2006年02月16日17:18
 新古今和歌集(1205)に二十九首も入集したという俊成卿女(むす 
め)とは何者なのか。ふと古本屋で三冊200円の棚の『無名草子』 
という本が目に止まった。今まで聞いたことがない。 
著者は藤原俊成卿女と推定されるとある。解説によると、俊成卿女 
(1171-1254?)は、藤原俊成(1114-1204)の孫娘で俊成夫妻に溺 
愛され、ひとからこうと呼ばれたという。 
新古今和歌集の撰者の一人、藤原定家(1162-1241)は、俊成の子 
だが俊成卿女とは叔父と姪の関係にある。俊成卿女が若くして別れ 
た夫は、新古今和歌集の撰者の一人であった源通具という。 
『無名草子』は、八十三歳の老尼が女性たちと古今の物語と歌集を 
評論し、作者や登場人物を批評しつつ人生論を交わす物語である。 
私が最近読んだ伊勢物語と古今和歌集を彼女はどうみているか、興 
味のあるところだ。 
『伊勢物語』 
「伊勢物語などというものは、ただ業平(825-880)の好色の心の 
 程度を強調するための材料として作ったものでしょう。東下りし 
 てまで女あさりをしたのだと。ですから、実際の出来事ではない 
 でしょう。」 
『古今和歌集』(905) 
「古い歌はどれも優美だといいますが、歌のよしあしを言うのは 
 恐れ多いです。撰者たちがたとえ思い誤って平凡な歌を入れた 
 としても、帝が見て咎めないことはないでしょう。  。。。 
 千載集は俊成様の撰集ですが、身分の高い歌人たちに遠慮され 
 たのか、さほどよいとも思われない歌もたくさん入っているよ 
 うです。地位身分にとらわれず、ほんとうに良い歌だけを選ん 
 だらどんなにすばらしいことでしょう。」 
二つとも私の印象と一致した(^^)  
無名草子は俊成卿女が三十歳頃(1200年)に書かれたと推定され 
ているが、彼女の希望通りの撰集が数年後の1205年に新古今 
和歌集として実現する。 
月、手紙(文)、夢、涙、阿弥陀仏、法華経、源氏物語、これら 
を老尼と女性陣は、この世で捨てがたいものとして挙げた。 
とくに、『源氏物語』を老尼(俊成卿女)は絶賛し、巻ごとに評論 
している。 
また、『枕草子』は清少納言の心のほどがみえていとをかしう侍 
れと賞賛している。清原元輔というすぐれた歌人の娘ではあるが、 
歌の方はあまり振るわないようだとも。 
私はこの二つを原文で最後まできちんと読んだことがない。今年 
の目標としようか。 
参考:新潮日本古典集成『無名草子』桑原博史校注 昭和51年
 
 
0 件のコメント:
コメントを投稿