2010年2月28日日曜日

萱草第六 雑連歌(十一)




2007年05月28日18:05

京都大学附属図書館所蔵 古典籍 宗祇『萱草』(わすれぐさ)


我よりもあるべき人の跡とひて

 くるやこずやを露もしらばや
なき人の秋の手向に袖ぬれて

 涙ににたる野べの夕つゆ
秋かぜにきえにし人の跡とひて

 なみだの雨よゆく人にふれ
わたり河かへらぬ水と聞もうし

 涙のみづのすみはいつはり
みそぎにやわかれし袖をわするらん

  俳諧躰の連歌に一句に百句
  付侍しうちに

 人のこころのかはる世のなか
とき過る身こそ六日のあやめ草

 またじとすれど秋のさびしさ
嶺のいほ鹿のわたるも人に似て

 なす罪をくゆるもさすがむくひかは
矢さきにこすは鹿もあだらし

 蘆の夜さむに風おつる聲
すそたらぬ秋のさ衣露けくて

 しのぶ恋路を山にふまばや
あふ坂にやらぬ人めの関はうし

 人のこころのかはる世中
あふさかもはてはなこその関路にて


http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0085.html



あふさかもはてはなこその関路にて

 君にまかする命なりけり
世にしばしあれとおもはばわするなよ

 とはれぬままに袖ぞ露けき
君しこばしげくもをかし庭の草

 あかざりし別(れ)の跡の秋の床
夜さむのまくらおもかげもねよ

 ひく心こそおもふかたなれ
いはずとも目くばせてだに憑(たの)まばや

 おろかにまなぶ道ぞはかなき
足ときをこえ行(く)山にうらやみて

 かげ立なれん住よしのまつ
むら雨の笠さすばかりふり出でて

 身のはてしをも誰にとはまし
まよひては心の占(うら)もおぼつかな

 かぎりあれはや雲もきゆらん
いただける我おほぞらのはてもうし

 衣はあるにまかせてぞきん
おりにふれかへぬる袖もわづらはし

 いのちのうちにをくる年なみ
つらき世のすゑの松山こえまほし

 たかねおろしはふきもよはらす
とをくなる人をも冨士や送らん


http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0086.html



とをくなる人をも冨士や送らん

 なが雨にこゆるうつの山みち
冨士をさへかくすは旅の涙にて

 石のうへにも時代(ときよ)こそふれ
人はなをいそぐみだれ碁うちかねて

 あれたるさとは(ぞ)道あまたなる
隣より垣のくづれをふみわけて

 おもふそなたにいつかゆかまし
みどり子のあゆみもやらず親をみて

 我につらきをしたふはかなさ
みどり子は後の親をもまたしらで

 いつのまにとをくは人のかはるらん
子ぞつきづきに生れをとれる

 などとふこともいはすなるらん
みどり子は人のうきにも泣ばかり

 道かすかなるさかのふる寺
かへるなとうき世や人におもふらむ

 おもひのかすはいはれざりけり
物うしや年をなとひそ老の友

 えそやすからぬかかる世中
捨がたき命に松の葉をすきて

 及べき山こそなけれ老の坂
をこなひ人のかくる大みね


http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0087.html

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