2010年2月28日日曜日
萱草第六 雑連歌(十)
2007年05月27日17:28
京都大学附属図書館所蔵 古典籍 宗祇『萱草』(わすれぐさ)
なき人のあとにはうへし忘れ草しのぶこそなをふかき道なれ
* * * * * * *
いとどあはれをそふる世中
わびぬるをなげくかうへに老のきて
ねざめの後の風ぞ身にしむ
うき事も老よりさきはおどろかで
むかしがたりを誰につくさん
しる事のあるさへ老のうらみにて
まなびえぬこそ身にくやしけれ
のがるるもある世に老の猶すみて
へだつるやながき恨と成ぬらん
とを山どりの老のいにしへ
かろきいのちはまつほどぞうき
老が身は風のうへなる塵に似て
つれなの人やかすむ明ぼの
老が身の昨日の鐘にはてもせで
こころまよひの暮ぞかなしき
ともすればあすもと思ふ老のすゑ
ただかりの世はあるにまかせよ
つれなさもいくほどならん老のすえ
いかでなみだのかはらざるらむ
老はただ日ごとにあらぬ身と成て
なにかこころをとむる世中
うき事のなくともすてん老が身に
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0082.html
われひとりかはよしや世のなか
ゆく水をみるもかへらぬ老のなみ
いくたびかこえぬる年のはつせ山
世をふる河やわが老のなみ
心ぼそさぞさらにまぎれぬ
まじはれる人にも老はなぐさまで
うらむるいのち露ときえばや
かぎりだに老は心のままならで
うら枯の草葉より身はよはりつつ
老のかぎりや露もをくれむ
すつるをせめて身にぞまかせん(する)
老ぬれば心にかなふ事もなし
すごきねざめのあかつきの鐘
ゆくすえの心ぼそくも老はてて
おもひのこさぬあかつきの空
しるしらずいにしへ人をかぞへきて
すぎしをしのぶ心はかなさ
先だつはうからぬ世にもむまるらん
うきをたよりとたのむおく山
とるたびに薪つきなん日を待て
むまるる道をいまつくさばや
たちかへり迷ふなつゐの夕けぶり
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0083.html
しのぶることぞせむかたもなき
さきだつをかはりてとめむ道もがな
心もしらず松かぜぞ吹く
夕暮や苔の下にもうかるらむ
そはぬ世になど我はすむらん
一日だにあらじと思ふ親のあと
わすれよとてぞ遠ざかり行く
おほかたの月日もかなしおやの跡
よそのわかれもうきはかはらじ
よしやただなきをばなきになぐさめよ
あひしりたる人の身まかりける
とき独吟の連歌し侍しに
しのぶこそなをふかき道なれ
なき人のあとにはうへし忘草
むかしとなるを猶かへさばや
とふあとに七日なのかのうつりきて
宗砌十三廻に追善の連歌し侍しとき
つらきかうべにつらき世中
わびぬればとぶらふ跡に事たえて
みじかきすえをなげけ玉のを
といふ句に
我よりもあるべき人の跡とひて
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/k107/image/1/k107s0084.html
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