酌あるべし、うんぬん。いわんや同じく物語においてをや。)

一 雑物躰用事
 雑物体用の事

 假令春と云句に弓と付て又ひくかへるをすなと付へからす是用なる故也本末とは
 付へし 是躰なるゆへなり

   けりょう[たとえば]春という句に弓と付きてまた引く・返る・押すなど付
   くべからず。これ用[例:動詞]なるゆえなり。本[もと]・末[すえ]とは付
   くべし。これは体[例:名詞]なるゆえなり。
   
   春を張るに取り成して弓が付いた、これに引くの類を付けると張る(用)、
   弓(体)、引く(用)で用体用の繰り返し(打越)となる。 
                     
   [春(張る)/弓/ひく・かへる・をす ×]
      用   体   用

   [春(張る)/弓/本・末 ◯]
      用   体   体

 打越に躰あらは本末又不可然長と云句に縄と付て又短なと是を付す是躰なる故
 也くる引なとは可付之是用也

   打越[前々句]に体あらば、本・末はまた然るべからず。長という句に縄と
   付きてまた短などこれを付けず。これ体なるゆえなり。繰る・引くなどはこ
   れ付くべし。これ用なり。

   [長/縄/短 ×]
    体 体 体
 
   [長/縄/繰る・引く ◯]
    体 体 用

   [要するに、打越が同じものだと×、違っていれば◯

         体用体 用体用 用用用 体体体 ×
         体用用 用体体 用用体 体体用 ◯

    体用とは何か、辞書によれば、主体・本体となる詞(体)と、その作用・
    属性を表す詞(用)のこと。例えば、「海・浦」が体、「浪・氷」が用と
    なる類。長・短が体とはちょっと解せない。]
   

 参考文献:岩波書店 日本古典文学大系 連歌論集・俳論集 連理秘抄

 To Be Continued. 

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