2006年04月19日18:53
落窪物語は、継子いじめの物語。主人公の女君(落窪の君)に
対する継母のいじめもすごいが、実父(源忠頼)の振る舞いも
輪をかけてひどすぎる。腹立たしく胸が悪くなった。早くいじ
めの部分が終わらないかと願っていた。
いじめの部分が終わろうとする直前に、継母の親類の典薬助の
滑稽な場面が描かれている。だれでも吹き出すのではないか。
笑いのセンスが作者にはある(^^)
座敷牢に監禁されている女君を男君(道頼)らが救出した後、
いじめる側がいじめられ役になり立場が逆転する。ここで読者
はざまあみろと溜飲を下げる。
男君の復讐は執念深い。やりすぎの感もある。しかし、いじめ
られた本人の女君はやめてほしいと言う。逆に、あの鬼の父に
会いたいとさえ思っているのだ。
車争いに負けるのが二回、予約した清水寺の部屋を横取りされ
たり、知らずに男君を婿に迎えようとしたら別人にすり替えら
れたり。別人とは、面白の駒とあだ名され、鼻が馬のような兵
部少輔で世間の笑われ者。
極めつけに、別邸を改装して引っ越ししようとした直前に、別
邸の所有権を男君に主張されてしまう。男君の一族は、帝の覚
えよく今めいて出世街道驀進中、一方忠頼一族は鳴かず飛ばず。
相手を徹底的に痛めつけたところで、男君は一転、融和策に出
る。これはただ一人の愛する妻、女君を喜ばすためである。復
讐もすごかったが、融和策も念の入れようがすごい。
源忠頼が融和策に乗ってすぐに手のひらを返すように、男君と
女君(自分の子)をあがめるほどになるのは驚き。継母が相変
わらず態度を改めないほうが真実らしく感じる。そんな継母も
やがて女君の真心にこころを開いていく。
何カ所か話のすじに自然さが感じられないところがあった。最
後は、一人を除いて、みんな幸せになったようで、それはそれ
でよかったのだが。一人とは典薬助で、滑稽役を演じた上、蹴
られてそれがもとで死んだと最後にあっさり触れてあり、なん
ともかわいそう。
源氏物語と比較して
源氏物語には、継子いじめの話はないと思われるが、紫の上の
身の上はそうではなかったか。しかも実父もあまり娘を顧みて
いなかった。
男君一族の栄華は、光源氏一族のそれを思わせる。面白の駒こ
と、鼻が馬のような兵部少輔は、源氏物語の赤鼻の末摘花を思
わせるし、法華八講を大事に扱っているのは同じだ。
源氏物語は、心理描写、情景描写、もののあはれに見るべきも
のがある。死や出家も多く描かれており暗さもある。一方、落
窪物語は、全体が明るく、現代の大衆小説を読んでいるような
感じがする。情景描写やもののあわれ的なものは少ない。
源氏物語の作者は、落窪物語を読んでいたのだろうか。当時の
物語を列挙している無名草子には落窪物語は載っていないとの
ことだが。
日本古典全書『堤中納言物語 落窪物語 所弘校注』朝日新聞社
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