2010年2月28日日曜日

萱草第五 恋連歌(三)










2007年05月17日16:34

                 
 おもふ心はいかがをよばむ
恋はただ冨士よりうへのけぶりにて 
 
  人の所望せしにつかはし侍し五十句のうちに
 しのはしいまはきえぬまをとへ
山よりも恋ぞあさまの夕けぶり

 かかるなげきをとらぬ日ぞなき
さらばそのけぶりをいそげ我おもひ

 さても此身よなにとかくさむ
  と云句に
天地もしるばかりなるものおもひ

 とはずとよしやうらめしき中   
たれゆへに物おもふ身と成ぬらむ
                 

 とはぬにうきをなにとこたへん
木玉さへやどるばかりの恋の山

 小萩うつろふいろぞものうき
玉河をなみだくだくる袖にみて

 名のたつばかりあふことはなし
我袖に芳野の瀧の音もれて

 あふせあるぞと聞ならひつつ
うらやむもはかなの中や天河

 命をさへにうら見てぞまつ
こぬ人やさだめなき世を忘るらむ 


参考文献:
京都大学附属図書館所蔵 古典籍 『萱草』 [v.1, pp.094-095]  
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0048.html

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