2010年2月25日木曜日

伊勢物語

2006年02月06日16:23

伊勢物語をはじめて最後まで読んだ。
古今和歌集に載っている在原業平の歌や詞書をベースに
した短編物語集(125話)とでも言えようか。伊勢物
語に出てくる歌のうち、45首は業平に関係するが、残
りの164首は業平と関係ない歌とのこと。物語として
おもしろおかしくするために大幅に追加されたらしい。

物語が虚構だとすれば、その記述が史実かどうか詮索す
るのは意味がない。しかし、業平など実在の人物が出て
くるので、古来詮索をしてきたようだ。

伊勢物語のハイライトである二条后(藤原高子)と伊勢
斎宮(恬子内親王)との禁断の密通や東下りも確かな証
拠はないようだ。実際の業平が女たらしだったかどうか
もあやしい。「日本三代実録」の業平に関する短い記述
『体貌閑麗 放縦不拘(ほうしょうふこう)』を伊勢物
語の作者が下衆の解釈をしたのではないかという説もあ
る。以来、好色男の元祖になってしまったと。

女性遍歴はともかく、業平と不遇の惟喬親王や紀有常と
の交友は実際にあったのではないかと思わせてくれる。
桜の水無瀬や雪の大原小野での交遊をしっとりと描いた
第八十二段、第八十三段はとりわけ心に残った。女性が
いないほうがしっとりと趣が出るのはなぜだろう(笑)


  世の中にたえて桜のなかりせば
    春の心はのどけからまし    業平 (水無瀬)

  忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや
    雪踏みわけて君を見むとは   業平 (大原小野)



京都大学附属図書館所蔵 奈良絵本コレクション 『伊勢物語』
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/n42/image/02/n42s0081.html

伊勢物語 角川文庫
伊勢物語/土佐日記 津島佑子 講談社『古典の旅2』
在原業平 ー雅心はひたぶるにー 今井源衛 集英社『王朝の歌人3』

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