2010年2月26日金曜日

『俳諧問答』の解釈5ー 答許子問難辨(2)

2006年08月28日13:32

 去来から許六へ 続

■解釈
許六:湖南・京都では不易・流行、さび・しおりで迷い真
の俳諧を失っていると聞きます。
去来:七、八、あなたの言うとおりなら、あなたが聞いた
人の過論です。さび・しおりは風雅の要で忘れてはならな
いものですが、得ることは難しいものです。先師の句には
これがあります。常にさび・しおりを願いはしますが、な
いからと言って句をきらい捨てることなどどうしてできま
しょう。

さび・しおりは閑寂なことではありません。さびとさびし
き句は違うし、しおりは哀憐のことではありません。内に
根ざして外にあらわれるものです。強いて言えばさびは、
句の色にあり、しおりは句の余勢(余情)にあります。
趣向・詞・器すべて揃ったと言っても必ずしもあらわれる
わけではありません。

許六:ふつつかな句とみえてもさび・しおりのある句はあ
ります。
去来:九、あなたの言う通りです。師の句にもふつつかな
句はあります。師の千姿万体のどんな句にもさび・しおり
はあり、ない句はまれです。先師の句を見て下さい。趣向
・詞・器・寂しさ・憐れみがさび・しおりではないことが
明らかです。

許六:私はようやく四十二才になりましたが、まだ血気が
あり句はまだ花やかかも知れません。
去来:十、私はこのあなたの言葉を愛します。あなたの句
にはさび・しおりがあり、蕉門において秀でています。

許六:老いが来るに従ってさび・しおりたる句が自然に求
めなくても出てくるでしょう。
去来:十一、私はあなたの言葉に感涙しました。あなたは
生得の人で心・口に風騒がありしかも道を励むことが切で
す。あなたなら、きっと自然にさび・しおりが出るように
なり、名人に至るでしょう。

許六:詞を飾りさび・しおりを作るのは真の俳諧ではあり
ません。
去来:十二、あなたの言う通りです。強いて詞でやろうと
すると路通の発句のようになるでしょう。

許六:ただ一句の姿に俳諧があれば捨てるものではない。
去来:十三、いや、俳諧でも捨てるものはあるのです。
貞徳ー宗因ー信徳750韻ー次韻ー虚栗ー冬の日ー猿蓑
ー炭俵と俳風は変わってきました。次の新風に移る時、
前の俳風を捨ててきたのです。

コメント:ここはちょっと話が食い違っているが、俳風
の変遷において、前を捨てることは許六も同意している。
ここで私としての疑問は、じゃあ、芭蕉風の途中の俳風
を我々が学んでなんになる、最後の俳風だけ学べばいい
のではないかと思ってしまうのだが。実際はみんな最後
の俳風と言われる炭俵、続猿蓑あたりより、前の方冬の
日や猿蓑、虚栗、はたまた談林を好むのはどうしてだろ
う。

許六:湖南の作者は、はじめに不易の句をしようか流行
の句をしようか考えると聞きました。
去来:十四、趣向や句作りの前後にかかわらず、古風で
いくか新風でいくか考えるのは一般的な人情ではないで
しょうか。

許六:和歌十体は詠んだあとの分析論
去来:十五、和歌でも何風(何調)で詠もうか案じるこ
とはあると思います。

コメント:ここも両者の意見の食い違い、体と風の取り
違え、平行線の不易・流行の話が混在し難解。

許六:(あなたがありがたがる)不易・流行は近年の匠
がこしらえたものです。それ以前、不易・流行がなかっ
た時代では俳諧に秀逸はなかったのでしょうか。ちなみ
に今は不易・流行が存在する時代ですが、師に不易・流
行を分けろと言われたことはありません。
去来:十六、十七、ちょっとおっしゃる意味がわかりま
せんが、俳諧は不易・流行とともに出現したので不易・
流行のない時代の俳諧は存在しないと思います。
後段は十四で述べました。

コメント:不易・流行がらみになると、両者いつも平行
線でとんちんかん(^^;)

許六:私は昔から不易・流行を貴い理念と考えておりま
せん。
去来:十八、あなたの論ではそういう結論になることは
理解します。でも古今の風、先師の今日の風を学んだの
であれば、流行を貴いとしたことと同じです。昔は昔の
先師の流行を学び貴いとされたと言えるでしょう。

許六:(不易・流行と関係なく)いい句を作る人を上手、
名人と言ってはいけないのでしょうか。
去来:あなたの言う通りです。宗鑑、守武〜宗因まで皆
一時のいい句があるので名人と呼ばれました。今でも名
人の名は失せません。先師もこの人々を貴ばれました。
しかし、かれらの風を師はとりませんでした。一時よい
としても新風が起きて俳風が変わる時には、古くさい俳
風や前に一時流行した新風はすたれていきます。このた
め、みんな最新の流行、新風に乗ることを願うのです。


つづく。
次回は、『俳諧問答』の解釈6ー 答許子問難辨(3)
     去来から許六へ 続続

■参考文献
1、『許六 去来 俳諧問答』横沢三郎校注 岩波文庫 
  1996年復刊
2、『芭蕉俳諧の精神』赤羽学 清水弘文堂 1984年

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