2010年2月28日日曜日

ロング・グッドバイ

2007年05月06日13:51

レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』村上春樹訳 早川書房 2007.3

あらすじ:ねたばれ
私立探偵フィリップ・マーロウは、酔いどれの白髪の青年、テリー・レノックスと知り合いになる。お互いになぜか惹かれ友情を覚えはじめる。

レノックスの妻は億万長者ハーラン・ポッターの娘シルヴィアで何人かの男と密会しているらしい。ある日離れのベッドでシルヴィアの全裸死体が発見される。顔はつぶれていた。

レノックスは妻殺しの容疑をかけられ、メキシコに逃亡する。犯人はレノックスではないとマーロウは信じ、黙ってレノックスの逃亡を助ける。もう二度と合うことはないだろうと思いながら二人はさよならを告げる。

マーロウは殺人犯の逃亡幇助容疑で厳しい取り調べを受けるが、しらを切る。四日目に釈放される。レノックスがメキシコで自白書を残し自殺したからだ取り調べ官はいう。

マーロウはニューヨークの出版社社長のハワード・スペンサーの訪問を受ける。出版予定の本の原稿が未完のまま、ベストセラー作家のロジャー・ウェイドが行方不明なので探してほしいという。マーロウは調査専門機関のカーン機関の助けを借りながらあやしい医療施設に居るウェイドを見つける。

ウェイドは精神不安定で危険なのでしばらくそばに居てくれないかマーロウはウェイドの妻アイリーンに頼まれるが断る。だが、アイリーンは魅力的な女性でマーロウは思わずキスをしてしまう。

ある日ウェイドは頭から血を流し死んでいた。拳銃を握っており自殺と見られた。しかしマーロウはアイリーンの犯行だと確信する。そして、先のレノックスの妻シルヴィア殺しの犯人もアイリーンであると確信した。

ウェイドはシルヴィアの遊びの相手の一人だった。アイリーンはその現場を目撃しシルヴィアを殺害したのだった。

実はレノックスことポール・マーストンとアイリーンは戦争直前に結婚していた。レノックスは英国陸軍の特別奇襲部隊のコマンドとしてノルウェイに出兵し行方不明になっていた。アイリーンはポールは死んだとあきらめていた。しかしポールは重傷を負い、ナチに捕まり拷問されたが運良く生き延びた。名前をテリー・レノックスと変えて。

アイリーンはシルヴィアの夫レノックスを見て一目でポールだと気がついた。アイリーンからすれば愛するポールもロジャー・ウェイドもシルヴィアにとられたことになる。

マーロウに二つの殺人事件の犯人と証拠を突きつけられてアイリーンは逃れようがないと自殺してしまう。

ある日マーロウはマイオラノスというメキシコ人の訪問を受ける。整形手術をうまく施していたがレノックスであることをマーロウは見破る。メキシコでのレノックスの自殺は偽装であったのだ。

レノックスはギムレットをまたふたりで静かにのみたいというがマーロウは断る。マーロウは静かに言う。

「君は私の多くの部分を買いとっていったんだよ、テリー。微笑みやら、肯きやら、洒落た手の振り方やら、あちこちの静かなバーで口にするひそやかなカクテルでね。それがいつまでも続けばよかったのにと思う。元気でやってくれ、アミーゴ。さよならは言いたくない。さよならは、まだ心が通っていたときにすでに口にした。それは哀しく、孤独で、さきのないさよならだった。」

テリー・レノックスの瞳に突然涙がきらりと光った。

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