2010年2月28日日曜日

萱草第五 恋連歌(九)










2007年05月21日07:10


 あふをかぎりのなみだほさばや
夢になせとばかりつらき別(れ)ぢに

 水のひびきもつらきあかつき
千どりなくさ夜の別路月さえて

 ゆくすゑしらぬ事ぞあだなる
とどむるやつゐの別を忘るらむ

 一かたならぬなみだなりけり
今朝のみかつゐのわかれをいかがせん

 わかれていなむかたもおぼえず
さらばそのあふよの夢と成もせで

 むかふ時にはことの葉もなし
かへるさのあとにうらみの又ありて
 

 夕べはいとどうかぶおもかげ
わかれつるかねをおもへばけふもうし

 こころひとつの春ぞかなしき
かすめとてそなたにいたく暮もがな

  北畠大納言家に奉し後の百句に
 とはれんまでの身をなたのみそ
古こんと世のなさけにやいひつらん

 つゐにあふせと御祓をぞする
たのめをくほどは茅(ち)の葉の露の世に

 恋わぶるとはほのかにもしれ 
  と云句に
見し人は雲ゐの月を名残にて


参考文献:
京都大学附属図書館所蔵 古典籍 『萱草』 [v.1, pp.106-107]
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0054.html

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