2010年2月28日日曜日

十八公

2007年01月06日20:06

 歳旦

  ゆたかなる黒川湧水淑気満つ    
   羽根つく音に子等の歓声         
  新しい道具うれしくもどかしい   智


  若水を汲めばしたたる小袖かな
   真白まばゆく光る初冨士
  岡野辺を七草摘みにつたひきて  春蘭



  初懐紙言の葉みどりつんつんと  面白

  片頬に初日を受けて塑像の街   木槿

  初泣きや渾身の四肢宙を蹴る   ゆうゆ

  初夢に梅便り待つ心地かな    草栞

  遥かなる誓ひを照らす初日かな  草栞
                           


 十八公『初泣きや』の巻  

          首 2007年1月3日
          尾 2007年1月6日


1  初泣きや渾身の四肢宙を蹴る    遊
2   祝の膳に添える年玉       智
3  月花をこころのうちに酒酌みて  春蘭 
4   父の愛せし詩吟をひとつ    面白
5  縁側の長々として日の光     木槿
6   終りなき世に沙羅の花咲く   草栞 
7  来ぬひとよ麦秋焦げてしまいそう  遊
8   げに恐ろしき体重計       智   
9  灰かぶり姫に悋気の姉のゐて    槿 
10  選ぶに困るほどの秋服      蘭 

11 夜会果て紅差し直す月明かり    栞
12  円錐形に並ぶ新藁        智  
13 女形する古老の品の色っぽさ    蘭
14  目立たぬやうなマニキュアをする 遊
15 厄年の女は鱗の伊達巻と      白
16  後姿もきりりと決めて      栞
17 ごらんあれ梯子も纏も江戸の花   白
18  若菜摘む野は晴れて大空     槿

         
      遊 三    智 三
     春蘭 三   面白 三
     木槿 三   草栞 三

                 捌き 智




 十八公『遥かなる誓』の巻(出勝)
  
           首 2007年1月3日
           尾 2007年1月6日


1  遥かなる誓ひを照らす初日かな   草栞
2   雑煮の餅のかずをきく妻     春蘭
3  とりまきの種より小さき芽の出でて 面白
4   橡の実生は大木になり       遊
5  杖引いて故郷屋敷荒るるなく    木槿
6   こだま返しに郭公の声       栞
7  夏霧のわれをあやしくする森に    蘭
8   ワルツ流れて一歩踏みいる     白
9  思い切り青きドナウに身をゆだね   遊    
10  瞼を閉じて秋気吸い込む      栞

11 懸想するこころを月に打ち明けて   蘭 
12  みだれる手事「唐砧」かも     白
13 飛びながら連理の蝶の離れざる    遊   
14  君転校生となりてゆく朝      槿  
15 襟ボタン姫鏡台にいまもなほ     白  
16  開く時待つ棚のアルバム      栞
17 花咲いて合格メールの笑い顔     遊
18  わさび田青く跳ねる若鮎      蘭


                捌き 智



注:十八公(じはっこう)とは、松の字をばらし
  たもので、松の内に十八句、連句を巻くもの。



写真の提供は
Photo by (c)Tomo.Yun
ゆんフリー写真素材集: http://www.yunphoto.net

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